転生した不遇の令嬢は実家を建て直します!
目が覚めたら、そこには華々しくて煌びやかな装飾のある部屋が広がっていた⋯⋯⋯⋯ということは、俗に言うラノベでしか見たことがない展開であり、俗に言うテンプレだ。
しかし世の中、何があるか分からないものだ。
私みたいな凡人で、チートもクソもないようなやつがラノベの世界へと転生してしまった。
死んだ瞬間の記憶はないが、死ぬ前の名前とか職業とかははっきり覚えている。
死ぬ前の名前は水無月紫苑と言って、ごく普通の学生だ。
ちなみに高校生で、変人に囲まれながら中高一貫校に通っている。
「苗字が三文字ってなんかすごそう!」
とか言っている騒がしいクラスメイトたちの中、その予想を裏切って私は平凡な人間だった。
学校ではいわゆるツッコミだ。
一応それなりに勉強はできたはずだが(一応受検受かってるし)周りがすごかったので平凡に感じてただけだと思いたい。
そして、そんな割と平凡だった私が人生初めて、達成した現実でやってる人がいないことこそが「異世界転生」なのだ。
私が転生したのは、ラノベを読む者なら誰でも知る有名な小説かどうかは分からんけど、それなりに有名であろう恋愛ミステリー小説、
『虐げられた令嬢は冷徹公爵様に愛される』
というものだ。
これは普通に面白くて、確かアニメ化だったか漫画化だったかの企画が進行中だった気がする。
私の記憶力は当てにならないが、とにかくそこそこ有名な作品だった。
ちなみにその作品、某小説投稿サイトの某ランキングで見つけた時に読み始め、そのまま沼にはまっり、完結するまで追っかけ続けた。
私は恋愛系は大体網羅していると勝手に思っているのだが、その中でも結構楽しく読めた。
ヒーローがあまり好きではなかったが、そこは物語としての面白さで相殺以上の効果だった。
私はどっちかって言うと伏線回収とかトリックを見ていたのだ。
ただ、この小説のヒロインことエレンに転生したということが問題なのである。
この主人公は序盤疎まれ、いいように扱われてきた系の人物なのだ。
暴力なんて当たり前、領主としての仕事を父親に半分以上丸投げされ、横領とか借金とかしながら贅沢三昧の日々を送っているのを横目に、必死で事業を考えて起こし、その利益すらも家族の贅沢に消えていく。
そんな、どっからどう見ても残念なお家の娘として産まれてしまったのが私の転生したヒロインという訳だ。
このまま順調にいけば公爵家に嫁いで玉の輿とか呼ばれたりするのは分かってる。
ヒロインだからそれいじめてた家族が断罪されるのも分かってる。
だが、私はこのヒロインに一番なりたくなかった。
理由は凄く単純に、暴力振るわれるとかが死ぬほどやだから。
常識的に考えて欲しい。
私はただの高校生だ。
そんな高校生に、暴力に耐えろというのは、流石に無理ナノダ。
それならばどうするか。
私はただでさえ出来の悪い頭を使って考えた。考えに考えていた。
そこで、ふと思いついた。
私の価値を認めさせればいいのではないか、と。
ヒロインは、こういう場合ハイスペックな事が多い。
私が転生したエレンというヒロインは、本来父と執事がやる執務をこなした上で、さらに商会を運用し、伯爵家の贅沢の元となる金を捻出していたらしい。
要するに、私のハイスペックさを認めさせればいいのだ。
そうと決まれば早速状況の把握から。
「今って何時?」
と思ったので使用人に聞くと、
「今日は2月1日ですよ。いきなりどうかしました?」
と嫌そうにしながらもきちんと教えてくれた。
さらに、
「そういえば今日、一応誕生日でしたね。おめでとうございます」
と言われたことで、やっと自分の今いる時期が分かった。
主人公が今日、妹の代理で公爵に嫁げって話を聞かされたんだった。
え、待って。
今日!?
一瞬理解しきれなかったけど、よりにもよって今日!?
