episode.2 牢獄
A long time ago.
The story of a certain galaxy……
「恥を知れ」
「武器を持って戦え」
他の星へ逃れようしたがそれは叶わず、俺は批判の嵐の晒された。
武器を持って戦うということは、自分が殺されるかも知れないという事。
銃を持つということは、引き金を引いて人を殺すこともあるということ。
殺人者になるということ。
軍人として教育を受けたこともない俺が戦場で急に強くなれる訳がない。
戦時中であろうと平時であろうと、どんな時でも人の命の重さは同じで、どんな国のどんな立場の人でも命はひとつ。
そんな母の教えが染みついているから、きっと俺は戦場に立っても逃げることしかできない。
そして敵か味方に撃たれて死ぬだろう。
俺はキッチンツールを販売する会社の、商品管理部門のチーフだった。
食べることも、つくることも好きで、本当はシェフになりたかったが踏み出す勇気が足りず、大学に進め、サラリーマンになった。
そこで、恋に落ち、伴侶を得、娘を授かった。
地味な努力が身を結び、確かな幸福がそこにはあった。
けれど、それは一瞬で吹き飛んだ。
薄雲が暗雲となり始まってしまった戦いは、人々の日常をガリガリと削り取っていく。
勇ましい言葉で国民を躍らせ、刺激的な情報人々で怒らせ、首脳部は国を戦いへと誘った。
偏った短絡的な正義のために、何故俺は死なねばならないのだろう。
俺が愛国者と呼べるかは分からない。
しかし、故郷の景色が好きだ、この国の食べ物も好きだ、流れる音楽も、空気の匂いも好きだ。
愛しい人を育み、俺を守り育ててくれたふるさとが大好きだ。
安易に妥協しろとは言わない。
けれど、安易に拳を振り上げることこそ、真の平和から遠ざかる道ではないのか。
武力に訴えるのでは無く、対話と交渉をする事で解決策を探るのが、国を預かるものの採るべき道ではなかったのか。
それはおそらく直ぐに成果の出るものではなく、とてつもなく忍耐を必要とするものだろう。
今この国は、悲観し、打ちひしがれ、戦うことや死に対する感覚が麻痺してきている。
戦いは、国土と国民を傷つけこそすれ、守ることは無い。
これは本当に我々が望んだことなのか?
正義に酔う人々は、安全な場所にいて利益を得る誰かの手の上で踊らされているだけなのではないか。
そんな子どもじみた陰謀論を考えてしまうくらい、俺はおかしくなっている。
なんだろう。自由のために戦うはずが、牢獄にいるようだ。
しかし、それも間も無く終わるだろう。
俺は明日、前線に送られる。