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これだから現実は・・・  作者: スクラップポテト
異世界転移編
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第6話 異世界あるある

第6話 異世界あるある

 それからレオさんに事の発端を聞いた。正直、この世界の事をもっと聞きたいというのはあるが、今はヒロイン優先だ。


 レオさん曰く、約1週間前。丁度嫌な夢を見るようなったくらいの頃。いつも通りの日々を送っていたとある日。学校から帰ってきて今住んでいるアパートの部屋に入ると、机の上に何枚かの紙が置いてあった。

 それを見ると何やらの「請求書」だの、「契約書」、「借入書」なるものだった。よく分からず、何故だろうと思いつつも詳しく読んでみると、その保証人の欄や責任者の欄に自身の、レオさんの名前が書いてあったという。更にはしっかりと印鑑まてもが押されていたのだとか。もちろんレオさんにはそんなことをした記憶はなく、その時もよくわからずにそのままにしておき、後で大家さんにでも聞こうという感じでしていたらしい。

 しかし、よくよく考えてみると自身の印鑑などはレオさんがまだ未成年ということもあり大家さんが管理している。それに、書かれていた名前やら文字の書き方は大家さんのものと酷似していた。このアパートに越してきて、サインするときに見たらしい。

 レオさんはそこで大家さんが犯人だと思った。大家さんは、普段はあまり話さない歳もそこそこのおばさんらしい。それでもまさかとは思ったが、そうとしか思えなかった。すぐに大家さんに、もしくは警察に相談することも考えたが、動揺している内に部屋の扉が勢いよく叩かれた。そして大きな男性達の声が飛び交う。レオさんは全部をしっかりと説明しようとも考えたが、怖くなってしまった。当然だ。

 そして周りにある必要最低限のものを持ってベランダを通り、アパートの裏庭から逃げてきたらしい。一階というのが功を奏した。

 それから数日は日に日に不安が増す中、ホテルやネットカフェに泊まりつつ過ごした。その間何度かアパートの様子も遠くから見たが、男達は定期的に来ていたらしい。俺は「警察に行った方がよかったのでは?」と聞くと、「ん~っと・・・」とわかりやすく何か言いにくそうにしていたので、それ以上の詮索はしなかった。流石に命の重さと天秤に掛けても揺らがないことは聞けない。

 レオさんは当然今通っている学校を休んでおり、友達も巻き込みたくないということで連絡も出来ていないという。男達には何度か見つかり、追いかけられることも数回あったらしい。

 そんな日々を、俺には想像も出来ない。レオさんの精神はその時点で既にボロボロだったらしい。それこそ「死にたい」と思うほどに。そりゃあそうだろう。それでもよくもった方だと思う。

 いつもできる限り人気のない道を歩くようになったのもこれらが原因なのだろう。

 そんなこんなで何となくではあるが、事情を聞き終えた。ちなみに途中からレオさんに当たり前のように友達がいることに少しダメージを喰らいつつ、話を聞いていた。

 全体的な感想として、俺としては難しいことはよくわからない。とりあえずその大家が黒幕とみて間違いないとは思うが。アパートの家賃月約1万円と、ずば抜けて安いことも随分と怪しい。

 

「現実・・・辛いっすね・・・」


「ははは・・・辛いね」


 俺の妄想力をもってしても想像だに出来ないことに、他人事になってしまう。


「でもまぁ、とりあえずは逃げるしかなですね・・・」


「そうだね~」


 レオさんは仕方がなさそうに頷く。

 あいつらには正面からやり合っても勝てない。だから今は逃げるしかない。それでも一生は逃げ切れない。わかってる。


「はぁ・・・魔法・・・」


(この世界に魔法でもあればな・・・)


「ん?」


(え、やべ。聞こえてた!? 恥ずっ!)


 思っていることがつい音になってしまったようだ。


「なんでもないです・・・」


 少し頬を掻きつつ、これからのことを考える。


(ああ~なんかいい方法ないかな~)


 沈黙は続く。


(ってこれさっきまでと一緒の展開じゃん・・・)


 俺は学習した。


(一旦難しいことは考えないでおくか)


 とはいっても俺に何か新しい話題を振る技術なんてものもない。今度はそんな考えで熟考してしまう。

 こういうとき、ヒロインとの会話を進めてくれる親友的ポジションの人間が欲しい。


 ぐ~ぎゅるるるる~


「っ!」


 久しぶりに腹の虫が鳴く。


(やべ・・・)


 そういえば転移前の朝に食パン一枚食べてから今まで何も食べていなかった。いくらもやしだからといって、栄養を取らなければ枯れてしまう。

 俺は一気に恥ずかしくなりつつ、恐る恐るレオさんの方を見る。


(笑われてないかな・・・)


 するとそこには予想とは真反対、何故かレオさんは頬を赤らめ下を向いている。


「?」


(え? なになに?)


