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1の章 ラスボス、転生する

 世間では、まだ誰もクリアするものが現れない超無理ゲー『クリスタルクエスト』が社会現象になっていた。


なんでも、そのゲームは勇者を育成して仲間を増やし魔王を倒すという内容だが最後のボス『ヘル・サターン』には全く手も足もでずに負けてしまうらしい。


ヘル・サターンと対等に戦うためには、主人公の勇者のレベルを99999まで上げないと無理らしく計算上では99999レベルにするためには休みなくプレイし続けても100年はかかるという噂だ。


このゲームが開発されて命を吹き込まれたヘル・サターンは、一生倒されることはないだろうと思っていた。なぜなら、休まずプレイして100年かかるのならみんな諦めてしまうと考えていたからだ。

そして挑戦するものがいなくなれば、ゲーム史上初のボスが戦うこともせず穏やかな日々を暮らせるという快挙を成し遂げられる。


いつものように、ヘル・サターンは猛者たちを瞬殺していた。


『まったくいつになったら、俺にダメージを喰らわせるやつがくるのだろうなぁ』


と言いながら猛者たちの相手をしていると、そこに完全初期装備の勇者が現れたのだった。それを見たサターンは、


『初期装備でこの私に挑むとは、気が狂ったかな』


と勇者に呼びかけた。そしていつもの呪文で倒そうとすると


『な、なにっ! 身体が動かない! なぜだ』


全く身動きができなかったのだ。


この勇者を操作するプレーヤーは、クリスタルクエストのプログラムを徹底的に調べ上げ、初期装備でラスボス戦に挑むとヘル・サターンがまったく攻撃してこなくなる"バグ"を見つけていたのだ。


そうしてヘル・サターンはあっさりとどめの一撃を受けた。

倒される瞬間にこんなことを考えていた。

『俺は、ゲームのキャラだからどうなるのかな。このまま消滅して下級モンスターにでもなるのだろうか』と。


しばらくしてヘル・サターンは目を覚ますと屋敷の前の大きな門の前に立っていた。


『ここはどこなんだ』


と言いながら、自分の身体を見てみると人間になっていたのだ。


『俺は、人間になったのか… まあ下級モンスターになってあたふたするよりもましか』とぶつぶつ言っていると、門の奥からスーツを着た男性がやってきてこう言った。


『お待たせしました。今日からエドワード家のお嬢様の執事をしてくださるターン様ですね。こちらへお入り下さい。』


案内された自分の部屋の入り口を見ると、"ターン・ヘルサ" となっていた。


どうやら、俺はゲームのラスボスからゲームの世界を飛び出し、執事ターン・ヘルサとして転生したらしい。





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