いやもっとあるでしょという愚痴はさておいて、今日であるならば家族の説得はほぼフィーリングにってしまう。
ちなみに、自信は全くない。あるわけが無い。
でも、全くないからってやらない訳にもいかないだろう。
せめて、なるべくたくさんの書類を見ておこう。
そう思っていた矢先に、執務室へさっきの人が入ってきて、
「旦那様からのご命令で、今すぐに旦那様のお部屋に来いとのことです」
「分かった」
と言いつつ私は内心すごく動揺していた。
だって、少しは書類見れるかなって思ってたのにさ。マジのフィーリングになっちゃったんだよ!!
そういえば今日の日付が現実世界だったら入試なのか〜みたいなことをダラダラ考えている内に着いた。
着いてしまった。
現実逃避してる間に着いちゃったよ。
イヤダイヤダと思いながらもそこは腐っても淑女教育を受けた身。
どんなに動揺してても自然と品のある歩き方ができてしまうのだ。ドヤァァァァ!
ついでにそのままソファに座ろうとしたら、
「何勝手に座ろうとしてるのよ」
とヒステリックな声で怒鳴られた。
この声は多分義母だな。義母上って呼ぶと怒られて水かけられてたけど。原作のヒロインが。
罵倒している義母を無視して席に座る。
顔を真っ赤にしているが、一応外面は保てるらしく、そのまま座った。
一つ咳払いをしてその場を仕切り直した父が言ったことは、小説と全く同じで、
「お前の嫁ぎ先を決めてやった。冷徹公爵だ。娘のどちらかを求めているらしい。もちろんお前が行け」
「よかったわねお姉様。格上の公爵家に嫁ぐことができるだなんて。もちろん断ったりはなさいませんよね」
「ふふふ、そうね。かわいい妹を冷徹公爵に嫁がせることはできないもの。お似合いだわ。せいぜい頑張るのね」
という原作にそのまんまでてくるせりふを言っている!!
と感慨に浸る間もなく外堀を埋められてしまいそう。
これで何も言わずに「⋯⋯承知いたしました」とだけ主人公であれば言うけど、そんなことはしない。
だって主人公が嫁いだら、最初は妹がやったことを全て押し付けられて悪女扱いされて冷遇がしばらく続くんだよ。
残念ながら、いじめに耐えられるほど私のハートは強くない。
多めに見積もって私のハートは強化ガラス程度なのだ。
反論を開始しようか。(フィーリングだけど)
「冷徹公爵に嫁げという命令ですが、お断りします」
「何を言ってるのよ。ここまで育ててやった恩を返すと言うの!!」
「そうよそうよ。お姉様は役立たずなんだから、最後くらいしっかり役目を果たしなさいよ」
概ね予想通りの反応だったので、無視して次に進む。
「私を嫁がせるという話ですが、おそらく難しいかと思います」
「何故かと言えば、このハルモニア伯爵家の執務をほとんど私が担当しており、その中で我がハルモニア伯爵家の財政が相当ヤバいところまで赤字だからです」
私が投げかけたこの言葉への反応はそれぞれ違う。
「何を言っているの?お父様は全て順調だとおっしゃっておられたわ」
「そうよそうよ頭がおかしくなったのかしら!!」
二人は予想通りというか原作通り何も知らされていない。
お父さんは分かっているんだろうな。
さっきから反論する気配がない。
「お父様はご存じのようですよ。一応当主代理ですからね」
「なんだと!?」
ちなみに、お父様は当主ではないらしく実は入婿で正式にハルモニア伯爵家の血筋を継いでいるのは私だけだと終盤で冷徹公爵が言ってた!
どうせならと引用したが、マジで何も知らなかったらしい。(うちの家ヤバくね?)
