『ネット怪談の民俗学』 廣田龍平 著
タイトルからして気になっていた本。
図書館で借りようと思っていたのだけれど、いつまで経っても予約で埋まっていたから、それなら買う方が早いと散財してしまった。
まあそれだけ読みたかった本と言える。
ネット怪談は前から興味を持っていて、「小説家になろう」にも洒落怖風短編を書いたことがあるほどだ。だからそれらについて書いた本となれば読んでみないとな、と思っていた。
ネットの怪談を扱った書籍は今までだと、『ネットロア ウェブ時代の「ハナシ」の伝承』(伊藤龍平 著)しか読んだことなかったし、多分その本以外にはないんじゃないかと。
この本は民俗学というアプローチでネット発の怪談やホラーに挑んでいる。
民俗学とは本書の中でも説明されている通り、「教科書に載るような社会や歴史の大きな動きを見ているだけだと取りこぼされてしまう、多くの人々の言動や習慣(まとめて「民俗」や「伝承」などという)を研究する学問である」のことだ。
ネットの情報も過去ログが見られなくなったり、サイトが閉鎖することで消えてしまうことがある。本書は記録することで将来の人にもネット怪談やネットホラーの見取り図を残そうとする試みでもある。
俺がこの本を読んで、思ったのはネットの怖い話は今も語られ続けているのかという驚きだった。
俺の中では洒落怖くらいしか怖い話を知らなかったので、洒落怖が衰退してからの情報はあまり知らなかったのだ。
ネット発の怖い話にはネット怪談とネットホラーがあり、前者は語り手が特定できないノンフィクションものであり、後者は語り手が特定できるフィクションとして楽しまれているものらしい。
洒落怖はネット怪談に分類される。一方のネットホラーは洒落怖が衰退した後にも脈々と続いてきた。
ニンゲンやバックルーム、心霊スポット実況配信、異世界に行ってしまった系といったジャンルだ。
さらに、ネット怪談も洒落怖が衰退してい終わりではなく「小説家になろう」や「カクヨム」や「エブリスタ」に作者が流れていき、そこでネットホラーとして現在も生きているとある。
確かに、見ていると怖い話はたくさん投稿されている。かくいう俺もその中の一人だ。現在のネット怪談は作者とのつながりが分かるようになり、創作性が強まっているとある。
俺がネットではなく「小説家になろう」に投稿しているのもやはり、匿名で書くことがもったいないと考えているからでもある。また、コメントとかをもらうとどう返していいか分からないので、掲示板は敬遠しているのもある。
洒落怖が衰退した原因に、田舎の因習系が飽和状態になったり、どれも同じ展開であるあるがまとめられるほどネタ化して飽きられてしまったからと本書では説明されている。洒落怖あるあるのスレも紹介されていたが、まさについさっき見たスレと同じものが紹介されていて、笑った。
ネット発の怪談やホラーを縦横無尽に書き尽くした本書はおそらく、ネット怪談をまとめた本として、これから重要な資料になるだろう。