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04 知らない世界と信仰と緊張と

ガサガサと2人の後を追うと、まるで絵本で見るような御伽噺のような白い大きな建物があった。

その外見はまるで教会で、白く輝く石造りの建物は、近くで見るとより荘厳で美しい。


これが彼らが言っていた神殿なのだろうか。

そうなると、私がいた場所は神殿の庭だったのかな。

トーカさんの言うように、子供たちも辺りで遊んでいるようだった。


「さあ、着いたよ」


そう声をかけてくれたのは、優しく微笑むトーカさん。

灰色がかった黒髪で頭の上には同じ毛色の犬の耳がある。

それに後ろには、私の腕よりも太くふさふさした尻尾があった。

年は、40代くらいかな…おじさん、という訳ではないけど、やさしくほほ笑みかけてくれるのは大人の余裕だろうか。

シンプルな麻のTシャツを着ていて、腰には細い剣が刺さっていた。


その隣には、じっと私を見るレオノールさん。

まるで学生の頃美術室で見た彫刻のような美しさだ。

耳はやっぱり長く尖っていて、淡い黄金色の髪は腰くらいある。

トーカさんより少し若い30代くらいに見えるが、話を聞く限りどうやら何百年生きている、らしい。

深い紺色のローブを着ていて、まるで魔法使いのようだ。


「あの…ありがとうございます。

私、気付いたらあそこにいて…。

名前は、楠木優くすのき ゆうです」


そう答えると、トーカさんの表情がぱっと明るくなった。

犬のような耳がぴくりと動き、尻尾がふわりと揺れる。本当に動くんだ。


「よろしく、ユウ」


あの後、勢いに負けてレオノールさんを追うと、今目の前にあるこの大きな建物が現れた。


「ここはライメア神殿だよ」


そう言いながら、トーカさんが扉を開ける。


中からは、涼やかな空気と仄かな香がふわりと漂ってくる。

白と金を基調にした内装は、陽の光を反射して柔らかく輝いていた。

正面にまっすぐ伸びる大理石の通路の先には、ひときわ大きく真っ白な女神像が立っていた。


「これが女神ライメアの像だよ」

「…初めて、見た」


ぽかん、と口を開けて女神像を見上げる。

初めて聞いた宗教、それに初めて見る女神像。


あまりに突然の出会いで現実味がなく、正直テレビで世界旅行の番組でも観ている気分だ。


「トーカ、来賓室へ」


神殿内にいたシスターと話していたレオノールさんがそう言う。

2人に付いて通路を進み、中庭に出てさらにまた歩くと別館のような場所にたどり着いた。

少し雰囲気が代わり、あちらこちらに豪華な金の装飾や絵画が目立つ。


「さあ、中へ」


またトーカさんが扉を開けてくれる。

中は今までの神殿の雰囲気と違って、なんというか中世ヨーロッパのような雰囲気だ。

ロココ調とでも言うのだろうか、神殿にはあまりふさわしくないように感じるお姫様が使う様な家具や装飾、布をふんだんに使ったカーテンが目に入った。

トーカさんが椅子を引いてくれ、私はお礼を言って腰を下ろす。

丸いテーブルの正面に2人が静かに座った。


「では、今一度改めて……」


トーカさんが一息ついてからまた話し始める。


「ここは、アストリア国エリネアにある“ライメア神殿”。俺は神官ではなく、レオノールの護衛をやっているんだ。昔馴染みなんだ。レオノールは神殿付きの神官。神殿の敷地内にある神官居住区で一緒に暮らしている。


…ユウは、どこから来たの?」


こちらを伺うように、トーカさんが優しく微笑んでくれたが、言葉が心臓あたりにズシリと重く乗りかかる。

額に嫌な汗が流れた。

次回は 7/14㈪お昼12時 に更新予定!

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