絶望を照らす紅――白薔薇の君の希望ですの。
戦場に、静寂が訪れる瞬間など存在しない。
大地は裂け、空は黒雲に覆われ、風は炎と氷の残骸を運ぶ。
その中、魔王〈ルシファル・ノクターナ〉の影は、戦場のあらゆる場所に忍び込むかのように広がっておりました。
「愚かなる者どもよ……汝らの希望、我の前ではただの蜃気楼に過ぎぬ」
その声は、戦士たちの心に直接響くようでございます。
地上の戦士は無意識に震え、空中のエルフ部隊も矢を放つ手がわずかに揺れる。
魔王の力は物理の法則さえねじ曲げ、恐怖と絶望を具現化するものでございました。
セシリア・フォン・アルバーンは目を閉じ、深く呼吸を整える。
「恐怖に屈しては、美しさも希望も守れませんわ……!」
その瞬間、魔王の放つ闇の剣が彼女の周囲を切り裂く。
しかし、紅の光の結界がそれを受け止め、微かに震えるが崩れない。
同時、フェンリル王〈グラズヴァルド〉の氷の牙が地上の魔獣を貫く。
だが、魔王の力はそれすら意に介さず、魔獣を操り直し、戦士たちの背後に襲いかかる。
キングオーガ王〈グラハム・レッドハンド〉は炎の拳で押し返すが、まるで砂を押すように、魔獣は元の位置に戻るのでございます。
――魔王は戦場だけでなく、戦士たちの心にも攻撃を仕掛ける。
光の渦に映る幻影、仲間の裏切りの幻、失敗の恐怖――
その一つ一つが、戦士たちの動きを鈍らせ、恐怖を増幅させるのです。
「……くっ……こんな……!」
エルフ女王〈リリアーナ〉は矢を握りしめ、必死に自分を鼓舞する。
だが、目の前に映る光景は、戦士たちが次々と倒れる幻影。
心の奥底まで凍りつきそうな絶望に、自然と身体が固まってしまうのでございます。
しかし、セシリアは揺らがない。
「皆、心を凍らせてはなりませんわ」
杖を大地に突き、紅の光を広範囲に放つ。
光は幻影を打ち消し、仲間たちの心に温もりを与える。
「希望は絶望の中でも咲くものですの!」
光の渦の中、フェンリル王は静かに吠える。
氷の牙を再び展開し、凍結の霧で幻影を吹き飛ばす。
キングオーガ王も炎の拳を握り直し、恐怖に抗う力を戦士たちに与える。
戦士たちの瞳に、再び決意が宿る瞬間でございます。
魔王は微かに眉をひそめる。
「……なるほど、希望の光を繰り返すか」
闇の剣が再び振るわれ、戦士たちを斬り裂くように迫る。
しかし、セシリアの杖の紅の光が剣を受け止め、光と闇の衝突が大地に轟音を響かせる。
その間、空中ではエルフ部隊が再編を整え、精密な射撃で魔王配下の魔獣を追撃。
氷と炎、光と闇――戦場全体が錯綜する中で、戦士たちは互いに支え合い、連携を強めるのでございます。
「絶望を恐れてはいけませんわ。恐怖に屈すれば、美しさも希望も消え去りますの」
セシリアの声は、戦士たちの心の奥底まで届き、凍りつきそうな心を解きほぐす。
その温もりは、まるで氷の大地に差し込む一筋の陽光のようでございました。
魔王の闇の力は強大でございますが、三国の王とセシリアの光と連携、そして戦士たちの勇気が、絶望を凌駕しつつある。
戦場の中心、白薔薇の紅はなお鮮やかに輝き、氷も炎も闇もその光に押されるかのようでございます。
――戦いはまだ、長く続く。
だが、この瞬間、確かに希望は芽吹いたのでございます。
絶望の中でも、心が凍りつかぬ限り、光は決して消えはしない。
白薔薇の君の紅は、戦士たちの心に温もりと決意を灯し、戦場に新たな戦術の風を吹き込んでいたのでございます。