「我がハルモニア伯爵家の唯一の跡取りは私です。なので私を嫁がせたら、ハルモニア伯爵家は跡取りがいないことが理由になって王家に領地を持っていかれます」
「別にそれ自体私は構わないんですけど、なんせこの領地の経営の仕方はズサンですから。当然何か罰則があるでしょう」
実際、原作では領地経営の不備や公爵夫人となったハルモニア伯爵家跡取りを適切に育てなかったことで、当主代理と当主代理夫人は幽閉、妹は修道院行きとなっていた。
いわゆるざまぁである。
しかし、まさかそんな簡単なことも分からないとは⋯⋯と驚いてしまう。
仕方がない。そういう人たちなのだ。
私は主に、王国の法律に基づいて、そして小説に基づいてている。
この国の法律では、横領を意図的に行っていた者は懲役、意図的ではなかった場合、王家の使いが来て色々教えてくれる。
私はよくわかんないけど、私の中に眠る記憶がそう言ってる。
伯爵家の場合、その他色々やらかしているので、死刑にならないだけ温情だ。
しかし、これで領地経営の内情がある程度分かる当主代理を味方につけられそうだ。
残りの二人は現実が受け入れられていないみたいな雰囲気がすごい。
「だが、結納金を受け取ってしまったのだから後戻りはできないぞ」
「な!?あなた結納金を受け取っていたの!!出してよ。公爵家なんだからいっぱいあるんでしょ!!」
「あった。だが借金の返済に充てた」
静かに言い切る当主代理に少し驚いた。
てっきり小説と同じくオロオロして何もできないヒモ男になっているものだと⋯⋯⋯⋯。
ということは、それだけ追い詰められたってことだな。
元々追い詰められているが、そこは御愛嬌?
ではすまされない。
借金はすでに他の貴族から金を借りられないくらいには膨れ上がる一方で、あそこにいてギャーギャー言ってる生き物が浪費しまくってるから。
では、どうすればいいのかと言われたところで、私が当主となり、妹が嫁ぐという提案を行えば完璧だ。
妹は外面がいいのでなんとかなると信じている。
内面は⋯⋯⋯⋯⋯⋯あとの私の努力次第かな?
と思っていたら、さっきからずっと騒いでいてそれどころじゃなかったらしい。
しかもよく聞いてみると、
「私にはあなたしかいない訳!なのになんで隠し事とかしちゃってるのよ!!相談しなさいよ相談!私は男爵家の娘なのが信用されない原因っていうことなの?何か言ってよ!何か力になれるかもしれないし⋯⋯⋯」
「はい。本当にごめんなさい。もう二度と隠し事はしません」
「その言葉を私は、私は今年で3回聞いたわよ⋯⋯⋯⋯」
という、なんとも掛け合いじみた夫婦の会話なのだった。
しかし、そんな睦まじい会話に首を突っ込む奴がいた。
空気を読めないその女(私)は、
「痴話喧嘩は後にして話を聞いてください。当主として、正当な血筋を持つ私が当主になります」
と言って空気を一瞬止め、呆然とする当主代理から許可をもぎ取り、その日の内に王家からの正式な書類が発行されたのだった。
そしてその翌日から、新ハルモニア伯爵家当主エレン・ハルが誕生したのだった。
ちなみに、この国では当主になると名字が変わる。
私の場合女伯爵なのでハルモニアからハルになる。
男の方は知らん。
だって私も役所で説明受けただけだし。
これ絶対作者がてきとーに作った設定だろ書いてなかったぞ何処にも!
そんなことはさて置いておいて、現状を整理していこう。
まず、領地は疲弊して摩耗しており収穫量が減っているが税を増やしているため反発が大きい。
借金はハルモニア伯爵家の現在の収入の約十倍は確実。
それに加えて妹の淑女教育だな。
でも、いもうとは淑女教育の基本は受けているので、貴族の名前とかは言えるし、それなら公爵家に嫁ぐことを前提に教育を進めるようにしよう。
先生は一旦父に手配して貰えたので、さっそく招く。
この方は、身分問わず時に優しく時に厳しく指導してくれる方らしい。いいチョイスをしたものだ。
さて、次は領地についてたが、まずは真っ先にできることから探していこう。
屋敷の人員を減らす⋯⋯⋯それだと不満がたまるか。
税の横領してる代官(原作に出てきた(*ˊᵕˋ*))の解雇⋯⋯⋯⋯だと人員足りなくなるか。
ならまずは、代官どもに言うことを聞かせるとしよう。
そのうえで税率を下げればしばらく民の不満は解消されるだろう。うちらの金が無くなるだけで転生·········?
