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絶望の淵に咲く紅――白薔薇の君の希望ですの。

戦場は一瞬の静寂に包まれた。

 空は淡く光り、荒廃した大地に差す朝の光が、まるで祝福のように戦士たちを照らす。

 勝利を信じた者たちの胸には、久々の安堵が宿ったのでございます。


 だが、その平穏は長くは続かなかった。

 「――何……?」

 セシリア・フォン・アルバーンが目を見開く。


 戦場の中央、崩れた魔王の漆黒の鎧が微かに震える。

 そして、血と闇の霧が渦巻き、無数の黒い触手が地面から湧き出す。

 「……不可能……!」

 フェンリル王〈グラズヴァルド〉も、直感で異変を感じる。


 闇の渦から、魔王の影が再び立ち上がったのです。

 その姿は以前よりも巨大で、漆黒の翼を広げ、眼光は灼熱の憎悪で輝く。

 「愚かなる者どもよ……死者さえも、我が手中にある!」

 そして、魔王は自らの命を捨て、この世の理を歪め、死者蘇生の禁忌を行使したのでございます。


 突如、戦場に黒き霧が広がり、死んだ兵士たち、倒れた魔獣たち、魔王に討たれた者の亡骸――

 全てが漆黒の力で甦る。眼光は虚ろで、怨嗟に満ちている。

 「うわああっ!」

 戦士たちは恐怖に声を震わせ、後退するしかなかった。


 セシリアは杖を握り、紅の光を渦巻かせる。

 「光よ……再び希望を!」

 だが、光は触れた瞬間、魔王の闇に押し返され、渦となって消えそうになる。

 「この力……一体……」

 クラウスも呟くが、言葉は風に消えた。


 その瞬間、魔王は一気に襲いかかる。

 氷と炎、光と闇の攻防も虚しく、フェンリル王、キングオーガ王、そしてリリアーナ・エルフ女王――

 三国の王たちは、不意を突かれ、連携もままならぬまま、魔王の一撃に倒されるのでございます。


 フェンリル王は氷の牙を伸ばすも、魔王の翼で叩き落とされ、氷は粉砕される。

 キングオーガ王の炎の拳も、黒き力に打ち消され、衝撃で大地ごと吹き飛ばされる。

 リリアーナは空中から矢を放つも、漆黒の手が矢を掴み、虚空へ投げ捨てられる。


 そして、魔王の眼光が三国王を貫く。

 「これが……我の絶対悪……!」

 氷も炎も光も、希望も勇気も、全てを押し潰す圧倒的な力。

 戦場は一瞬で死の淵と化し、絶望の波が全てを覆った。


 セシリアは立ち上がり、必死に光を繰り出す。

 「王たち……諦めてはなりませんわ……!」

 しかし、目の前に広がる光景は、血と破壊、そして静止した三国王――

 倒れた英雄たちの姿でございました。


 魔王はゆっくりと歩み、死の静寂を支配する。

 「愚かなる者ども……我が絶対の力の前に、全ては無に帰す」

 戦場の風も、光も、希望も、まるで魔王の意志に従うかのように静まっていく。


 だが、セシリアは紅の光を握りしめ、決して膝をつかぬ。

 「……まだ、終わりではありませんわ。希望は、死者の上にも咲きますの!」

 光が微かに震え、戦場に再び温もりが差し込み始める。


 絶望の中、白薔薇の紅は戦場で揺らめき、未来への微かな光を示す。

 戦士たちはその紅を見つめ、希望の火を胸に秘めるのでございます。

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