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愛と刃の狭間で揺れる白薔薇でございますの。

朝の光が王都の屋敷を柔らかく包み込み、金色の光が壁紙や調度品に穏やかに反射しておりますわ。

 セシリア・フォン・アルバーンは、昼の顔として、家族の間に微笑みを浮かべながら朝食の席に座っておりました。

 父は威厳を保ち、母は静かに紅茶を淹れる。兄たちも表面上は平穏を装い、姉アメリアだけが、妹に向ける温かい視線を隠しきれません。


 ——すべてが、昨夜の刃の余韻と共にある。

 次男ルーカスは、もう戻らない。

 表向きは“行方不明”として扱われ、家族の前には穏やかに振る舞わねばなりませんの。

 胸の奥では、白薔薇の君として夜に下した決断の重さが、静かに波打っておりますわ。


 クラウスがそっと紅茶を差し出し、低く声をかけます。

 「お嬢様、昨夜の決断は正しかったのです。

  家族の安全、孤児院の未来、街の秩序——すべてを守るためでございます。」

 「えぇ、クラウス……ふふ、正しかったと、私も信じたいですわ……」

 微笑みながらも、胸の奥に冷たく重い感情が渦巻く。

 ——愛する家族のため、守るべき街や孤児院のため、刃を振るった。その行為の孤独は、誰にも理解されない。


 アメリアがそっと席を立ち、妹の肩に手を置きます。

 「セシリア……昨日のこと、どうか隠さずに教えてね。

  何があっても、私はあなたの味方だから」

 その言葉には、姉としての愛情と信頼が込められている。

 セシリアは微笑みながらも、ほんのわずかに目を伏せました。

 ——姉には、夜の顔を見せることはできません。

  昼の顔のまま、家族の間で微笑むしかないのですわ。


 父が静かに紅茶を飲みながら、眉を寄せます。

 「ルーカス……本当に行方不明なのか。

  何か、違和感を覚えるのだが」

 母も深く静かに頷き、兄エドワードと弟アレクサンドルも、それぞれ表情に微かな緊張を漂わせる。

 ——誰も知らぬまま、夜の白薔薇の君としての決断が、家族の平穏の裏で揺らぎ、しかし守られているのですわ。


 セシリアは窓辺に近づき、庭の白薔薇を見つめました。

 月光はまだ残り、淡い光の中で花びらが静かに揺れる。

 ——昼の家族の温もりと夜の影の責務、二つの世界を抱えながら生きる孤独。

  それでも、守るべき人々のために、刃を振るい、決断を下すことをやめはしない。


 クラウスがそっと声をかけます。

 「お嬢様、今日も平穏な日をお過ごしくださいませ。

  夜の影があるからこそ、昼の微笑みは尊いのです」

 セシリアは一口紅茶を飲み、唇に温もりを感じながら頷きます。

 ——夜の白薔薇の君として、昼の顔を守り、愛する人々を守る。

  その使命は、決して軽くはないけれど、揺るぐこともありませんわ。


 庭の白薔薇は風に揺れ、香りをひそやかに漂わせる。

 ——昼の家族、夜の街、孤児院。

  守るべきすべてを胸に抱き、白薔薇の君は今日も静かに歩み続ける。

  その姿は、誰にも知られぬまま、永遠に咲き誇るのですわ。


 微かな笑みを残し、セシリアは家族のもとに戻る。

 昼の王都は穏やかに輝き、しかし夜の決意は、胸の奥で静かに燃え続ける——

 白薔薇の君としての使命は、今日も変わることなく、未来へと続いていくのでございますわ。

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