エピローグ:あなたを忘れません。
転移魔法により王都へ送り届けられたクラウスは、地面に膝をつき、全身を震わせておりました。
紅の光に包まれたあの戦場で、彼が感じ取ったのは――
もう二度と揺れることのない、あの白薔薇の温もりと、確かな生命の終わり。
「お嬢様……!」
声を上げ、手を胸に当て、悲嘆の波に押し潰されそうになる。
紅の光が消えた今、戦場に残るのは静寂だけ。
彼女が残した光は、もう手に届かぬものになっていた。
しかし、クラウスは泣き崩れるだけではなかった。
「……いや、立ち上がらねば……お嬢様のためにも」
涙を拭い、背筋を伸ばす。胸に宿るのは、白薔薇の君――セシリア・フォン・アルバーンの不滅の意志。
彼は王都へ向かい、アルバーン家に急ぐ。
家門の広間に入り、重々しく頭を下げる。
「父上、母上、姫君……セシリア・フォン・アルバーンは――」
言葉を紡ぐだけで、声が震える。
そして、クラウスは全てを告げる。
魔王ルシファルとの戦い、三国王の死、そして紅の女王――白薔薇の君としてのセシリアが、世界を救うために自らの命を捧げたこと。
「彼女は……白薔薇の君でしたのですね……」
家族は驚き、そして深く悲しみ、しかし同時に誇りに満ちた表情を浮かべた。
「セシリアの光は、永遠に私たちの胸に残ります……」
クラウスはその場で膝をつき、祈るように手を組む。
家族の誰もが、静かに頷いた。
月日が流れ、戦の記憶は徐々に歴史として語り継がれる。
数百年後の世界、人々は言う――
「白薔薇の君が現れ、絶望の魔王を討ち滅ぼした」
「彼女の紅の光は、世界を救い、人々に希望を残した」
「その光は、決して枯れることのない花として語り継がれる」
子どもたちは星空を見上げ、銀色に光る月を指差す。
「見て、あの光……白薔薇の君だよ」
そして大人たちは、そっと微笑む。
「勇気と希望の象徴、それがセシリア・フォン・アルバーンの遺したものだ」
クラウスの名も、長い年月の中で語り継がれた。
彼は最後まで、白薔薇の君の光を胸に抱き、後世に伝えたのでございます。
凍てついた戦場も、漆黒の魔王も、そして全ての絶望も――
白薔薇の光によって消え去り、世界には再び温もりと希望が戻った。
こうして、セシリア・フォン・アルバーン――白薔薇の君の物語は、永遠に語り継がれる伝説となったのでございますわ。




