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#花火・睫毛・風で文を作ると好みがわかる
#花火・睫毛・風で文を作ると好みがわかる
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色とりどりの鮮やかな光を放つ画面と喧騒混じりの花火の音。
「今年は行けなかったね」
ベランダの柵に寄り掛かりながら振り向いた先には嫌そうな顔。
きっと暑さと人混みに嫌気が差した去年のことを思い出したのだろう。
カチッ
私の浴衣姿に釣られた人混み嫌いは一瞥だけくれると煙草に火を点けた。
伏せた長い睫毛が暗闇の中で照らされる。
この瞬間が好きだ。
涼風に紫煙を流す姿を暫し見つめる
「来年もあんだろ」
電子越しの音と季節を告げる鈴虫の音に紛れこませたような低くぶっきらぼうな声。
人混み嫌いなくせに。
溜息と一緒に紫煙を吐き出す彼の手から煙草を奪う。
「おい」
不機嫌を隠さない彼は、
それでも来年の約束をくれるから
感謝を込めて不満を零す唇にキスをした。