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第4幕 サンカクの上のマルってつまりはあのマーク

皆の衆ごきげんよう。

いつもの私だ、元伝説の勇者改め、ウンチ軍曹も改め、ただのウンチに成り下がった私だ。


ところで突然ではあるが諸君は冒険者における、最重要ともいえる能力をご存じだろうか?

悪に屈しない強靭な心?違う!

どんなつらい逆境にも耐え抜く忍耐力?てぃがぁう!

過酷な困難を切り抜ける明晰な頭脳?のんのーん!


答えはみんな知っているはずだ!

どんな致命傷を負っていても、どんな猛毒に侵されていようとも、どんなに精神的にボロボロで心折れまくっていても、宿屋で一晩寝れば全快というあの能力だ!

あの能力は冒険者になった時に標準装備されるのかと思ったら、どうもそうではないらしい。

よし明日から冒険者になるぞーって時に、魔法のアルティメットポーション(以下ULポーション)とやらを飲んで体質改善を図るそうだ。

しかもこれが結構お高いらしくて、なぜかいつも冒険を始めた時には所持金がなくて、今までどうやって生活していたんだよって疑問がこれで解消されたのである。


そしてその魔法のULポーション、多少の錬金知識があれば作成も可能らしいのだが、原材料の入手が難しくてこれが高額の原因となっているとか。そのいくつかある材料のなかで最も高額材料というのが他でもない"マンドラゴラの種"というわけだ。

賢明なる諸氏ならば、もう今回の話のオチはお分かりであろう・・・。


ぺっぺちゃんが去った翌朝。

「スケさんスケさん、見るですよ!ぺっぺちゃんが種を残しているです」

「へえ、ホントだ。これで材料が揃ったから魔法のULポーションが作れるね」

魔女のプリンとクロネコのスケさんが植木鉢を覗きこみ、ぺっぺちゃんが置いていった得体のしれない丸い球を拾い上げる。

「でもぺっぺちゃんは、いなくなっちゃったです」

「仕方がないよ、そのために種を残していってくれたんだからさ」

「そうですね。ぺっぺちゃんの尊い犠牲をけっして無駄にはしないのです!」

「・・・いや、べつに死んだわけではないから」

「かくなる上はこの忘れ形見をつかって、早速ULポーションの作成にとりかかるです!」

「だから死んでないって」

そう言いながら家のなかへと駆け込んでいくプリン。


ほどなくして家の中からボンッという爆発音やガラスの割れる音に叫び声などが混じって聞こえていたが、ひときわ大きな"出来たです!"という声が響いたのを境にあたりは静寂に包まれてしまったのである。

なんだ?失敗して猛毒でも作ってしまったのか?

それを飲んで、いや飲まずとも気化した毒の成分で、家のなかの人々が死んでしまったのだろうか?

そんなことを考え不安に包まれていると


ギャハハハハハハハハ・・・・・


家の中から狂気に満ちた笑い声が聞こえてきたのである。

何事だ!何が起こっている!?

すると突如家の扉が不気味な音を立てて開きはじめた。


ギギギギギ・・・


なんとそこから出てきたのは、オバチャンパーマ姿になった我がご主人プリンではないか!?

私はその姿に見覚えがあった。

というか昨日見た。

どうやらぺっぺちゃんのエキスの成分が強すぎたのであろう・・・。

だがこのままでは次回からタイトルが"かぼちゃの魔女と〇〇"から"オバチャンパーマの魔女と〇〇"になってしまう。そんなもの誰が読んでくれるというのだ!

だがそんな私の心配をよそにユラユラと中庭に降り立ったプリンは、ブツブツと独り言を繰り返していたかと思うと両腕をつきあげて雄叫びを上げる。


「ムカつくなのです!」

そう言いながら苛立った様子のプリンは、なにやら呪文の詠唱を始めた。

すると空が深い雲に覆われ、やがてその雲々が赤黒く染まり始めたかと思うと超巨大な隕石が落ちてきた。大気が震え大地は震動するなか落ちてきたその隕石は、遠い山の頂に落ちてのっかった。後にオンナ便所(のマーク)山と呼ばれることになる名所の誕生なのである。


「・・・疲れたです」

そう言いながらバタリと倒れこんで、眠り込んでしまったプリン。


ー数刻後ー

「プリン、起きなよ。どこに行ったのかと思ったら、こんなとこで眠ってるなんて」

そう言いながらスケさんがプリンのちいさな鼻を肉球で押さえつけて起こしにかかる。間もなく"へっぷち"とクシャミをしながら、かぼちゃの魔女はその体をもちあげた。


「おお!MPが全快してるです!実験は成功なのですよ」

そう言ったプリンの髪型も元に戻っている。どうやらぺっぺちゃんの濃いエキスも消化吸収されてしまったのであろう、実験の成功失敗がどうでもいいくらいの大問題もこれで無事解決したというものなのである。


「やれやれ、そんなとこで眠ってたら風邪ひいちゃうよ」

「フフン、今度からは風邪くらいのステータス異常は、眠る端から治っていくのです!」

「全くもう・・・、でもこれで冒険に出かける準備はできたわけだね」

「そうです!大魔導プリンちゃんになるための第一歩が、いまここに刻まれたのです!ヌハハハハ」

「いやキミ、またキャラがブレちゃってるから」

「おっとアッシとしたことがです!」


その時家の中からプリンを呼ぶバーリンの声が響く。

「ゴルァ!プリン、アンタまたやらかしたね!」

「スケさん、エマージェンシーですよ!早くトンズラかますのです!」

「やれやれ・・・」

間もなくバーリンに掴まったプリンはお仕置きされて、泣きながら許しを乞うことになったのは言うまでもない。

大魔道プリンへの道は、はるかに遠く険しいのであった・・・。



おしまい


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