表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡夫ですが、天才小説家の妻に愛されています  作者: 小田原 純


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

平凡夫ですが、初日の出で再プロポーズしました

「直人、年末年始なんだけど両家とも家空けてるから、夫婦でのんびり過ごしなさい」

今年の終わりが近づいたので、実家に顔出しのことを聞いたら、まさかのお断りだった。

「夫婦水入らずで旅行? 良いね。どこに行くの?」 「私と美代子さんでコミケに行くのよ。そこにお父さんたちも付いて来るみたい」 「待って待って。ツッコむべきパワーワードが渋滞してるんだけど」

一体、父母があの戦場と噂される場所に行くなんて、誰が想像できただろうか。

しかも前回の旅行で分かったけど、あのお父さんたちをお母さんたちで制御できるのか?

「心配しなくても何とかなるわよ。まあ、みんな財布の紐は緩みそうね。行くまでに小銭用意とサークルチェックってやつ、しとかなきゃ」 「それが分かってたら、もう歴戦の猛者だよ……」

相変わらず母の順応がすごい。

親たちのコミケ話、聞いたら澪さんどんな話作るんだろう。

俊彦さんも、何か感化されちゃったりして。

通話を終えると、澪さんも自室からリビングにやって来た。

「もしかしたら同じ話かもしれないな。お母さんから、年末年始帰ってこなくていいって」 「そうみたいだね。みんなでコミケに行くなんて、お母さんたちのバイタリティすごいよね」

他愛のない話をしながら、気づけば二人でのんびりとした年末年始が決まっていた。

結婚前までは家族と紅白やおせちが当たり前だったけど、

澪さんとは、どんな年末年始になるんだろう。少し楽しみだ。

「あのさ、ちょっとした山のところで初日の出、見に行かない? 御岳山が良さそう」 「良いね。ケーブルカーも、なかなか乗れないし」

一度自然に魅せられた僕たちは、また自然の景色へと誘われた。

電車で移動し、目当てのケーブルカーに乗り込む。

「ケーブルカーから見ても、景色きれいだね」

そう言っても、澪さんから返事がない。

心配になって振り返ると、ものすごく険しい顔をしていた。

「み、澪さん。まさか高いところダメだった? それとも酔った? 大丈夫?」

初めて一緒に過ごす年末なのに、判断を誤ったのだろうか。

罪悪感が胸をよぎった、その時――

「ここでタコ星人が現れたら……スパイダーマン、助けに来るかな……?」

良かった。通常運転だ。

「自分で脱出できない乗り物の中で、物騒な妄想やめて! トラウマになるよ!」

周りの人たちからも、どこか同情混じりの「あるあるだよね~」という空気を感じて、少し救われた。

無事に到着し、少し歩を進める。

まだ日の出前でも、展望台の景色は十分に美しかった。

「やっぱり自然は落ち着くね。皐月ちゃんたちとのキャンプ、楽しかったもんなあ」 「キャンプ楽しかったね。忍者屋敷の旅行も新鮮で楽しかったな」

ツッコミは大変だったけど、いい思い出だ。

「結婚して、素敵な思い出が増えたな。これからも楽しみだ」

澪さんは、眩しい笑顔で答えてくれた。

彼女は、僕の言いたいことをいつも先に言語化してくれる。

さすが、小説の化身。

でも――これからの言葉は、僕が自分の口で伝えたかった。


胸の奥で、ずっと温めていた言葉が、ようやく形になる。

「澪さん!」

澪さんは少し驚いた顔をしたが、まっすぐこちらを見てくれた。

小箱を差し出し、震える手で言葉を紡ぐ。

「僕は澪さんと結婚して、本当に幸せです。大好きです。

これからも、末永く僕といてください!」

指輪は、初日の光を受けて、ひときわ輝いて見えた。

あの時、出遅れて渡せなかったプロポーズの指輪。

なんで今なんだ、とは思うけど……。

恐る恐る澪さんの顔を見上げる。

日の光に照らされた、穏やかな笑顔。

「直人くん。私も同じことを思っているぞ。

これからも、楽しい思い出を増やしていこうね!」

指輪を受け取ってくれた。

「もちろん。これからも、末永くよろしくお願いします」

初日の出は、僕たちを祝福するかのように、優しい光で照らしていた。

震えていたスマートフォンには、父母たちの戦利品を掲げた写真が届いていたけれど――

この話は、また別の機会に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