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燃え上がる炎。炎上


 お城の方からユラユラと何者かが歩いてくる姿を見つけ、そっと岩陰に隠れ気付かれないように様子を見る。

 陽炎でまだよく見えないのだが、兵士や戦士などではなさそうだ。それどろか、歩き難そうな白いドレスとハイヒールって……。


「ひょっとして、よく見ると女神じゃないか!」

「ま、魔王様! それとデュラハン」

 私と魔王様に気が付くと、女神は走って近付いてくるのだが……背中に白い羽が生えていないのに別の恐怖が芽生える。


「無事でなによりだったぞよ」

 ――違うだろう。ここであったが百年目~と怒り心頭するシーンだろう。

「魔王様あ」

 魔王様に駆け寄って抱きつく。

「馴れ馴れしいぞ。ベタベタくっつくな!」

 べたつくな! 正真正銘、お前は反逆者なのだぞ。

「魔王様から離れるのだ。そして、無限の魔力を今すぐに魔王様にお返ししろ!」


 女神は悲しそうな瞳でそっと告げた。


「それは……出来ないわ」

 ほらきた。そう言うと思った。権力や無限の魔力や田舎の土地とかは、一度手に入れれば手放したくない物なのだ。たとえ女神といえども例外ではない――。

「私は冗談で言っているのではない」

 白金の剣を抜くぞ。久しぶりに抜くぞ。――ミツバチの巣を倒してから久々に抜くぞ。

「先に言っておくが、私に魔法は一切効かぬ。無限の魔力があったとしても私の前でその力は無となるのだ」

 まあ、嘘だけどな。瞬間移動(テレポーテーション)とかで逃げられたら追い掛けられないもんね。テヘペロ。

「だってえ、もう、わたしのところに無いんだもん」

 ――!

「「なんだと!」」

 無いんだもんだと!


 ――人間の城下町で、奪われてしまったの――。


「奪われただと! 人間ごときにか」

 小さな顎がこくりと頷く。

 直射日光で温められた小さな岩に座って話を聞くことにした。


「無限の魔力を奪うほどの魔術師や実力者など、いたでしょうか」

 平和ボケした国王やチャラい勇者一行しかいなかい筈だぞ。いったいどのような知略を使ったのだ。

「じつは……」

 静かに女神は目を閉じて語りだした――。


「連日、ホストクラブに通っていたの」

 ――!

「ちょっと待て、話しが急に恐ろしくなったぞ」

 冷や汗が流れる。クラっとするのを必死にこらえる。目を閉じて語るような話じゃなさそうだぞ。しっかり目を見て話せと言いたい。首から上は無いのだが。

「それで昨日、酔っ払っていたら若い男前が寄って来てさあ……。わたしのこと、『可愛いね、綺麗だね』って言ってくれたのよ」


 頬が少し赤くなり、まるで乙女のような顔をしよる。手でもじもじ白いスカートをクシュクシュにする仕草は……なんか、逆撫でされているようで腹立たしい。白金の剣に思わず手をかけてしまう。


「でさあ、気が着いたら無限の魔力を奪われちゃった」

 ペロッと舌を出す女神に、罪の意識は皆無なのだろう。

「……」

「あ、でも安心して、他にはなにも奪われていないから」

 よくこの状況でニッコリ微笑んで見せられるものだ。さすがは元女神とでも言うべきか……。


 この数ヵ月、私と魔王様が必死(?)にお城を目指して冒険を続けている間、ホストクラブで豪遊し、挙句の果てには酔っ払って無限の魔力を人間なんぞに奪われる始末……。


 ワナワナって、こういうときに芽生える感情なのだと改めて知らされたよ……。


「叩き切ってもよろしいでしょうか。魔王様」

 この場で。

「キャー、デュラハン怖―い。顔が無いから怒っていても分かんなーい」

「分かんなーい、じゃない!」

 剣を抜こうとすると、魔王様が静かにおっしゃった。

「待てデュラハン。もうよい。過ぎたことだ」

 グヌヌヌヌ。過ぎたことだ。もうよい。待てデュラハンですと――。

「それじゃ魔王様と同じぢゃないか~! と声を大にして言ってやりたい! 大きな声でアホンダラ! と罵ってやりたい!」

 二人共アホンダラの極み!

