18 帰還して冒険者組合へ
「お早いですね。確か二日後のお帰りじゃありませんでしたか」
冒険者組合の受付で、メルダさんに不思議がられる。
時間帯から人の少ない組合内ではあるが、私と、ボルザ、エミルの三人は注目を集めていた。
いったいどこで過酷な試練に挑んできたのかと言わんばかりに、ボルザとエミルの装備はボロボロだ。
私のポーションのおかげで元気満タンで溌剌としている二人ではあるが、無残なまでの装備は目立つ。
私はと言えば、荷物持ちとして特に身を守るような装備は身につけていなかったし、魔物のいる場所へ戦いに行くような格好ではなかった。彼らとは対象的に小綺麗な格好をしている。
「みなさまは確か七人で魔石の採取に行かれたのでしたよね。他のメンバーの方はどうされたのですか。魔石は無事に採取できましたか?」
「そのことなんだけど……」
ボルザが事情を説明する。
魔石はネメシスとニシル、ベジルが持っていること。
ダンジョンの十一階層で置き去りにされたこと。カイトがおそらく殺されて崖に落とされたこと。
エミルも一緒になって、熱く語った。ネメシスとニシル、ベジルに見殺しにされそうになったのだと。
食料もない中で、魔物に襲われる恐怖と戦いながら、なんとか必死にダンジョンを抜けてここまで帰ってきたことを。
「お話はわかりました。ただ、何点か、どうしても理解できないことがございます」
「なんでしょうか」
これほど真剣に語っても信じてもらえないことがあるのかと、ボルザもエミルも不満そうな顔をしていた。
「まず、どうして三人でこれほど早く帰ってこられたのですか。食料もなしに、道もわからず、五級冒険者の二人ではとても太刀打ちできないような魔物の群れをくぐり抜けて」
「それは……」
二人は、私がほとんどの魔物を倒したことは説明していなかった。私が道を把握していたことや、ポーションのおかげで途中から食料の必要もいらなくなったことも話していない。
どうやらそのことを、メルダさんは見抜いていたようだ。
「上で話しましょうか」
メルダさんは上階へ登る階段を顎で指し示す。
何か含みをもたせるような、なんとも言えない威圧感があった。
「俺達が上へ行っていいのか?」
二階への立ち入りが許可されるのは三級以上だ。五級のボルザやエミル、そして七級の私が上がるには、組合長の許可が必要なはずだった。
「組合長から、フィルさん絡みの件については話がついております」
私の名前を出したメルダさんは、こちらに視線を向ける。私は何のことかわからず、首を傾げる。
「何かあったら私でも対応できるように権限を頂いております。組合長にとってはフィルさんが今後、問題を起こすことは想定済みでした。それでも、まあ、こんなに早く問題を起こすとは……。さすがの組合長も予期しておられなかったでしょうが」
メルダさんに促され、ボルザとエミルは階段へ足を向ける。
二人の後ろを歩きながら、メルダさんは私にだけ耳打ちする。
「トム・フィラフの大森林に四名の調査隊を送ったのですが、あまりに信じられない内容の報告でした。思わず私も現地に飛んで、自分の目で見てまいりました」
小声で話しながら、メルダさんは私の目をじっと見てくる。
「さすが、ルディアス様の妹君です。まるで災害でも起こったかのような現場でした」
にっこりと微笑む。
メルダさんは私のことを褒めようとしてくれているのだろうか。
「数百本の木がなぎ倒され、魔物たちの臓物が撒き散らされていました。あの惨状、とても七級冒険者のしたこととは思えません」
彼女の眼はきらきらと輝いており、なにか面白いことが起こるのではないかとの期待に満ちている感じがした。
私は彼女に尋ねる。
「では、すぐに六級になれるでしょうか?」
メルダさんは「ふふ」と軽く笑ってこの質問には答えてくれなかった。
まあそうだろう。そんなに甘くはないのだ。
メルダさんもきっと、初心者冒険者を褒めて伸ばすタイプだ。
それでも、まあ、六級もそう遠くなさそうだ。確実に少しずつ近づいているのだと、私の足取りは軽くなった。




