表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神社を継ぐことになりました。  作者: 真田らき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/4

第2話:俺、継承手続き始めました。


 継承の手続きは、想像以上に面倒くさかった。


 神社は宗教法人として登録されているから、代表役員の変更が必要だった。父が宮司ぐうじだったから、俺がその地位を承継する必要があった。

 うちの神社は神社本庁の包括ほうかつ下にある被包括宗教法人ひほうかつしゅうきょうほうじんだから、まず神社本庁に連絡した。担当者に電話して、父の死亡を報告。死亡証明書を添付して、後任の申請書を提出した。


 俺には一応、神職の資格はあった。大学時代、父に

 

 「せめて直階ちょっかいだけでも取っておけよ。後で後悔するぞ」

 

 って半ば強制的に講習を受けさせられて、直階ちょっかいを取得していた。

 神職の階位は浄階じょうかい明階めいかい正階せいかい権正階ごんせいかい直階ちょっかいとあって、父は正階だった。俺は直階止まりで、講習を受けたっきり実務経験もほとんどなかったから、宮司就任には不十分だった。

 神社本庁の担当者に、


 「宮司になるには権正階以上が必要ですね。権正階になるには講習を受ける必要があります。講習を受けて試験に受かれば権正階になれます。ちょうどもうじき講習の時期ですから、申し込まれるなら急いだ方がいいですよ。」


 と言われて、母と氏子総代に推薦状を書いて貰い、急遽講習会に申し込んだ。1ヶ月の短期集中コース。神道の歴史、祭祀の作法、祝詞の読み方、玉串の捧げ方……大学時代の講習よりずっとハードで、朝から晩まで勉強漬け。頭がパンクしそうだった。講習の最後には試験があって、何とか合格。正式に権正階の資格をもらった。

 

 俺が承継手続きやら講習やらでバタバタしてる間、北乃坂神社のことは、隣町で宮司をしてる岡田のおっちゃんが代理宮司をしてくれてた。

 岡田のおっちゃんは、父の学生時代の後輩で、俺も小さい時から可愛がってもらってる人だ。父が亡くなった時から、ずっと俺のことを心配して気にかけてくれる。めちゃくちゃ感謝してる。岡田のおっちゃんの為にも、早く立派な宮司になろうって思った。


 さて、次は責任役員会だ。規則によると、代表役員は責任役員の中から選ぶことになってるから、まず俺を責任役員に追加。うちの神社は、氏子代表の責任役員が5人いて、そこで俺を後任として承認してもらう。

会議を開いて、議事録を作成。みんな賛成してくれたけど、


 「想太郎君、権正階持ってるのは知ってるけど、これか らもちゃんと勉強してくれよ」

 

 って釘を刺された。


 それから、法務局だ。宗教法人の登記変更申請。必要な書類は山ほどあった。父の死亡証明書、俺の住民票、資格証明書、責任役員会の議事録と規則の写し。法務局の窓口で、司法書士さんに相談しながら申請した。登記が完了するまで、数週間かかった。完了したら、登記事項証明書を取って、県庁の宗教法人担当課に届出。県庁まで車で1時間半かけて行って手続きしたけど、担当のおばさんに


 「被包括法人の場合、神社本庁の承認書も添付してください」


 と言われて、慌てて準備した。それから県の認証をもらうのに、さらに1ヶ月待った。


 この間、俺は建設会社の仕事を続けながら、毎日神社に通った。会社の上司には事情を話して、時短勤務にしてもらったけど、疲労が溜まる一方。事務仕事で請求書を作ってる最中に、神職の作法を思い浮かべてぼーっとしたり。夜は家で祝詞の練習。父のノートを引っ張り出して、読み上げてみるけど、声は震えるし、噛みまくるし…。母が「ゆっくりでいいのよ」って励ましてくれたけど。


 そんなこんなで、すべての手続きが終わったのは父の死から4ヶ月後だった。神社本庁から正式な任命状が届き、県の認証も下りた。俺は宮司として、スタートラインに立った。


 建設会社の仕事の方は、辞めずに済んだ。

 社長に全部話したら、


 「田舎の神社じゃ毎日お祓いがあるわけじゃないだろ? 神社だけじゃ食っていけないのもわかってるよ。神社の仕事が入ってる時はそっち優先でいいから、そのまま働いていい」


 って言ってくれた。


 「ただし、現場のスケジュールはちゃんと調整してくれよ。遅刻は許さんぞ」


 って脅されたけど、笑顔で言ってくれたから胸が熱くなった。社長の言葉に救われた。

 俺はサラリーマンと神主の二足のわらじを履くことになったんだ。新しい人生の始まりだ。

 平日は、基本的には建設会社の事務所で請求書と格闘し、休日や夕方以降に神社へ。



 夕方、境内を眺めていたら、父の声が聞こえる気がした。


 『想太郎、がんばれよ』


 俺は鳥居に向かって頭を下げた。これから、きっと右往左往する日々が待ってる。でも、父の血を継いだ俺が神社を守るんだ。サラリーマンとして、宮司として、二つの顔で生きていくって覚悟ができた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