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目覚めし絶対悪――白薔薇の光が導く希望ですわ。

――目覚めし絶対悪


 世界の端が揺れる音で目覚める――そんな夜でございました。

 大地はひそやかに震え、空は黒雲に覆われ、星の光すら届かぬ暗闇が広がっております。

 王都や城塞都市の灯も、この夜には無力であり、ただ静寂の中で不吉な空気だけが漂っていたのです。


 その暗黒の中、深淵より目覚めたもの――それが、絶対悪の大魔王〈ルシファル・ノクターナ〉でございました。

 彼の姿は影のように黒く、全身から滲み出る圧倒的な存在感は、神々ですら震え上がらせるものでございます。

 「……世界よ、汝の終焉を告げる時が来た」

 低く、暗黒の響きを伴う声が、大地と空を揺らしました。


 ルシファルの眼差しが、王都の方向へ向けられる。

 その視線は、人類、妖精、獣人、そして神々にまで及び、心の奥底の恐怖と絶望を呼び覚ますのです。

 空間そのものが歪み、触れるものすべてが冷たく、また灼けるような感覚に包まれました。


 ――その知らせは、すぐに三国の王に届きました。

 フェンリル王〈グラズヴァルド〉、キングオーガ王〈グラハム・レッドハンド〉、そしてエルフの女王〈リリアーナ〉。

 それぞれの国に、緊急の使者が駆ける。

 そして、白薔薇の君――セシリア・フォン・アルバーンもまた、王都を飛び出し、三国を繋ぐ決断を下すのです。


 「この世界……すべてを滅ぼそうとする者が現れたのですわ」

 クラウスが声を潜めて告げる。

 「お嬢様、今回の相手は、フェンリル王やキングオーガ王のような力では太刀打ちできません」

 「ええ、分かっておりますわ。だからこそ、わたくしが介入いたしますの」


 セシリアは銀髪を靡かせ、杖を握りしめる。

 紅の瞳に光が宿り、白薔薇の紋章が魔法陣として地面に輝きました。

 「この力……ただ恐怖に屈するだけでは、美しさは守れませんわ」


 その頃、暗黒の城――ルシファルの本拠地においても、神々の軍勢が立ち上がる兆しがございました。

 黄金の鎧を纏い、雷鳴のような剣を持つ神々が集い、魔王の前に立ちはだかる。

 しかし、ルシファルの力はそれを容易く押し返す。

 その手から放たれる一撃は、空間そのものを裂き、星々すら燃え尽きるような轟音を伴うのです。


 「我が怒りを、世界に示す時が来た」

 大魔王は片手を掲げ、黒き竜巻を巻き上げる。

 それは地上の森を一瞬で吹き飛ばし、海をも赤く染めるほどの圧倒的破壊力。

 王たちも、魔王の配下たちも、そしてセシリアでさえ、この威圧に息を呑むしかありません。


 しかし、セシリアは静かに前へ歩み出る。

 「恐怖に屈してはなりませんわ」

 杖から放たれる光は、赤く黒ずむ空気を裂き、魔王の力に抗う魔法の結界を形成する。

 「皆、力を合わせるのですわ。怒りも悲しみも、今は希望に変えるために使うのです」


 空中で、フェンリルの氷狼たちが飛び交い、キングオーガの戦士たちは炎を纏って地上から突撃する。

 エルフの弓兵は空から矢を射掛け、精密な魔法陣で魔王の部下を封じる。

 世界の三勢力が一堂に会し、戦場は光と闇の交錯する混沌と化しました。


 ルシファルは笑った。

 「……小さき者どもよ、楽しませてもらおう」

 闇の手を振るうだけで、大地は裂け、空は割れ、時間すら歪む。

 戦士たちは吹き飛ばされ、炎と氷、魔法の奔流が戦場を覆う。


 しかし、セシリアは揺らがない。

 杖を掲げ、紅の光を渦巻かせる。

 「絶望を希望に変えるのは、力だけではございませんのよ」

 空を裂く光は、氷と炎、雷と風――すべての元素を絡め取り、魔王の攻撃を防ぎつつ、反撃の糸口を作る。


 その刹那、三国の王たちも動く。

 フェンリル王の氷の牙が魔王の配下を貫き、キングオーガ王の拳が地面を砕き、エルフ女王の矢が魔力の結晶を射抜く。

 しかし魔王は動じない。全身から漆黒のオーラが溢れ、攻撃のたびに時間と空間を歪めるのです。


 セシリアは深呼吸し、心の中で静かに言った。

 「……まだ、この世界は終わらせませんわ」

 紅の魔紋が杖から放たれ、白薔薇が咲くように光が広がる。

 それは魔王の眼に一瞬、躊躇を生じさせる光でした。


 戦いは、始まったばかり。

 大魔王の力は神々すら凌駕し、三国の王たちも圧倒される。

 しかし、白薔薇の君――セシリアの存在が、希望の灯となる。

 「世界を護るために……この手で導きましょう、絶対悪に抗う道を」


 荒廃した大地の上、光と闇がぶつかり合う。

 火と氷、雷と風、希望と絶望――すべてが交錯する戦場で、白薔薇の紅がひときわ鮮やかに輝いたのです。

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