私はそこで、1枚の奇妙な帳簿を見つけた。
かつての私ならというか、転生前のエレンなら気が付かなかったものだ。
それについては、後々わかる事だな。
忘れないうちに、あの二人の予算を凍結しよう。
浪費が無くなれば問題はなしだな。
そうと決まれば父にかけあって資産を凍結しよう。
「お父様。当主として命令するので耳の穴かっぽじってよく聞いてください」
「いきなりどうしたんだ?あと耳⋯⋯なんて言った?」
「浪費親子の資産を凍結するので手続きしておいてください。あと今後は私の補佐を行うようにして、何かあったら知らせなさい」
「娘が敬語を使わない······だと!?」
何かを父が言っていたが、多分大丈夫さ。
その日のうちには凍結完了するだろう。おそらく。多分。絶対。
私の座右の銘は即断即決⋯⋯⋯⋯⋯⋯って訳じゃないけど、行動は早いほうがいい。
なぜかって?
借金取りが怖いから。
あの人達隙あらば暴力振るってくるし物持ってっちゃうんだもん。
と、いうことで私は今代官がいる領地内の屋敷にいます。
代官は税金の横領しているらしいからもっと贅沢かと思ってたけど意外とそうでもなく、むしろオンボロだった。
一応先触れは出したけど、先触れをだしておいてねと元当主代理に命令しておいたけど、先触れだしたかなー?
もしかしたら出せてないままで来ちゃったかもだけど、気にしてたら負けだね。
何故って?気にするのがめんどくさいからに決まってる。
なるべく相手の動向をさぐりたいなと思いながら屋敷に着いた時、なぜか代官の家の使用人がいっぱい来て歓迎して来ていた。
どうやら先触れは届いていたらしい。
更には初対面のはずの使用人の一人に完全に名前を覚えられ、
「ハルモニア伯爵家のエレン様ですね」
って言われた時の驚きと不気味さ、分かる?いや分かってほしい。
しかもあいつ、当主って言葉を使わないし。
めっちゃ認めてないですってオーラを感じる。
そして現在、私は応接室で代官とお話をしている。
服装は書類で見た時の横領しているという言葉から考えられるような印象ではないと思ったが、話している内に納得した。
こいつは税を横領して貧しい人に施しを与えているらしい。
伯爵家当主には逆らえないみたいなことを言って私を嫌味でチクチクと刺してくる。
だが、話自体は有意義なものだったと言えるだろう。
私は優しいから、面白い話じゃなくても聞くだけ聞くけどね。
その日は遅くまで代官の屋敷で話し込んでいたが、そろそろおいとましようかと腰を上げると、
「今日はもう遅いので、このまま泊まって行ってください」
と言われた。
もちろん了承した。
その夜に泊まったのは、屋敷の最奥にある客室だ。
誰も来ないし、誰もいない。
こっそり殺すにはもってこいの場だろう。
その夜、代官は私のことを襲ってきた。
別に性的暴行とかそういう意味ではなく、殺すこと目的だからね。
もちろん返り討ちにしたが、その過程で予想が確信に変わった点がある。
予想通りだが、彼はろくでもない奴だった。
調べによると、これまで明らかにならなかった事が不思議なくらい、色んなものが出てくる出てくる。
最も恐ろしいのは、彼が違法とされて厳しく禁じられている奴隷売買に手を出していたことだ。
しかも、原作でも中盤くらいで取り上げられていた組織の人だ。
原作では、組織を婚約者である公爵と共に解決しようといた気がする。
確か、幹部の一人を逮捕した後、どさくさに紛れて全員死んだ⋯⋯⋯⋯?と思う。
その幹部が意外と大物で⋯⋯⋯⋯。
おっと、話の途中だった。
こいつはどうやら、その犯罪組織の幹部の一人らしい⋯⋯⋯⋯?
