06 善戦前夜
――ブォォッン――
吊り橋を支えるワイヤーが切れ、空を切り裂きながら迫り来る様な重々しくしなるワイヤーに似た音を伴い、畳二畳はある巨体に見合った大きな肉球を持つ足が、蒼の放浪者たちの視界を遮る。
((((早い!!))))
「――――アイッ!!」
リーリナの鋭い声が飛ぶ。
反射的に、マーカスは背負っていた二枚の大楯の縁同士を重ね合わせ地面に突き立てる。
二枚の大楯の縁と縁が触れ合った瞬間、大楯の接合部から右四本、左五本と棒が飛び出す。
飛び出した棒は金属の円柱であり、その先端には九十度ごとに、矢じりの様な返しが付いている。
金属の円柱棒は、互いの大楯の縁が接触すると同時に飛び出し、互いに挿入されると、「ガシャッ」という銀行の大金庫が閉まる閂の音に似た音と共に接合された。
そこには、繋ぎ目の見えない一枚の大大楯とも言うべき大楯が現れた。楯の縁には、緑色の光が走り繋ぎ目の一体化を告げる。
一枚の大楯となった楯を地面に突き立てたマーカスは、大楯の裏面に両腕を押し当て、全体重を前面にかけながら踏ん張り、構えた。
マーカスが楯を構え始めると、即座にゼシキ、リーリエ、リーリナは楯の陰に身を隠した。
その瞬間、巨大なオオカミの魔物による前足の攻撃が大楯に届く――が、大楯に攻撃が届いた瞬間、大楯の表面が真昼の太陽に似た光を放つ。
「――くッ、重い!!」
人の体重よりも遥かに重い前足による攻撃を受け、うめきながら十メートル以上もの距離を滑る様に石畳に跡を残しながら後退させられたマーカスの後ろには――もう、誰も居なかった。マーカスを楯にするだけして置いてきぼりと、言う訳では無い。
既に皆、各々の役割を理解し、仕事に取り掛かったのだ。
リーリナの咄嗟の判断によって、三人は文字隊形と呼ばれるアルファベットの文字を模した隊形に並ぶことで難を逃れた。
その上に、置き土産として、大楯に設定された術式を作動させ魔物の目をくらましたのだ。
目の前の人間ごと楯を攻撃した瞬間、パッと楯の表面が強烈な閃光を放ち、目を眩まされた汚染体は、煩わし気に唸る。
だが、巨大なオオカミは、それでも攻撃の手を緩めることは無い。目蓋を閉じたまま目標を大楯を持った人間に絞り、二度、三度、右前脚の次は、左前脚、左前脚の次は、再び右前脚へと、交互に攻撃した。
(くそ、前に戦った竜種より重ぃッ!!)
マーカスの内心は焦らざる負えなかった。
目の前の巨大なオオカミは、その巨体に似合わず器用に、前足を動かし、まるでネコ科の動物の様に器用な猫パンチに似た攻撃を繰り返す。
それもただ攻撃するのではない。人の両足を合わせたよりも太く長い爪を、ただ乱雑に振るうのではなく、爪の背で弾くような攻撃をしたかと思えば、そのまま手首のスナップを効かせ、返し返しに攻撃を行う。
こちらが、盾の角度をずらし攻撃をいなすと、今度は、爪の先端で鋭い突きを放つ。その突きもいなすと、巨大なオオカミはさらに放った突きがこちらの盾に接触した瞬間、マーカスが大楯の角度をずらすのを予測し、爪の先を引っ掛ける様に動かし、マーカスの手から大楯を引き剥がそうと攻撃方法を変更する。
この巨大なオオカミに比べれば人間など格下であり、自らよりも遥かに小さく貧弱な相手にも係わらず、これ程の警戒を敷く魔物。それも心身ともに狂ったはずの汚染体となれば。
(―――いくらなんでも……異常だ!!)
本来ならI隊形時は、設定された衝撃に反応して、衝撃反応閃光術式が起動し、光属性系統魔術が発動する事によって七十万ルクスに調節された強力な光が放たれ、相手の網膜を焼き、視神経を傷付け、そのついでに脳にも焼き付けを起させ、”みんなで叩こう作戦”を決行する予定だったが――残念ながら、こうも村人が近くにいる状況下で、それは出来ない。
もし、実行しようものなら、よほどの状況下でもない限り人間性を疑われる上に、所属するギルドから監査を受け正当性が無いと判断されれば、冒険者資格を一時停止、悪くすれば剥奪なんて事も有り得る。
だからこそ、マーカスは自らの役割を再認識し、覚悟を決める。
反撃の光量を調節し、自力に近い形でアレの攻撃を受け持つことを……
(……仕方がない。攻撃系はまだだな。早く何とかしてくれ兄弟!!)
