1 落下
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私は犯罪が嫌いだ。
だって、私から大切なものを奪っていくから。
私は多勢で個人を攻撃する行為が嫌いだ。
だって、歯止めが効かないから。
自分が悪いと思う行為であっても、自分で気が付けないから。
と言っても、犯罪や弱い者虐めが好きな人なんてほとんどいないと思う。
身近でなくとも、何となく忌避感や嫌悪感を持っている人が多いはず。
私は———が嫌いだ。
だって、——が酷く——————に見えるから。
私の名前は柊 魔華。
身長162cm、体重は……内緒。
極々普通の小学校を極々普通に卒業し、中高一貫校に入学。
数人のよく遊ぶ友人と、そこそこいい先生に恵まれ、つい一週間前に高校2年生に上がったばかりの花の女子高生。
家族間の仲もいい。
普通な人生で、幸せな人生だと思う。
一つ神様に文句があるとすれば、この……俗に言う巻き込まれ体質をどうにかして欲しいくらい。
いつもありがとうございます神様っ!
そんな私だが、現状悩んでいることがある。
それは、中学2年からずっとクラスが一緒の男の子、風雪 蓮弥君がいじめに遭っていること。
蓮弥君は特段成績がいいとか、運動神経がいいとか特出した才能があるわけではないけど、私としては好印象を持っている。
自分の価値観を持って行動しているし、意見もしっかりと出していて、イベント事で細かい所をやってくれている印象だ。
あと、怒ったり泣いたりしているところを見た事がない。
基本的に真顔だったり笑顔だったり。
主に目立たない事をしている割に、彼はかなり有名だ。
その理由は、彼の妹にある。
今や校内一の有名人だと言っても過言ではないだろう人物、風雪 鈴音の兄だから。
容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、コミュ強の文武両道を地で行く、凄い人。
教師陣からの信用も厚いし、周りの生徒からの人気も高い。
光のような妹と、目立たない、影のような兄。
そんな兄妹だから、妹に不満を持っていてぶつけられない人なんかは、兄の方にやつ当たる。
彼女がこの学校に入学したその年から、彼に強く当たる人は増えた。
それでも、彼は不満を漏らすこともなく、全てを受け入れているように見えた。
一応蓮弥君は知らない仲ではないし、助けに入るべきだろうか……そんなことを悩んで、既に一週間経ってしまっている。
そう、クラス替えの初日からいじめが始まっているのだ。
元々別クラスだった素行の悪めな勢力がほとんど固まっているようで、そこに意見した蓮弥君がいじめの標的にされた。
先生は対応しようとしてはいるものの、慣れているのか大人がいない所でやるのが上手い。
そして、本人がほとんど抵抗しないのが追求が難しいところ。
今は昼食後、昼休みだが、今日もまた始まった。
蓮弥君をクラスメイトの男子数人が囲んでいる。
蓮弥君はそんな状況でも優しげな表情を浮かべて、囲んでいる彼らを見ていた。
その対応が、彼らのプライドを逆撫でしてしまっているような気がするけれど。
そんな感想を抱きながら、今日もまた見ているだけで時間が過ぎてしまう。
殴る蹴るの暴力は既に当たり前のようになっていた。
放課後、既に数人しか残っていない教室を静かに出て行く彼の姿を見て、なんとなく後ろを追う。
それでも、話しかける勇気もなく。
校舎を出て、校門付近まで着いて行き——
「あれ、柊さん。どうかした?」
——ふと振り向いた彼に、話しかけられた。
優しげな声色で、私に笑いかける。
「あ、いや、えっと……大丈夫、なの? いや、あの……」
急にこんな事を言われて、彼は困ってしまうだろう。
話しかけられるとは思っていなかったから、頭がうまく回らない。
そもそも私はどちらかといえばコミュニケーションを苦手としている方の人間なわけで。
そんな私を見た彼は、困ったように眉を寄せて口を開く。
「えっと……昼休みの話かな。僕は大丈夫だよ、こう言うのには慣れてるしね」
「あ、兄貴! お待たせ……って、彼女さん?」
そこで、声がかかった。
蓮弥君を兄貴と呼んでいるってことは、鈴音さんだと思う。
身長は150後半くらい。ロングストレートの髪をたなびかせながら駆け寄って来た彼女は、揶揄うような笑みを浮かべている。
蓮弥君は160後半だから、丁度10cm差くらいかな。
「あはは、そんなわけないじゃん。彼女は柊さん。僕なんかを心配してくれた優しい人だよ。今日もお疲れ様」
彼はそう言いつつ、駆け寄ってきた彼女の頭を優しく撫でている。
どうやら、兄妹の仲はいいみたい。
ここまで周りからの評価が違うと多少の亀裂ができるものだと思っていたけど、そんな風には見えない。
「……仲、いいんだね」
「まぁ、そうだね。こんな僕でもスズが慕ってくれてるから」
そんな話をしていると。
「っ! スズ、柊さん。校舎から離れて!」
地面が強く揺れるのと同時に、蓮弥君が叫ぶ。
「きゃっ!」
酷い揺れで、動くのは疎か立っているのすら厳しい。
校舎からは居残りか何かで帰っていなかったのだろう生徒の悲鳴や、物が落ちる音が聞こえてきた。
転ぶ前に地面に座り、頭を打たないように気を付ける。
その後、数十秒で揺れは収まり。
ほっとしたのも束の間、私たちのいる地面に、亀裂が入っていく。
「え? え?」
嫌な予感がする。
逃げなければと、立ち上がった瞬間。
地面が割れた。
私達を飲み込むように、綺麗に穴が開いた。
浮遊感と共に、体が落ちていく。
やけにゆっくりと時間が流れていき、周囲を見る余裕が生まれる。
風雪兄妹は、私と一緒に落ちていて、蓮弥君が私の腕を掴む。
落ちたのは私たちだけのようで、上から数人が見ているのが見えた。
それが、その時私が見た最後の光景。
その直後、頭を殴られたような衝撃が来て、私の意識は闇に落ちていった。
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