その犯罪組織の幹部は、背中に二つの勾玉が重なったみたいな刺青をしている。
そいつにもしっかりあった。
だが、私はコイツの顔を初めてみた。
小説にいないというか、普通に代官も横領してたらしいし、よく分からないんだよね。
要するに、
「原作に登場しないでどさくさに紛れて死んだモブ⋯⋯」
「おい!!!!貴様いい加減に私を放せ!!!!お前ごとき伯爵令嬢が触ってよいわけがないであろう」
「我はお前とは違って、奴隷市のトップであるアドルフ様のお気に入りだぞ!!!!」
簡単に黒幕を言う幹部がいるか!という話だが、幹部であることは事実だ。
ちょっと待て、いまアドルフって言ったか?
説明しよう。
アドルフとは、察しているかどうかはさておき、国王の弟である。
ちなみに、ソイツは今のところ公爵をやっている。
普通の貴族とは違う名誉職って奴だ。
そして、王位を狙っているわけだ。
ここまで来れば大体わかるだろう?泥沼なのだー!
まあ、犯罪組織の人間なのだしどのみち用はない。
あらかじめ通報しておいた軍の者に引き渡すついでに、新当主となったことを伝えて宣伝する。
伯爵家のボロい本邸へと向かう前に事情聴取を受けたので全て話すと、
「そうでしたか。それでしたら、すぐにでも陛下に直接報告せねばなりませんな。直ぐに王都へ」
「いやあの、私もう寝ようと思っていたのですが⋯⋯」
「我々が絶えず警戒しておきますのでご安心ください。それとも、王家の兵士が信用出来ませんか?」
「そういうことではないのですが············
「では参りましょう」
上手いこと丸め込まれたので、一旦王都へレッツゴーである。
ちなみに、私はその後グッスリ寝ていたので道中の事はよく知らない。
気づいたら王都に着いていた!
ただ、王都に着いた際に兵士たちに叩き起こされたので、王都の街並みに関しては印象に残った。
街の灯りがキラキラと光り輝いていて、すごく綺麗だった。
だが、その後問答無用で謁見のための準備を整えさせられた。
私が持っていたのはすごく簡素なドレスだった訳なので、たくさんのメイドさんに風呂に入れられてたっぷりと寝、そのままの勢いでドレスを着せられた。
そうしてやっとの思いで着いた謁見の間には、国王陛下と王妃様がいらっしゃっていた。
夜間だからなのだろう。
国王陛下と王妃、それから幾人かの兵士がいるのみだった。
謁見の内容は事前に通達されていたため、報告を行うのに近い問答だった。
だが国王陛下に、
「怪しい者のいる場所だと分かっていて泊まるのはもうよせ。お前はもう立派な当主なのだから」
と言われたことには驚いた。
何に驚いたかって?
決まってるだろ?原作と全く同じことを言っていたからさ!
