後日譚 魔華
瓦礫の国に、ただ一人。
わずかな月明かりだけが足元を照らす夜に、少女が舞う。
宙を優雅に踊る少女に合わせ、薄暗い文明の墓が元の姿を取り戻していく。
後に残ったのは、光り輝く過去の街の姿だった。
「蓮弥君、あとは何をすればいいの? 民意を統一すればいい?」
「……柊さん、一応聞くけど民意を統一ってどうやって?」
……?
「勿論、全員の思考を矯正するよ?」
「……ううん、吸血鬼達が統制はしてくれてるから、大丈夫」
白くなった蓮弥君は、笑顔で私の申し出を断る。
いらないならいい。
「じゃあ、何すればいい?」
「……なら、向こうの柊さんに協力をお願いしてきてくれるかな」
「分かった」
世界に穴を開けて、無理矢理壁を突き破る。
全身に焼けるような痛み。
「私、いる?」
「……急に、どうしたの?」
家の中で舞とお兄ちゃんとトランプをしている私は、私の後ろを見て顔を顰める。
何かまずいことをしただろうか。
「蓮弥君から協力をお願いしてきてって言われたから手伝って」
「ねぇ、私……。はぁ、まぁいいや。今、遊んでるからちょっと待っててくれる?」
「分かった」
そのまま部屋の壁によって、私を観察する。
家族と遊んでいる私は笑顔で、とても集中しているように見えた。
……こっちのお兄ちゃんと舞は、笑顔をよく見せる。
私のお兄ちゃんと舞はほとんど笑顔にならないのに。
なんでだろう。
私が笑顔じゃないから?
本当に少し待っただけで、トランプは終わった。
こっちの私は二人に軽く声をかけて、私に近付いて来る。
「お待たせ。何を手伝えばいいの?」
「分からない」
私が事実を伝えると、こっちの私の表情が引き攣る。
「……な、ならどうすればいいの?」
「ついてきて」
とりあえず、蓮弥君に聞けばいいと思うから。
私を連れて、世界の壁を通る。
抵抗が大きくなったけど、このくらいなら問題ない。
「連れてきた」
「……お疲れ様、ありがとう。ちょっと話があるから、少し待っててくれる?」
「分かった」
数歩下がって、二人の話が終わるのを待つ。
途中、チラチラとこちらを見てきたけど、なんなんだろう。
「ねぇ、私。ちょっと遊ばない?」
「え?」
私たちに、そんな余裕はないはず。
「でも」
「いいよ、行ってきて」
私が断ろうとすると、蓮弥君から許可が出る。
それなら、いいか。
「分かった」
「……うん。何する?」
向こうの私は、少し顔を背けながら聞いてくる。
「なんでもいい」
遊びたいわけでもないから。
「なら、ゲームでもしよっか」
そう言って、対戦ゲームを持ってくる。
いわゆる格ゲーってやつだけど、これをやる意味はなんなんだろう。
キャラを操作しながら、そんなことを考える。
「どう?」
画面中央に大きくフィニッシュの表示が出て、私が質問を投げかけてくる。
「どうって、何が?」
「……そっか」
……?
私は目を伏せたかと思えば、直ぐに顔を上げた。
「よし、どんどん行こう」
そのまま何十種類の対戦ゲームをやったけど、結局一勝も出来なかった。
「私の勝ちだね!」
「うん」
「じゃあ、次は協力ゲームやる?」
「分かった」
提案に乗って、今度はPvEのゲームをプレイする。
こっちの方が、私と一緒に戦えてる気がして好きかもしれない。
「あ! ごめん間違えた!」
「うん」
ゲームオーバーの文字を眺めながら、もう一度を選択する。
「それそっちじゃない!」
「……ごめん」
「いや、全然いいよ。さっき私も間違えたし」
向こうの私は気にした様子も全くなく、私に笑いかけてくる。
「それより、あとちょっとだったし頑張ろ!」
「うん」
慎重に、向こうの私を邪魔しないように操作する。
向こうの私なら……多分こっち。
ここはこう。
向こうの私の動きを予想して、その動きに合わせる。
「あ」
「まだ立て直せるよ!」
ミスしてしまったけど、そこを助けてもらう。
これなら、行けそう。
「やったね!」
「うん!」
画面にクリアの表示が出た瞬間、喜びからか、反射的に向こうの私に向き合う。
目があって、笑いが漏れた。
「やっと笑ってくれた」
「え?」
「そっちの蓮弥君にお願いされたんだよね、私をどうにかして欲しいって」
……そっか。
「ねぇ、私。……楽しかった?」
楽し、い?
楽しい……。
「……うん。楽し……かった」
「じゃあ、またやろっ! 色々準備しておくからさ!」
そう言って、ウインクしてくる。
「……いいの?」
「私も楽しかったし、またやりたいよ?」
「私も……やりたい」
そう言うと、向こうの私は私の手を握る。
「決まりね!」
「……うんっ!」
価値観が壊れてるので主人公が本来取らないような行動も平気で取ります。善意で。
ゲームの腕前に関しては本来変わりませんが、慣れと思考の仕方で主人公側に軍配が上がっています。