 と、そこでレオさんもゆっくりこちらに視線を上げて目が合う。


「ご、ごめん・・・お腹なっちゃった・・・かも」


「え?」


 少し考えてから理解する。


「あ~あ・・・」


(なるほどそういうことか・・・)


「それじゃあとりあえず遅めの昼食でも食べに行きましょうか」


 どうやらレオさんもお腹が空いていたらしい。


「う・・・うん・・・」


 時計を見ると、もう夕方の四時になろうとしていた。少し恥ずかしさはあったものの、この後の予定が決まったのは好都合だ。

 そこから少し話し合い、服もバレているだろうから今のうちに新しいものに着替えようということになった。

 お互いの服を交換会。・・・というのは俺の妄想に終わってしまったのだが。


「あいつらっていちいち服覚えてるんだよ」


「え、マジですか・・・」


「そーなんだよ・・・会うたんびに服変えなきゃいけないから大変なんだよね~」


「へ~そりゃあやばいですね・・・」


「まぁ正直上だけで十分だと思うけど、念には念を入れたいし・・・」


(なら丁度良かった。服のラベルで身元ばれても嫌だしこの際変えよう。・・・あと出来れば男の玉を蹴ったこの靴も早く脱ぎ捨てたい・・・)


 そんなこんなで最終的に近くにあるショッピングモールにて食事を取り、そこで服を新調することに決めた。

 そして、目的地へ向かう最中。俺は一人思ってしまった。


(あれ・・・今考えればあの腹の虫って確実に俺のだったよな・・・レオさんの方からは聞こえなかったし・・・100%ないけど庇ってくれたとか? ・・・いや、それにしては向こうも恥ずかしそうだったし・・・あれ? もしかしてレオさん自分のだって勘違いしてる?? 俺もしかして悪いことしちゃった・・・?)


 レオさんの顔をチラッと見てみる。するとその横顔はまだ少し熱を持っているようだった。


(あ・・・俺やらかした・・・かも・・・)


 その後。急ブレーキでラッキースケベな展開もなく、目的地である大型ショッピングモールに到着する。


(で、でけぇ・・・)


 本当に異世界なのだろうか。言っちゃうともうAE○Nだ。ただ、周りにいる人達の髪色が少し明るいところや、何だそれ髪型の存在、そして平均的に顔面偏差値が高いところを見てやはりここは異世界だと実感する。


(まぁ俺が知らんだけで東京の都心とかはこうなのかもしらんけど・・・)


 車を降り、もう一度車道を見てみる。ここに来るまでにも思っていたが、やはりバイクは走っていない。このままだと盗んだもので走り出せないし、そもそも作り出さねば盗むことすら出来ない。正直この世界のヤンキー達がどうしているのかは見てみたいが、怖いので止めておく。

 少し見渡す。歩道にはちらほら自転車の姿は見える。やはり変な世界だ。


(まぁこの車がありゃあバイクはいらないか・・・でもアニメ・漫画の幅が狭まるなぁ・・・)


 俺はバイク自体に興味はないが、バイクに乗っている女子高生は好きだ。


(って何考えてんだ俺・・・ああ、これも全部現実(リアル)のせいだ・・・)


 中途半端に発展した世界。転移して数時間が経つが、全然慣れない。

 なんてことを考えつつ、レオさんの後ろをついていきショッピングモール内に入る。


「おぉ・・・」


 中も地球にあるものとほぼ同じ。感覚的には知らないAE○Nに来た感じ。人間もたくさんいる。人間以外はいない。


「ご飯どこで食べよっか?」


「ん~そうですね~何でも――」


(おっと。コレはダメなやつだ)


「レ、レオさんは食べたいものありますか?」


「んん~そうだね~・・・食べたいものは特にないけど・・・言うならできるだけ安いものかな?」


「で、ですよね~あー・・・だったらサイゼ――」


(おおっと。これもダメなやつ)


「フ、フードコートにしません?」


(ってこれもいけるか??)


