『奇妙な論理1 だまされやすさの研究』 マーティン・ガードナー 著
地球空洞説、相対性理論への攻撃、性的エネルギーが政治や社会活動を左右するオルゴン理論、生まれる前のストレスが元になって多くの病気が起きるとしたダイアネティックス、様々な怪しげな療法、治療器具、主義主張、進化論の間違いを声高に主張するファンダメンタリストの創造論、などなど珍妙なトンデモ説が紹介されている本。
だまされやすさの研究と副題にあるが、本書にはそのような内容はほとんど書かれていない。あるのはいかにして人が疑似科学を生み出し、その研究を拡大し、奇人へとなっていくのかだ。
最初、題名詐欺だと思ったが読み進めるうちに、様々なトンデモ説が登場して、そういう不満は何処かへ行ってしまった。
ネットで調べてもこの本で紹介されているトンデモ説はほとんどヒットしなかったが、この本が描かれたのは50年代とあるからそりゃ流行も下火になるよなと、「兵どもが夢の跡」という俳句が思い浮かんだが、巻末の解説ではどうやらそうでもないらしい。
現在まで脈々と受け継がれている主張もあるし、手を替え品を替え科学の周縁部に今も現れ続けるトンデモ説もあるとのことだ。
50年代にどれだけこの本で紹介されているトンデモ説が流行ったのかは流石に思い至ることはできないが、こういった本が書かれているあたりだいぶ浸食が進んでいたのではなかろうか。
笑っていられるうちはまだいい。本書では無知蒙昧な理論がどれだけ多くの悲劇や差別を生んだのかも書かれている。例えば、読んだ中でいえば、ナチスに採用されアーリア人以外の人種は劣ったものであるというナショナリズムを形成させたチェンバレンやギュンター教授の北方人種優越説がある。
また、チャールズ・キャロルは白人以外の人種には魂がないと自著の中で述べている。
これが容易に差別につながることは歴史が証明している。
『奇妙な論理2』もあるようなのでそっちも読んでみたいと思う。