第3話 動物園デートとゴリラの恋愛論
今回は動物園デート回です!
今日は澪さんから「動物園に行かないか?」と誘われた。
動物園って、なんだか……デートっぽいな。
締め切り明けで少し余裕ができたらしいけど、澪さんのことだからネタ探しも兼ねてるかもしれない。
「なんだか動物園でデートしてみたいと思ってたんだよな!楽しみだな、直人くん!」
……で、デート!?
デートって言葉を澪さんの口から久々に聞いた気がする!
皆様お待たせしました!!今回は甘々回をお届けできるかもしれません…!!
動物園に入ると、澪さんのテンションは最初から高めだった。
馬のつぶらな瞳を見て、「かわいいなぁ」と慈しむようなまなざしを向けている。
キリンやカバの迫力には目を丸くして圧倒されていたし、
ペンギンのよちよち行列には子どもみたいにはしゃいでた。
普段のカフェデートも楽しいけど、こうして“ザ・デート”みたいな時間を過ごすのも、すごくいいなって思う。
最後に立ち寄ったのはゴリラのエリアだった。
ゴリラたちは複数いて、それぞれ気ままに過ごしている。
見てるだけでなんだかこっちまで落ち着くな……。
と思っていたら、あの2頭のゴリラ……オスとメスかな?
うわ、なんか急にイチャイチャしだしたぞ!?
やばい、澪さん大丈夫かな……こういうの、あんまり免疫ないはずだし、気まずそうなら別の場所に――
と思ったら、
澪さん、腕を組んで真剣な表情でガン見してる!?
(え、ええ!?めちゃくちゃ食い入るように見てる!?ま、まさか澪さんもイチャイチャしたい願望が……?て、手、つないでみようかな……)
そっと手を伸ばしかけた、そのとき。
「直人くん……ゴリラとか動物でも、好みのタイプとか、相手とのフィーリングってあるのだろうか?」
……あっ、そっちかー!!
完全に作家モードだったー!!!
光の速さで手を引っ込めた僕。
「カップルみたいに見えるけど、あの2頭はお互いの何に惹かれたんだろう。
人間なら、外見とか趣味とか、結婚なら利害の一致とか色々あるけど……。
動物にも“この相手がいい”っていう、内面的なフィーリングってあるのかな?」
うん、そこまで深く考えられるの、本当すごい。
この人、視点がひと味違うんだよな。作家ってみんなこうなのか?
「す、すまない。せっかくのデートなのに……ムード壊しちゃったよな。普通のカップルなら、もっとロマンチックな雰囲気になるんだろうに……」
ゴリラのイチャイチャを見てラブラブな雰囲気はあまりないかなってツッコミしたくもなったけど、
そんなふうに相手を気遣ってくれるところも、澪さんの魅力だ。
「謝らなくていいよ。
僕は澪さんの視点すごく面白いと思ったし、いつも澪さんの話が楽しくて毎回聞くのが楽しい。
そんなふうに深く考えてる澪さんが、僕は好きなんだ。
見た目だって、僕以外にも美人だなって思ってる人はきっと多いと思うし、
でも僕は――澪さんの好きなところが、たくさんある。」
あれ?
今、僕めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってない!?
澪さんはうつむいて、顔を赤くしていた。
「そ、そんなふうに思ってくれてたんだ……。
色気のない会話ばっかりしてるから、あんまり異性として意識されてないのかと思ってた……」
「私も、直人くんと過ごす毎日がキラキラしてて、すごく楽しい。
私と一緒にいてくれて、ありがとう。これからも、改めてよろしくな!」
そのとき――
ゴリラカップルが、まるでこっちを生暖かい目で見ているような気がした。
※ゴリラのカップルに学ぶ、愛のかたち。妄想小説家はどこでもネタを拾います。