第五話
「えっと、つまり十二時になった瞬間に俺の体が青く光り始めて気づいたら女の子になってたってこと?」
「そうだね」
「どうしてこんなことに......」
「まあリンちゃんかわいいし、いいんじゃない?」
「なんでちゃん付けなんですか。恥ずかしいです」
「え~ダメ?」
「.....ダメとは言ってないです」
本当何なんだこの人は。
距離が近すぎるだろ。
.......そんなことよりなんでこうなったのか原因を探さないと。
「なんか原因で思い当たることってないですか?」
「ん~、リンちゃん十六歳超えてるし覚醒したんじゃないかな」
「覚醒って...よく知らないんですけどスキルでこうなったってことですか?」
「うん。とりあえず確認してみてよ」
そういわれたので、ステータスを見たいと心の中で念じてみた。
すると俺の念に答えるように、目の前に半透明のウィンドウが現れる。
〈ステータス〉
遊馬 凛 LV1
ベーススキル【シンデレラ(U)】
ツリースキル なし
「どう?ステータスウィンドウ出てきた?」
「はい、ベーススキルってとこの横にシンデレラ(U)って書いてありました」
「やっぱりユニークスキルかぁ」
どうやらこのUって文字はユニーク———つまり特別なスキルってことを表してるらしい。
紬さんが言うにはユニークスキルはその人しか持ってないスキルで、C~Sまでランク付けされてるスキルとは全く違うベクトルのスキルがほとんどだとか。
「前例がないってことは、このシンデレラってスキルがどういうやつなのかわからないじゃないですか」
「確かに情報は圧倒的に少ないけど、スキルをとこを指でタッチしたら説明が出るはずだよ」
「それを早くいってください」
再びステータスオープンと念じてウィンドウを出すと、スキルの部分をタッチしてみる。
[12時~0時までの間、変身をする。]
「12時から0時まで変身するとしか書かれてなかったです」
「あちゃー、これはレベル上げないとわかんないパターンだな」
「どういうことですか?」
「たまーに、レベルを少し上げないとちゃんと説明してくれないユニークスキルがあるんだよ」
「なんですかそれ。性格悪いですね」
てことはダンジョンに潜らないといけないのか。
「まあ、その説明の感じだとお昼から深夜までは女の子になるってことなのかな」
「多分....」
ただでさえこれからどうしようって考えてたのにこんなことになるなんて....
勘弁してほしい。
「じゃあ早速リンちゃんの服やらいろいろ買わないとね!」
「なんでそんな乗り気なんですか」
「だって妹ほしかったんだもん。こんなかわいくなるなんて聞いてないよ」
俺だって事前に神様に聞けたなら聞きたかったよ。
「ちょっと待ってね、女の子になったなら私の服着れるよね!」
そういって紬さんは自分の服を持ってきて俺を着替えさせた。
やっぱり背が縮んでる。
男の時着てたジャージはぴったりのサイズだったのに今着てる紬さんの服は少しサイズが合わない。
「うーん、サイズが合ってる服買わないとかな」
「そう、ですね」
「まあどうせ下着も買わないとだしショッピングモールいこっか」
そういって紬さんは俺の手を取ると、玄関をあけて俺を外へと連れ出した。
二日後
俺は朝早くから紬さんと池袋の冒険者ギルドへと訪れていた。
そして、さっき支部長に事情を話して変身前と変身後のライセンスを発行してもらった。
「じゃあD級ダンジョンに行ってみようか」
「もうですか?」
もともと入るつもりではあったけど、説明とか何も受けてないのに大丈夫なのだろうか?