マーカスの持つ二枚一組となった大楯の裏面には、直径十センチ、七センチ、五センチの円盤が三つ重り一組となった金庫によくみられるダイヤル錠に似た円盤が、大楯の中央より少し斜め上に設置されている。
マーカスは、ダイヤル式のツマミを回転させ、円盤の表面に刻印された文字ごとに設定された、「カチカチカチ」っという歯車の引っ掛かりによって生じる僅かな固有の振動を、戦闘の最中に感じ取りながら、手元のダイヤルを見ずに目的の文字を合わせる。
「流石だな!!兄弟!!」
巨大なオオカミの後ろに回り込んだゼシキは、先程から連続して焚かれるフラッシュの光量が光るたびに変化し、緩急を付ける事で巨大なオオカミが光に慣れない様、調節している事に気が付き、マーカスの手際を褒め称えながら、「マーカス!! 二十秒ほど時間を貰うぞ。いくつか下ごしらえをしてから、距離は取らずに弓術を使う!! 矢が必要なら言ってくれ!!」
(アレか!! アレをするのか!!)
正直、あまりいい思い出の無いゼシキの戦術だが――――複雑な術式起動工程を省く分、魔力消費を抑えられU、制圧力に関しては申し分ない戦術戦技を思い出す。
「……ああ、任せた兄弟!!」
(考え過ぎて判断が鈍くなりがちなマーカスと、多少日常ではいい加減な即断即決のゼシキ――――こういう時は信用できるわ)
大楯を構えたマーカスを楯にして、巨大なオオカミから隙を作ると、リーリエは村人を一か所に集め指示を出した。
「さぁ、皆さん。私の後についてきてください」
リーリエの言葉に、村人たちは静かに頷くが、「あのっ、家族がまだ」「私の家族も」「あの建物に」「子供が」、口々に言い、動きが鈍る。
「良いですか、皆さん? 今は私たちが避難する事が最優先です。それにオオカミはどういった生活をしていますか?」
短い問いだが、村人たちを老若男女問わず静かさと冷静さを持たせるには、十分な効果を発揮した。
村に生きるものなら、オオカミの恩恵と脅威を、子供も、大人も、年寄も――――老若男女問わずだれでも知っているからだ。
オオカミは基本的に群れで生活し狩りを行う。それは、魔物となった場合でも同じだ。
むしろ、魔物となった場合、群れのリーダーとなった魔物のオオカミから漏れ出た魔力が、他のオオカミにも影響を与え、魔物化させる事が分かっている。
その上、オオカミはただの獣では無い。人にとっては害獣にも益獣にもなり、その事は農作業に携わる者なら誰でも、子供の頃に親から教わっている。
オオカミは田畑を荒らすシカやイノシシと、言った草食動物を食料として襲い。結果として、人とある種の共生関係を築くことがある。勿論、人と争いになる事もあるが、オオカミも、よほど生存に困窮しない限り、人を襲おうとはない。
だが、いざ襲うと決めれば、オオカミはその狩りに対する高い知能と社会性。そして、天性の身体能力で獲物を襲撃するだろう。
だからこそ、蒼の放浪者の者たちや冒険者ギルドの職員エルザ、魔物に対して多少の知識のある者たち、そして、動物としてオオカミの生態を理解している村人は静まり返り、焦るのだ。
これ程までの巨体に――――それも、ただ、肥え太ったのではなく、生物的に無駄のない引き締まった体躯に、魔力を持つオオカミの魔物……。
ならば当然、つがいとなるオオカミの魔物も同格――――魔物は自らと同格のつがいを見つけた場合、危険度は著しく上昇する。
基本的に魔物同士の子供は生まれにくいが、それでも生まれた場合、その子供は後天的に魔物となるのではなく、先天的に魔物として生まれて来るのだ。
そして、世代を重ねるごとに、先天的に魔物が生まれる確率は高くなり、いずれ魔物が生まれる事が当たり前になり、その魔物は一つの種として確定し、生態系の新たな一系統として自然界の記録に記されることになる。