「言ってるし」

「いやーん、デュラハンが怒ったあ~」


 無限の魔力はペットボトルの蓋かと問いただしたい! いや、ペットボトルの蓋でさえ、そうポンポン無くしたり落としたり誰かに渡したりするものではない。蓋ができなくなるから~!

 無限の魔力なんだぞ――もっと自覚しようよ! 使い方を一歩間違えれば数え切れないほどの多くの犠牲者が出るのだぞ――!

 隕石を落としたり、お城を空に浮かべたり、全世界の生き物をお腹一杯にしてみせたり……。


「はあ、はあ、はあ、はあ」

 怒りで息が切れる……。頭に血管があったらブチ切れる心配をしないといけないのだろう。首から上が無いことに今日は感謝したい。

「案ずるなデュラハン。無限の魔力があっても、覚えて使える魔法がショボければ、たいして恐ろしくはない」

「そうそう、わたしや魔王様みたいに禁呪文とかはポンポン使えないわ」

「……え」

 こ、こいつら、他人事? なんか二人が肩を並べて座っているのも、ちょっとイチャイチャしているみたいで腹が立つのですけど。


 ハッ! ひょっとして――ジェラシー? 私が魔王様に対してジェラシーを燃やしているのか? いやーん。


「それでも火種は起こります。無限の魔力を人間共が奪い合ったりするのは火を見るよりも明らかです」

 これまでにない大きな争いが起こるでしょう。誰しもが無限の魔力を手に入れて、……楽して長生きしたい筈だ。

「魔王様と女神カッコハテナのせいですよ」

 平和がどうこうといっつもいっつも偉そうなこと言っているくせに。戦争の火種を起こしてどうするおつもりですか。

「カッコハテナはやめて。魔力は無くてもわたしは女神なのです」

 両の手を軽く広げて寛大な姿をしてみせる。どうでもいいが、ウエディングドレスをいつまで着続けるのか問いただしたい。逃げて来たせいか、スカートの裾は破けているし、泥だらけで汚い。

 純白とは言い難い。外見も内面も。

「どこが女神だ。元々は魔王城のぼったくりメイド喫茶のニセメイドだったくせに……。」

 魔力のない女神は、ただの人だ。「飛べない豚は、ただの豚だ」と同じだ。

「ひどおーい。わたしは豚じゃないわ」

「酷くない。豚に謝れ。勝手に心の声を読むな」

 そのスキルは健在なのかとガッカリするぞ。むしろそのスキルごと奪われてしまえばよかったのに。

「まあまあ、これで我らの目的は決まったぞよ。人間に奪われた無限の魔力を取り返すことぞよ」

「そうね。魔王様、力を合わせて頑張りましょう」

 二人で手を取り合うな。

「いやいや、頑張るもなにも、二人共なんの力も無いのでしょ」


 魔力ゼロの魔王と女神って……剣や斧を振ることもできない。強いて言えば、デカい口を叩くくらいのものだ。言わないけど。言い返されるから。


「さらには他の魔族に頼ることもできません……」

 魔王様の魔力が無くなったと皆にバレてしまう。

「いったい、どうするのですか」

 万事休すです。

「デュラハン。あなたが力を発揮する時がきたのです」

 肩をポンっと叩くな、馴れ馴れしい! っていうか、都合よすぎるぞ女神!

「私は魔王様の御命令しか聞きません。さらには無限の魔力を奪われたドジな魔王様だから……どうしようかなあ」

 別に命令を聞く必要って、あるのかなあ……。


「デュラハンよ、卿の忠誠心は、強き者、もしくは金のある者に対してのものだったのか?」

「――!」


 私の忠誠心だと……。


読んでいただきありがとうございます!


ブクマ、お星様ポチっと、いいね、などよろしくお願いしま~す!

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