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第4話 時をかけるうどん

愛の記憶をうどんがつなぐ

 僕は仕事のため1泊2日の出張に出た。

そうそう、紹介のタイミングを逃しましたが、僕の仕事はシステムエンジニアなんです。

名古屋へ向かい無事にシステム導入も完了して、帰りのお土産選びだ。

前の動物園デートで澪さんは動物好きそうだったから、ぴよりんかな。逆に動物を食べる前に泣いていると想像力を発揮してしまうか…。


我が家に到着した。あれ、澪さんは寝てる?時間的にカフェでネタ探しかな?

しばらく歩みを進めると、キッチンで倒れている…澪さん!?

うわあああ!!こ、呼吸しているか確認しないと!!

よし、大丈夫!寝息を立てているだけだ。

まずはベッドまで運んで、起きたてなら体に優しいのがいいか。うどんの具材を準備しよう。

以前にもこういう事はあったので、自分の中でマニュアル化はできているのである。

そういえば前は付き合ってた時だったかな…あの時もうどんだったな。


――あれは、付き合って3か月くらいの頃のことだった。

書店デートの帰り、澪さんの下宿先に寄って日帰り旅行の計画を立てたあと――

「そうだ、私たまに執筆に集中しすぎて出れない時とかあるから合い鍵渡しておく。」とまさかの彼女からの合い鍵をもらった。え!?逆じゃないか!?澪さん、僕も一応男だから用心した方がいいよ。

でも、そこまで信頼されているというのもうれしいな。

今日は同じ講義の時間なんだけど澪さんの姿が見当たらない。LINEも「体調悪い?大丈夫?」と送ったのにまだ既読がついていない。…もしかして執筆で時間を忘れている!?

それならあり得るかもしれないな。今日の欠席になってる講義のノートと執筆で集中してるなら食べ物の材料も買っておこう。

澪さんは想像力にステータスを全振りしているからか料理は苦手みたいで即席もの、ひどいときはゼリー飲料で済ませるらしい。

小説家はいつまでも小説を書くから体が資本になるし、野菜入れた鍋焼きうどんにしよう。

勝手にキッチン使うってさすがにやりすぎか…。


自分の意志で部屋に入るのは初めてだと緊張しながら入ったが、部屋は暗く物音はしない。

あれ?澪さん留守なのかな?とおそるおそる歩みを進めていく。

そこにはキッチンに倒れている澪がいた。

「ギャー――――!!さ、殺人現場ーーーー!?」

落ち着くんだ、直人。まずは息をしているか確認だ!!と深く深く深呼吸をする。

聞こえてきたのは穏やかな寝息だった。

(良かった…。本当に良かった…。)

まず床で寝ているのは体も痛いだろうから、ベッドに運んでいく。

べ、別に床が痛そうってだけで、やましい心はないから!!

さてと、勝手で悪いけどキッチンを借りよう。ちらっと見えたゼリー飲料と翼を授ける飲料の空き缶を見て決意した。

うん、料理ってまるでプログラミングしているみたいで僕は好きだ。

楽しくて料理に夢中になっていると後ろから

「おお!いいにおいがする!直人くん来てくれてたのか?」とあっけらかんとした澪さんの声。

「ごごごご、ごめん。お邪魔して倒れてたのでベッドに運んで、何か栄養あるもの食べた方がいいかなって台所借りて鍋焼きうどん作ってます。」

「いやあ、合い鍵渡しておいてよかった。ありがとう!命の恩人だな!」

「無事でよかったよ。澪さん、執筆におそらく集中してたかもしれないけど野菜もたまに食べた方がいいよ。体が資本であるからね。」

「すまなかった。ただ、私ガスコンロが爆発したことがあってから、料理が遠ざかってな」

「直人くんが使ってて大丈夫ってことは……私の操作ミスだな」

ガスコンロの爆発ってどうやってできたんだろう…?謎が解明される前に鍋焼きうどんが無事にできた。

「さ、執筆お疲れ様!食べよう!」

穏やかな食卓風景にし、新婚みたいだなと照れてしまう直人。

「おいしい!直人くんはすごいな!すぐにでもいい奥さんになれるぞ!」

…澪さんはエスパーなのかな?

こっちが一方的に照れるのもなんだか悔しく感じたので

「澪さんが執筆に集中しても大丈夫なように僕が一緒にいてまた作ってあげるよ!」

「?ああ!よろしく頼む!」


……今思えば、あの時の言葉って、けっこう本気だったんだよな。

「一緒にいて、作ってあげる」――あれってもう、気持ちが出てたよなあ……。


「……ぴよりんは…無事か……」

寝言でお土産を当ててきた…!?

「おお!鍋焼きうどん!起きたてにはこれだな!」

良かった!澪さんは無事に起きてきた!

「お疲れ様!はい、お土産のぴよりん!先にうどんは食べられそう?」

案の定ぴよりんは「可愛すぎて食べれないぞ!」と目を輝かせていた。

「出張から帰ったばっかなのに悪いな。そういえば昔も鍋焼きうどん作ってもらって、あれ?一緒にいようて言ってくれてたかな?」

「な、何か言ってたかなあ?覚えてないかも。」

あんな中途半端なプロポーズは、二重の意味で恥ずかしい…。

澪さんのような小説に全集中する才能が欲しいこの頃

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