王都の静けさにて、白薔薇の君は密やかに誓いますわ。
王都の朝は、澄んだ光と静かな誇りに満ちております。
セシリア・フォン・アルバーンは、優雅なる屋敷の一室で、淡い朝の光を浴びながら紅茶を口に運びました。
窓の外では、庭師たちが花壇を整え、薔薇がまるで王族の証のように並んでおりますわ。
「セシリア、おはよう。紅茶はもう淹れたわよ。」
姉のアメリアが、いつも通りに微笑んで声をかけてくれます。
「おはようございますわ、アメリア姉様。ご丁寧にありがとうございます。」
アメリアは、唯一セシリアを特別に可愛がってくれる存在ですわ。
その優しさは、家族の中で孤独を感じやすいわたくしにとって、ささやかな救いでもあります。
父は朝の書類に目を通し、母は宴の準備に余念がなく、
兄たちはそれぞれの任務に誇りを持ち、弟も学問に勤しむ。
この家族は、誰もが上級貴族としての誇りを胸に抱いておりますわ。
けれど、表向きの笑顔の裏に、家族それぞれの思惑と矜持が交錯していることに、昼のわたくしは気付いております。
「セシリア、今日は昼の社交会があるわ。
あなたも気品を忘れずに振る舞うのよ。」
アメリア姉様は軽く笑い、手をそっとセシリアの肩に置きます。
「はい、姉様。心得ておりますわ。」
しかし、わたくしの心の片隅には、孤児院の子どもたちの顔が浮かびます。
白薔薇の君として守るべき者――家族に知られぬその顔は、昼の優雅さの陰に静かに存在しているのですわ。
昼の社交会を終え、書斎で父と兄たちと簡単な会話を交わす。
「父上、最近の王都は……平穏でしょうか。」
「そうだな、平穏ではあるが、油断は禁物だ。家名を守るには常に警戒が必要だぞ。」
兄たちはそれぞれ、家名と誇りを胸に、軽く会釈を返す。
家族の中では、わたくしもまた“上級貴族セシリア”として認められていることが伝わる瞬間ですわ。
夕刻、アメリア姉様は静かに呟きました。
「あなた、何かを抱えているでしょう?
でも心配はいらないわ、私たちはあなたの味方ですもの。」
わたくしは微笑みながら、紅茶を口に含みます。
「えぇ、姉様。ありがとうございますわ。
ただ、守るべきものが多すぎるだけですの。」
その言葉には、孤児院の子どもたちと、白薔薇の君としての戦いの日々が隠されておりますわ。
家族には知れぬ秘密であっても、わたくしは自らの矜持を決して失わない――それがセシリア・フォン・アルバーンの誇りでございます。
夜が訪れ、窓辺に射す月光に白薔薇の影を重ね、わたくしはひそかに誓います。
「家族に知られることなく、誰かの未来を守る――
これもまた、白薔薇の君としての務めですわ。」
——王都の上流階級の屋敷で咲く薔薇は、外からはただの花。
しかし、夜の裏通りで咲く白薔薇は、誰にも知られぬ決意と誇りを秘めているのですわ。