「うーん。・・・そうだね。そうしよっか」


(いけたーーー)


 ほっとしつつもレオさんに付いていきエスカレーターを上がる。中の構造までもが地球とほぼ同じ。ちなみにエスカレーターを止まって乗る人は右に寄り、歩く人は左を歩いている。


(これどっちなんだっけ・・・)


 知識も何もない俺はすぐに考えるのを止めた。

 そしていよいよフードコートに着く。休日の夕方ということもあり、そこは学生や親子連れの家族であふれかえっていた。


「座れる席あるかなー?」


「あ、あそこ」


 人混みの中に一つ開いている席を見つける。何故かこういうのは得意だったりする。

 そのままそこに座り、周りのお店を見てみる。


「何にしよっかな~」


 レオさんも絶賛見渡し中。


(って普通に見てるけどやっぱよくある見せしかねーわ)


 お店の名前自体は違うものの、フードコートによくあるたこ焼き屋や牛丼屋、カレー屋にラーメン屋、ステーキ、ハンバーグ、オムライス、パスタ、アイス、ドーナツ・・・etc.までもが存在している。ちなみに全部日本語。

 何度目か、全く異世界感がない。


(ああ、俺も異世界で久しぶりに醤油に出会う主人公の気持ちを味わいたかったな・・・)


 異世界の醍醐味は地球の、日本食の味が恋しくなって自ら開発するか似たもので代用、または日本の江戸的な街に似ている場所を見つけるなどがある。

 しかし、俺はもう見つけてしまっている。全ての食の収束地、「フードコート」。


(はは・・・もうめんどくせぇや・・・)


 もうこれ以上は考えずに、素直に食べたいものを選ぶ。


「俺決まりました」


「僕も決まったよ。どっちからいく?」


「あ、じゃあ俺から行きます」


 そういって俺は席を立ち、真っ直ぐラーメン屋に向かおうとする。


(最近ラーメン食ってなかったしな~・・・カップ麺は食べたけど)


 突然だが、俺は体質的に太らない。故に好きなときに好きなものをカロリーを気にせず食べられる。それが健康的であるかは一旦捨てておいて、こういうときに変なことを気にしなくてもいいというのは大きな利点である。まぁ実際はもっと食べて大きくなりたいのだが。

 ・・・訂正しよう。俺はいくら食べても太らない。それに加え、いくら食べても背が伸びない。

 なんて自分自身に文句を垂れつつラーメン屋の近くまで来る。そして値段を確認しようと看板を見たところで大事なことを思い出す。


(あれ? ・・・俺金なくね???)


 無一文。現状、俺のポケットにはスマホも財布もビスケットもない。

 俺がまず異世界に来て心配すべきはそこであった。今まで俺の妄想の中ではお金はさほど重要ではなかった。何故か。それは簡単。普通異世界には魔物がいる。そしてそれを討伐し報酬を得る冒険者がいる。異世界転移の始まりは、始めに近くの街のギルドに向かい冒険者になること。そして転移の中で授かったチート能力を使いクエストをこなすことで魔物を倒しまくり、ランクを上げまくる。そして気がつけばギルドから金を巻き上げているというのが王道なのだ。

 でもここには魔物もいなくて、冒険者なんてのもなくて、資金源のギルドもない。故にしっかり社会で労働をして、その報酬としてお金を手に入れる。本当にクソみたいな世界。

 俺はとぼとぼ元の席に帰る。


「どうしたのリン?」


「レ、レオさん・・・」


 みっともない。情けない。男として恥ずかしい。それでも本能には逆らえない。


「お金・・・貸してくれませんか・・・」


(やばい。泣きそう・・・)


「え・・・ああ、いいよ! ごめんね気づかなくて!」


(ああ・・・女神よ・・・この無礼を許し奉り申し給え・・・)


「あ、でも現金ないから僕が行ってくるよ。何頼む?」


「あ、ええっと・・・あのラーメン屋の醤油ラーメン並で」


「わかった。行ってくるね~」


「あ、ありがとうございます!」


 レオさんは俺の言葉に手を振って、ラーメン屋に歩いて行く。


(って、え? 今現金ないって・・・最近流行のスマホで払うやつ・・・?)


 気になったので少しレオさんを観察してみる。


(可愛いなぁ・・・)


 少し列が出来ていたので並んでいる。


(やっぱ一際目を引くよな・・・)


 悪い奴らに狙われないか心配になり、一応周りをチェックしつつ観察を続ける。


(あ~マジ可愛い・・・ちょこんって・・・あ、看板見ながらラーメン並って確認してる・・・可愛ええ・・・)


 可愛Eを越えた先は一周回って可愛Aなのかもしれない。なんてことを考えていると、レオさんの番が回ってくる。


(注文してる姿も最かわだぁ~)


 レオさんは注文を終えると、いよいよ支払いのターンになる。すると、ポケットから財布を取り出した。


(あれ・・・スマホ払いじゃないの?)


 そしてその財布から何やら一つのカードを取り出した。そしてそのままレジの横にある機械に翳す。


(え・・・あれ・・・)


 それ即ち。


(カードじゃね??)

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