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後日譚 風雪兄妹

そろそろ疲れが溜まってきております。毎日更新終わるかもしれません。



 「私、いる意味あるかなぁ?」


 いや、まぁ。

 なくはないけどさ。


 「来てくれてありがとう」


 今、私は警察署にいる。

 目的は、蓮弥君鈴ちゃんの父親との面会。

 接見ってやつだね。


 私がついてきた理由は二つ。

 一つが、鈴ちゃんに頼まれたから。

 まぁ実際私がいれば滅多なことは起こらないし、何かあったら嫌だから呼んでくれた方がいいんだけどね。

 もう一つが、情状酌量の余地があるか、反省しているかを確かめるため。

 蓮弥君の〈同期〉でも調べること自体はできるけど、下手すればショック死するから。

 情報量が多すぎるせいで、大抵の人には使えない。


 「せんぱい、ありがとうございます!」


 鈴ちゃんの頭を軽く撫でて、時間を確認する。

 今は平日の午後一時過ぎ。

 そろそろ大丈夫かな。


 一応、私たちならある程度の融通はきく……と言うかさせられるけど、なるべくルールに則っていかないとね。


 「お待たせしました。こちらです」


 婦警さんの誘導に従って、通路を歩く。

 案内されたのは小さい個室で、面会というよりは取調べをするような部屋。

 男性警官が二人、女性警官が3人。

 多分ボディーガードに近い感じ。


 椅子に座っている蓮弥君たちの父親は明らかに不服そうな表情で、反省の色も全く見受けられない。


 「久しぶり、父さん」

 「蓮弥! さっさと俺は何もやっていないと証言を取り下げろ! どうせお前が何かやったんだろう!?」


 開口一番に怒鳴り出した父親を見て、鈴ちゃんは悲しそうな表情で顔を伏せる。

 蓮弥君は……全く動じてないね。

 予想出来てたんだろうけど、これは……。


 そもそもの話、蓮弥君は父親を捕まえろとも父親に暴力を振るわれたとも言ってない。

 捕まったのは配信の内容のせいで、自分の行いのせいだよ。


 流石に目に余ったのか、警官たちが前に出る。


 「蓮弥さんは何もしていませんし、捕まっているのはあなた自身の行動の結果、つまりは自業自得です。妄言も甚だしいですよ」


 婦警さんの言葉も全く聞く様子がなく、いまだに自分が上だと疑っていない。


 「……そもそも僕は何もやってないので取り下げるも何もありませんね。どちらにせよ、庇うつもりはありませんが。……と言うか、人のせいにしないでください」

 「蓮弥!」

 「煩いです。そうやって怒鳴れば言うことを聞くとでも? 父さんが人の話を聞かないのに?」


 冷え冷えとした声で返す蓮弥君と、自分が悪いと一ミリも思っていない父親。

 婦警さんや周りの人たちが割り入ろうとするのを、蓮弥君が手で制する。


 「お前! 他人に迷惑をかけるなとあれほど!」

 「そもそも迷惑を掛けているのは父さんの方ですよね。僕にも迷惑を掛けないでください。僕の成果をとっていくのをやめてください。僕の予定を父さんの都合で埋めるのをやめてください。僕を自分のイメージアップに使おうとするのをやめてください」

 「子供は親のものだろう!? 俺が利用して何が悪い!」


 段々と、周囲の視線も冷たくなっていく。

 わかっていても、かなり不快だ。


 「そもそも! ここまで育ててやった恩を忘れたのか!」

 「確かに、お金は用意してもらったので……お金は口座に振り込んでおきました。場所に関しては家事をやっていた分で返せていると思うのですが」


 ちなみに、蓮弥君は家事に関してお金を一円ももらっていない。

 完全な無償労働。

 お金は生活費やら医療費やら学費やらだけど、こっちは全額口座に振り込まれてる。

 現金じゃない理由は、嫌がらせとそもそも二万円くらいしか持ってきちゃいけないから。


 「……蓮弥君、もういいよ」

 「それに! 暴力を振るったからなんだと言うんだ! 俺が所有物を傷付けたからなんだと言うんだ! 関係ないやつらがグダグダ言いやがって! どうせそんな辛くなかっただろうが!」

 「……なら、試してみる?」


 蓮弥君が、笑顔で提案する。

 止める気はない。

 ……流石に、死なないようにした方がいいかな。


 「ふん! どうやって試すと言うんだ!」


 人の知名度を利用しようとしてるくせに、細かいところは何も知らないんだね。


 「〈同期〉」

 「あ? あ、が、あぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」


 蓮弥君が呟いた瞬間、父親は気が抜けた声を出し、絶叫する。

 頭を掻き毟ったり、自分の体を抱きしめたり、守るように縮こまったり。

 一頻り暴れると、糸が切れたように気絶した。


 「一応蓮弥君と鈴ちゃんの父親だから死なないように調整したけど」

 「ありがとう」

 「申し訳ございません、退室をお願いします」


 流石に、面会相手が気絶したら続けるのは無理だよね。

 素直に従って、部屋を出る。


 「……あの」


 警察署を出る前に、婦警さんに呼び止められる。


 「どうしましたか?」

 「先程の同期というの……私にもしてみてくれませんか?」


 多分、何があったのかを確かめるもののためなんだとは思うけど。

 あれを見て、自分にもやれっていうのはかなり勇気あるなぁと思う。


 「……私も頼む」

 「……柊さん、いい?」

 「おっけー」


 署長の男性も頼んできたので、同意する。

 制御はこの場だと私しか出来ないし、断る理由もないかな。


 ソファに座って、倒れても問題ないように背もたれに背中を預けてもらう。


 「〈同期〉」


 細かい情報を省いて、魂にシールドをつけて防御。

 それでもショックが大きいところはすぐに流れるようにして、負担がかからないようにする。


 「うっ……」

 「ぐ……」


 署長さんは頭を押さえたけど、婦警さんの方は目を閉じたくらい。

 二人とも少し呻き声が漏れたくらいで、問題はなさそうかな。


 数分間じっと耐えていたけど、耐え切ったのか目を開ける。

 その目には、同情の色がありありと浮かんでいた。


 「……」

 「君は……いや」


 言葉を止め、目を逸らす。


 「何が言いたいのかなんとなくわかりますが、今僕は結構恵まれてると思うので気にしないでください」

 「お兄ちゃんは、私が守ります!」


 拳を握りしめてアピールする鈴ちゃんに、場が和む。


 「じゃあその鈴ちゃんを私が守るね?」

 「それじゃあ私のいる意味がないですよせんぱい!」


 わざと明るい調子で話す鈴ちゃんの頭を、蓮弥君が優しく撫でる。

 ……まぁ、蓮弥君みたいな人は減らしたいよね。

 私も、もっと頑張らないとな……。




この後、風雪兄妹の父親は人が変わったように気弱に、何かに怯えるようになったとか……。


同期は相手にもよりますが、今の状態を共有するために相手の人生を体験しないといけないのでかなり危険な能力です。心が弱いと意識が飲まれたりします。

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