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キマイラ転生  作者: てつまめ
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参加宣言

 ルークスルドルフ王国がギリアム帝国に宣戦布告したという情報が魔導放送によってリンドブルム魔法国家中に伝ぱされたが街中にそれほどの動揺は無く、内心は計り知れないが皆一様に普段通りの行動をしていた。

それはリオンやイヴ達も同様で普段通り朝餉を済ませ、各々支度を済ませると全員冒険者ギルドへと向かう。

イヴ達が依頼を確認している間はリオン一派、リノア、ウピルは隣接する酒場に移動する。

ここでは主にオピスの食事が始まる。

リオン以外はいつもここに残していくので時間を気にする事なく、ぐでーっとしていると珍しくマリーがリオンを呼びにきた。


「リオンさん、ギルマス達が呼んでるので一緒に来てくれますか?」


 振り向いたリオンは相変わらず面倒臭そうな顔をしていて、マリーはまたどうやって説得しようかと思考加速していると、目の前であるにも関わらず彼女の与り知らぬ所でふと考え込むリオン。

模擬説得に集中してリオンの様子に気付いていないマリー。


「クハハ、いいぞ」

「そうですよね〜、でも来てくれないとまた私が……って!いいんですかッ!?」

「そう言ってんだろ。行くぞ」

「何が行くぞ、よ。毎回面倒臭がってマリーがどれだけ説得方法を考えていると思っているのよ」


 ジト目でリオンを見るマリーに予想外の所からの援護射撃にキョトンと首を傾げてしまう。

逆にリオンは当人である朝から優雅にワインを傾けるツバサを一瞥するが、どこ吹く風かスタスタとギルマスの部屋へと歩き出した。

コロコロ顔色を変えるマリーがリオンが先に行ってしまった事に再度表情を変えながら追いかけた。



「リオンさんをお連れしました」

「入れ」


 ノックをして声を掛けるとギルマスであるダバンから入室の許可が得られたのでガチャリとドアを開ける。

部屋に入ったマリーは一瞬驚くがすぐにリオンを中に入れる。

リオンは入っても特に無表情が変わる事なくソファに座る。

そして相手の言葉を待たずにリオンが口を開く。


「なんの用だ?」


 端的なその言葉にギルマスはピクリと眉を動かし、副ギルマスであるサーシャはニコニコと笑顔を崩さず紅茶を入れていて、マリーも驚いた最後の1人はリンドブルム魔法学院の学院長でもあり、副ギルドマスターの姉であり、元オリハルコン冒険者の肩書き盛り盛りのエルフ、スクルプトーリス・ルベリオスである。

そんな彼女はリオンが入室時に驚かなかった事に不満だったのか頬を膨らませていた。

以前であればマリーは強引にこの場に残って話す内容を聞きたいと思っただろうが、今はリオンが聞いた事は特に隠す事なくペラペラ話してくれるので、この場では一礼して退出しようとしていた。

しかしそれにギルマスが待ったを掛けリオンの横に座らせた。


「私がお聞きしても大丈夫な話なんですか?」

「お前、俺が何も知らねえと思ってんのか?」

「え?な、何のことでしょうか」

「バチャバチャ目ん玉動かしながら何言ってんだよ。どうせ、後でリオンから内容聞くだろうが!」

「ぐっ」

「ぐっ、じゃねえよ。ハァ、まあそこら辺の教育はサーシャに任せる。今日はリオン、お前をここに呼んだのは今朝の魔導放送の件だ!お前、今回はどう動く気だ?」


 受付嬢の統括という肩書きも持ち、受付嬢から鬼教官と陰で呼ばれているサーシャの教育が待っていると言われガックリと肩を落としたマリーと想定通りのダバンの言葉にウキウキして、返答を考えるリオン。


