アバレンタイン
妹がデラックス豪華ハート型チョコレートを抱きしめながらボエーと泣いている。
どうやら同級生のサッカー部のイケメンにバレンタイン告白をして断られたようだ。
まあ、本気チョコレートは重かったのだろう。
妹はこの俺様とちがい、顔に華が無い。
ブスなわけではないのだが、埴輪のように簡単な顔をしている。
「お兄ちゃん酷いよ! ボエー!」
「おっと口に出していたか、すまん。だが、泣いてばかり居てもなにも解決しないぞ」
「ボエー!」
妹は簡単な顔のわりに優しくて良い奴だ。
きっと、勇気を振り絞ってチョコを渡しに行き、断られたのだろう。
そんなお前を兄ちゃんは偉いと思うぞ。
「妹よ、そのハート型チョコレートをよこせ」
「おわあ、何をするんだおにいちゃん」
ガサガサ、バッキン。
俺はハート型チョコレートに拳を叩きつけ二つに割り折った
「うおおん、お兄ちゃんがハート型チョコレートを折ったーっ!」
「妹よ! 恋とはこういう物であるっ!! 外的な要素で真っ二つになる事もあるっ!! そういう時はどうするか! そう!」
俺はブロークンハートの片方にかじりついた!
さすがデパートに店を出している名店のチョコレートだ!
うまいぞ~!!
「おわあ、お兄ちゃんが私のチョコを食いおった~~!」
「何をしている妹よ! お前も食え!」
「おわあ、あ、美味しい」
「悲しい事苦しい事があったら、食って寝て忘れろ、それが一番だ」
「食って寝てわすれる……」
「お兄ちゃん、私が間違っていたよ! 私も食って寝て忘れるよっ!!」
「うむうむ、元気を出せ妹よ、父は違うが何時でも俺は妹の味方ぞ!!」
「ありがとう! お兄ちゃん、お兄ちゃん大好きっ!!」
ほがらかに笑って、簡単な顔の妹は退席した。
元気になってなによりだ。
さて、俺は妹のチョコを断る失礼なサッカー部の奴を殴りに行こう。
そうしよう。