「D級ダンジョンの一階は基本的にモンスターが沸かないチュートリアルエリアだから大丈夫だよ」
「そうなんですか。さすが本業なだけあって詳しいですね」
「もう、やめてよ恥ずかしい」
そんなことを言いながら、二人は渦を巻いたゲートをくぐった。
ダンジョンは、俺が想像してたものとは少し違った。
洞窟のような何もない空間ではなく、木や草などが生えていた。
虫なんかもちらほら見える。
「異世界みたい...」
咲いてる花はどれもきれいで、魔物と戦うのが想像できないような場所だ。
不思議とワクワクしてきた。
「ここはオープン型だからこんな感じ。綺麗でしょ?」
「本当、さっきまでギルドに居たことを疑うくらいには綺麗です」
「凛君はダンジョンについてどのくらい知ってる?」
「魔物がいて、それを倒すと稼げるってことは知ってます」
ネットは使えない環境にいたからダンジョンは詳しくない。
「じゃあ一から説明するね。まず、ダンジョンってのは神が作ったものなんだ。地球の資源が足りなくなったから資源を追加する目的でね」
「ダンジョンは資源が取れるんですか?」
「そう、有名なのは魔物を倒したら出てくる魔石ってやつ。これを使えばエネルギーを作れるから質や大きさによっては数億で取引されることもある」
そんなに稼げるのか。
「ほかにもレアメタルとか薬草とかいろいろとれて、ダンジョンのランクが高くなるほど取れるものの質や量が増える」
「ダンジョンのランクってどんな感じなんですか?」
「私たちが潜ってるDランクが最低で、C、B、A、Sランクがあるよ。ただ、Sランクは難易度が高すぎてまだ一つも攻略できてないのよね」
各ギルドに、一つずつ全難易度のダンジョンがあるらしい。
「じゃあ次はステータスについてなんだけど、ステータスウィンドウ開ける?」
言われた通り、ステータスウィンドウを開く。
「まず、自分の名前の横にあるLV。これは自分のレベルを表してて、魔物を倒したりして経験値を得ることでレベルアップするの。レベルは冒険者ランクの指標にもなっていて、基本的に各ランクになるために必要な最低レベルってものがある。凛君は冒険者登録したばかりだから、次に目指すBランクになるために三十レベル以上にならないとね」
冒険者ランクはC~Ssまであって自分の一個下のダンジョンを完全攻略するとそのランクになれるらしい。
「次に下のベーススキルとツリースキルについてなんだけど、凛君はユニークスキルだからいろいろ特殊なんだよね」
「普通の人はどんな感じなんですか?」
「そうだね、まず普通の場合を教えるか。まず、スキルってのはスキルツリーってやつで構成されてるんだけど....ゲームとかやったことある?」
「ゲームはほとんどやったことないですね」
「じゃあ見たほうが早いか。はいこれ」
そういって見せられたスマホには、木の枝のように枝分かれしている図が描かれていた。
「ベーススキルってのはこのスキルツリー全体の名前で、一番最初に開放されてあるスキルの名前でもあるの。このスキルツリーはレベルアップやボス討伐、修行なんかのきっかけが起きると解放されてく。で、解放されたのがツリースキルっていうの」
「枝分かれしてるところはどっちも開放はできないんですか?」
「もちろん例外はあるけど基本そうだね。だから同じベーススキルでも差が出る。あとはベーススキルのランクが高ければ高いほどスキルツリーが大きくなるね。Bランクのベーススキルだと大体四十レベルくらいでスキルツリーが完成するっていわれてる」
つまりベーススキルのランクが高いほどツリースキルが多く得られるってことか。
見た感じ枝分かれもたくさんあるから完全に一致することは少なそうだ。
....ランクが上がるにつれスキルツリーがでかくなるってことはユニークはどうなるんだろう。
「じゃあユニークスキルのスキルツリーはどうなってるんですか?」
「——それがユニークスキルは実際にスキルツリーを見てみないとわかんないの。スキルツリーがなかった人や、Sランクの二倍のスキルツリーがあった人、スキルツリーを選びなおせる人もいるのよ」
スキルツリーをみてみるのか。
試しにステータスと同じようにスキルツリーを見たいと念じてみるが何も起こらない。
「スキルツリーってどうやって見るんですか?」
「えっとね、Cランクの一階のボス。つまりチュートリアルボスを倒せば見れるようになる」
「え、ボス倒すんですか?俺戦ったことないんですけど...」
「大丈夫、倒せなかった人いないから!」
———なんかフラグが立った気がするけど大丈夫か?
ここまで読んでいただきありがとうございます!
続きが気になる人はブックマークと評価を頂けると嬉しいです!