具体的にはあそことあそこがくっついて頑張ってた時に。
だが、すごくすごく正論なので耳には留めておくし努力はしようと思う。
そしてその後はそのまま領地に戻るのかと思えば、この後また国王が訪ねてくるらしい。
今度は非公式で。
そして、謁見直後にまた国王が来た。
しかも兵士を誰一人として連れず、飲み物を持ってきたメイドも下がらせた。
二人っきりだ。
そして、
「今回の奴隷売買に関わった幹部の逮捕、ご苦労だった」
「ありがとうございます陛下」
「それで、奴隷に取り調べを行ったのだろう?黒幕は吐いたのか?」
「ええ。アドルフ様です」
あっさり言った瞬間、国王陛下の顔が一瞬驚愕に変わる。
まさか黒幕が分かったとは思わなかったのだろう。
しかも、相手は政敵とはいえ血の繋がった弟だ。
だが、さすがは国王。直ぐに切り替えて、
「犯人が分かっているのであれば話は速い。アドルフの近辺を探らせよう。そして、ハルモニア伯爵家には、相応の礼をしよう」
「それであれば、我が家で抱えている借金を肩代わりしていただけますか?どうしても払いきれない可能性がありますので」
「かまわない。むしろそれだけでは足りないだろう。伯爵家が資金援助を一定期間受けられるよう手配する」
ということで、我が家に資金援助が振りかかることになった。
新しい代官は、伯爵家にいる使用人の中から決めようと考え、全使用人を選別した結果、侍女長(真人間)のミレイが最も適性があるようだったので、ミレイに任せようと考えている。
これで大体のことが順調に進む!と思って家に帰ると、どうやら順調には行かないということをありありと見せつけられた。
どうやら、うちの妹が癇癪を起こしているらしい。
すぐさま案内された現場に行くと、そこはありとあらゆるものが散乱してる凄惨な光景が広がっていた。
その中心には、
「公爵家に嫁ぐのに何で勉強なんてしなきゃ行けないの!めんどくさいやーだー!!!」
とガキのように駄々をこねる妹がおった。
どうやら、公爵家に嫁ぐこと自体は嬉しいけども勉強が嫌らしい。
全く、うちの家族は役に立たない。
オロオロしてないでいさめろやと思っていたところで、妹は私を見つけたようで、
「なんなのあの先生は!いっつもお小言ばっかりだし、勉強は難しいし。公爵家の人間になれるのよ!私の方が偉くなるのよ!」
とかよく分からんことを口走っている。
なんにせよ、妹が嫁いでくれなければどうにもならない。
フィーリングで説得Part2である。
「公爵家には歴史がある。伝統がある。立場だってある。そういうものを守るための力が、公爵夫人には必要なんだ。その力ってのは、男を前にしたら軽々しく腕を絡めることでも、それ以上の関係になることでも、身体を使って籠絡することでもない。頭を使うんだよ。嫌味を綺麗に跳ね返したり、客人からの質問に即答したりできるような頭が、知識が。それが分かったらさっさと勉強しな」
「嫌だ!!私は勉強なんてしたくない」
「なら、そもそもお前は嫁ぐな。この話は私が掛け合って破談にしたる」
「なんで············なんでそんな事言うの!!!酷い!!」
残念なことに、話が通じなかったようだ。
助けを求めるように父と母を見る。
だが、彼らは私が言ったことを正論だと理解しているようで、何も言わない。
味方が居ないことを悟ったのか、妹は大声で泣き喚く。
「酷い!最低!なんなのよ!みんな私に文句ばっかり言って!一番は私なのよ!」
「最後だ。公爵家に嫁ぐために死に物狂いで外ズラを磨くか、伯爵家にいるまま行き遅れになるか」
妹の文句を封じるため、私は耳もとで、
「お前、私を見下したくないのか?公爵家に嫁いだら、爵位は私の方が下だ。私を超えたくないのか?超えたいなら努力しろ。公爵家に嫁ぐことは、お前にしかできない事だ」
その言葉で、どうやら妹は腹を括ったらしい。
「わかったわよ。やればいいんだろやれば。勉強すれば」
どうやら説得できたらしい。
これでいよいよ、一件落着だ。
あれから六年後、
私はハルモニア伯爵家を、無事立て直し、多くの貴族とビジネスを行い、事業を拡大させた。
年々伯爵家の予算が増えていく帳簿は、見てて気分が良くなる。
うちの妹は、しっかり公爵家でやっている。
完璧とよく言われる公爵に、相応しい人だという噂をよく聞く。
たまに会うと、残念なことに外面だけがいいことが分かる。
たまに家族団欒で、話していると、見るからに自慢げだからね。
何はともあれ、これにてひとまず一件落着
まずはこの作品を読んでくれてありがとうございます。
私は他作品の連載もしていますので、是非とも其方もご覧下さい。
また、この作品をすこしでもいいなと思ってくれた方は是非とも応援をよろしくお願いします。
この作品、短編ランキングとかにランクインしてるっぽいです!
見てくれている方は、是非とももっと評価を下さいw




