同じ過ちを繰り返さぬよう、周囲を万全に整えておきますわ。
孤児院襲撃から数日。
夜の王都を離れ、孤児院の門をくぐると、子どもたちの寝息が静かに響きます。
銀色の月光が窓から差し込み、床に影を落としておりましたわ。
「ふふ……今宵も、無事に眠っておりますのね。」
わたくしは静かに歩き、子どもたち一人ひとりの寝顔を確かめます。
――思えば、過去のあの日。
ルカを救えなかった夜の痛みが、今のわたくしを突き動かしておりますの。
誰一人、二度と絶望に呑まれぬように。
「クラウス、今回の件も踏まえて、孤児院の警備を改めて見直しましょう。」
「承知いたしました、セシリア様。具体的には?」
「まず、周囲の監視を昼夜問わず強化いたしますの。
ただ立っているだけの門番では意味がございませんわ。」
わたくしは地図を広げ、建物の配置、窓の高さ、壁の強度、そして逃走経路まで細かく確認いたしました。
「この屋根の角度なら、夜間の監視も容易ですわね。
クラウス、ここに見張り台を追加しましょう。
そして屋内は、逃げ道を確保しつつ、鍵と扉を二重に。」
クラウスは静かに頷き、メモを取りつつ申します。
「全て、貴女様のお考えの通りにいたします。
さすがは白薔薇の君、全ての要素を計算なさる。」
「ふふ……白薔薇の君でございますもの。
美しく守るには、戦略もまた優雅でなければ。」
窓の外、月光が石畳を白く照らす。
風に揺れる白薔薇の香りが、孤児院の空気を柔らかく包み込みます。
「そして、子どもたち自身も自分を守れるように少しずつ教えますの。
ただし、恐怖ではなく、自らの意志で選ぶ強さを知ること……。」
「そのように育てるのも、貴女様の方針でございますね。」
「えぇ、クラウス。強さとは、刃を振るうことだけではなく、守るべきものを守る心のことですわ。」
わたくしたちは静かに孤児院を見回り、見落としがないか確認する。
窓の鍵、屋根の補強、見張り台、地下室への通路……すべてが、夜の静寂の中で整えられていきますわ。
「これで少しは安心ですわね、クラウス。」
「はい、セシリア様。貴女様の指揮の下、孤児院は盤石にございます。」
わたくしは子どもたちの寝室の扉を閉め、月明かりに白薔薇の影を落としました。
「——誰も、あの夜のように絶望に呑まれぬように。」
夜の空気が、わたくしの決意を静かに抱きしめます。
白薔薇の君は、今宵もまた、静かに誓うのでございます。
守るべき者のために――優雅に、そして確実に。