「もちろん参加一択だろ。逆にこんな面白え祭りに参加しねえ理由があるなら聞いてみてえくらいだな」

「お前、これは戦争だぞ?」

「だからどうした?猿同士が争う事を戦争だと言うなら毎日が戦争だろうよ、クハハハハ」


 ウキウキリオンのウキウキ度が話す度上昇し、それに比例してダバンのイライラ度も上昇するが、噴火する前にルベリオスに宥められる。


「ダバン、少しは落ち着きなさいよ〜。そんな事のために呼んだ訳じゃないでしょ〜」

「ぐっ、そうだな。それでリオンよ、基本的に冒険者は戦争に個人での参加はできんぞ?」

「クハハ!問題ねえよ」

「……………ハァ。それで、行くのはお前だけなのか?」

「ん〜そうだなぁ」


 リオンが考える素振りをして周囲の人々に視線をキョロキョロ合わせながら焦らす様に答える時間を稼ぐ。

クツクツと内心可笑しく思いながら見ているとマリーにジト目をされたので手をプラプラ振り、口を開いた。


「今回は俺だけだ、心配すんなよジジイ」

「俺はまだジジイじゃねえ!とは言え、お前のその言葉信じるぞ」

「テメェに信じられてもなぁ」

「相変わらず性格悪いなお前」

「お互い様だろ、クハハ。話がそれだけなら俺は行くぞ?お前と違って忙しいんでな」

「さっさと行け!ったく!近頃のガキは生意気だ!」


 ダバンの捨て台詞に反応する事なくマリーと共に退出しようとする際、リオンが一瞬ルベリオスに視線を送る。

マリーは直前でサーシャに捕獲され別室に連れていかれた。

階下に降りるとイヴ達はリオンが呼び出された事について連絡を受けていたのか、学院に先に行くと受付嬢から言伝を受け取ったリオンは少し考えながらツバサ達と合流する。


「おかえり〜リオン」

「おう。また今日も食ったなお前。俺のワムちゃんにご飯やったか?」

「リオンのじゃないけどね〜。リオンが拗ねると思ったからまだあげてないよ〜。はい、どうぞ」


 オピスがどこからともなくにゅるっとワームのワムちゃんを取り出した。

カチカチと牙を鳴らしながらリオンの腕に巻き付いた。


「よしよし、何食べたい?これか?だよなぁ、ほれほれ」

「カチカチカチカチカチカチ」

「そうか、美味いか!もっと食って早く大きくなるんだぞ」

「カチカチカチカチカチカチ」

「アナタ、昔から人以外には優しいわよね」

「は?人に優しくする意味なんてねえだろ?当たり前の事言うなよ」

「あら?そうかしら?それにしては最近アナタの近くにたくさんの人間……いえ、人族が多い気がするわね。優しい優しいリオンさん」


 リオンとツバサがリノアに視線を合わせると突然の事でビクリと飛び跳ねる。

ここが冒険者ギルドという事もあって、また何か無理難題をふっかけられると思ったリノアは翼で身体を隠した。


「な、なな、なにッ!?嫌!今日は新作スイーツ食べに行くんだから!鍛錬はしないよッ!?休み!休みなんだから!」

「うるせえバカ」

「いきなり酷くないッ!?」

「ほら、優しいじゃない」

「えッ!?今の会話のどこに優しさがあったのッ!?」

「カカカ、リノアはご主人様に愛されておって羨ましいの」

「嘘でしょッ!?」


 女同士で勝手に盛り上がった場でリオンは眉根を寄せ、これ以上の関わりは面倒臭いと思ったのかワムちゃんの食事の世話を甲斐甲斐しくする事にした。


この日のリノアはいつも以上にしごかれ、ボロ雑巾になった。

そして新作スイーツは大好評で数ヶ月の予約待ちとなった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[方針会議]


 リオンとマリーがギルマスの部屋から退出した後、サーシャはマリーを教育するため同じく退出。

部屋に残ったのはギルマスであるダバンとリンドブルム魔法学院の学院長であるルベリオスの2人だけだ。


「お前はどう見る。アイツの何を以って問題ないと言い切れるのか……」

「ん〜、そうだねぇ〜。素直に聞いても答えてもらえなさそうだけど〜。可能性としては2つかな。1つは冒険者としての資格を失っても構わない。もう1つは今の彼の姿での参加はしない、かな」

「前者はあり得るが、後者はどういう事だ?アイツはそんな魔法が使えるのか?」


 ダバンからの質問に少し考える仕草をするとニヤニヤと意地悪そうな顔をする。


「ふふ、リオンくんは私の学院の生徒でもあるからね〜。そんな彼の情報を勝手に出す様な事はしたくないなぁ〜」

「ぐっ、クソババアめ。詳しい内容は言わなくていい!できるかできないかだけ言え!」


 バンッと机を叩くと両手を挙げ降参モードの態度を取るとヒラヒラ手を振っている。


「おぉ〜こわ。ふふ、見た訳じゃないけど確実に姿を変えられる方法は持ってるだろうね。それに君はもう忘れちゃったのかい?」

「ん?何をだ?」

「もう〜ホントお爺ちゃんじゃ〜ん。彼は帝国では獣人の先祖返りみたいな姿だったんだよ?人族と獣人族、最低でも2種類の姿は持ってるでしょ」


 そこまで言われてようやく思い出したのかダバンは羞恥に顔を染めた。

ジト目で見てくるルベリオスにゴホンと咳払いをしたダバンが話を再開する。


「今回はリンドブルム魔法国家はこの戦争に参戦するのか?お前ならある程度読めるだろ?」


 今度は先程と打って変わって真剣な表情で様々なピースを頭の中で組み合わせて、今後の展望の可能性を導き出していく。

しばらくすると組み立て終わったのか紅茶とサーシャが買ってきた新作スイーツを堪能する。


「今回参戦する可能性は低いと思うわ〜。リオンくんが暴れたせいで帝国が凄まじい被害を被ったけれど、情報によると近衛魔装兵の実力者はまだまだいるらしいし、一般兵には殆ど被害がなかったらしいから〜、戦争に関してはそこまで問題じゃないらしいね〜」

「なるほどな。それなら王国はどうだ?」

「王国に関しては逆に帝国より貴族区画の襲撃で戦争してる場合じゃないと思うんだけどね〜。何か嫌な予感はするわね、以前の魔族関連も王国が関係してるんじゃないかって言われてるわね〜」

「確かに両国とも負傷中だからそこまで激化せず終戦するか……。だがそれだとしても魔法国家が参戦しない理由が弱過ぎじゃないか?お前、リオンに関して何か隠してるのか?」


 ダバンの言葉に驚いた顔をしたルベリオスだったが、すぐに苦笑すると紅茶を一口飲み、口を開く。


「魅力的な乙女には隠し事のひとつやふたつはあるけどね〜。今回直接的な原因は単純にリオンくんが参加するって宣言したからね〜」

「は?」

「そのアホ面は面白いけど〜、そういう反応になるわよね〜」

「アホ面は余計だ!乙女なのは意味不明だが、理由には納得もした」

「納得?」

「あぁ、多分最悪の事態を避けたんだろうなと、な」

「あらら?アナタもリオンくんの事が分かってきたのかな〜?」

「ふん、身をもってな!」


 2人は笑い合っているが内心笑えない事がトゲの様に心に突き刺さる。

ルベリオスとダバンは参戦した魔法国家の兵達が消し飛ぶ姿が何故か想像できてしまったのである。

リオンからしてみたら「失礼な!」と今回は言うであろうが普段の行いからそう思われても仕方がないと周囲からは諭されるだろう。


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