だからこそ、大きな都市や町では、その様な事が無いように魔物を危険な動物の内に駆除し、系統として確立しないように国家単位、都市単位で狩りを行うのだが、予算は足りず、人員も足りず、それ故に、冒険者は大儲け、なんてことは無い。
魔物は、簡単に言えば、魔力という強化外骨格に身を包み込んだ動物だ。ただでさえ、武器を持たない人が勝てる動物など知れており、人は武器を持って初めて動物に抗える。それが知性であれ、手足の延長の武器であれ、銃火器であれ、だ。にも拘らず、動物からまでもが武器を持った状況など、悪夢に等しい。
それらが大きな要因となり、魔物退治は、遅遅として進まない。
それに何よりも、大抵の魔物は危険な環境に住んでいることが多く、人の生活圏に現れる魔物は、そうした環境から何かしらの要因で追い出された魔物が多い。
現状では、そうした魔物を撃退するのが関の山となっている上に、魔物と人の生活圏はある程度はっきりしていて、魔物の生活圏に踏み込まないか限り襲われる心配も少ない事が、行政の腰を重くしている一因でもある。
「私たちの目標は…‥全滅を避ける事よ」
倒れた村人は助けない、いや助ける余裕はない、と言っている事に村人は誰も反論できない。
そもそも、蒼の放浪者は四人編成のチームだ。手数が圧倒的に足りないというのに、時間稼ぎとして戦ってくれているのは、あくまで彼らの善意なのだと分かっているからだ。
もし彼らを雇おうと思えば、最高冒険者次席という冒険者のランクに見合った料金を請求されるだろう。
例え、彼らが安くても良いと言ったところで、冒険者ギルドが、それを許さない。
そうなれば、とてもではないが、ただの村人である彼らに払う手段はない。
村人たちは黙って、リーリナの指示に従いこの場を離れる事にした。
◇ ◇ ◇ ◇
鋭い光が幾度となく光り、汚染された巨大なオオカミの魔物の目を眩ます。
そのたびに、僅かながら怯むオオカミはマーカスに向かって威嚇するように唸る。
「唸りたいのは、こっちも同じだ。こうも中途半端な攻撃ばかりしか出来ないのでは……なッ!!」
オオカミの猛攻をしのぐことで手一杯だが、マーカスは皮肉を返し、自らを鼓舞する。
(まずいな。たった、五度まともに、受けただけでこれか……補佐無しではまずいな)
痺れ始めた腕へと目と向けたマーカスは、そう判断し、三重ダイヤルを回しながら、「非難は!?」と叫ぶ。
二枚一組となった大楯の中央には、魔力残量を示す棒状の魔力充填マークの半分が黒くなり、残り半分は緑色で示され魔力残量が五十パーセントを切っている事を表していた。
「まだかな」
リーリナは、そう言いながら戻って来た。
彼女の手には、人一人分はある大きな袋の口が握られ、マーカスに向け投げられた。
投げられた袋は、マーカスの後ろの地面にぶつかるも跳ねることは無く。重さを伴ったプラスチック容器同士が擦れ合う鈍い音と、軽い金属同士が擦れ合う音が幾つも聞こえた。
「旧式の魔力バッテリーを家からとって来たわ。端子の変更は終わっているから有線接続で魔力を補充して」
既に袋の口からは、人差し指ほどの太さのゴムの被覆で覆われている魔導線が数本飛び出している。
「リーリエ! 第二食料庫へ向かって!!」
「分かったわ。みんな聞いたわね」
「時計回転で頼む!!」
リーリナから渡された袋から飛び出ている魔導線を隙を見て大楯に接続すると、緑色のケージが点滅を開始した。
マーカスは、楯を構えつつ人間大の袋を引きずりながら、リーリエと村人が、常に巨大なオオカミの背後に位置するよう注意を引きながら動いた。
「こっちも完了したぞ!! 一応、赤い光には近づかないでくれ!!」
村中に、魔力量感知術式と二酸化炭素生成術式、そして結界術式までも組み合わせた矢を打ち込んできたゼシキは、そう言い、戦いに加わった。
魔物も生物である以上は、生存に必要な要素は元になった生物と変わらない。だからこその一酸化炭素生成術式だ、というのは建前で、実際には金銭の問題だ。
生成に掛かる魔力も術式も複雑では無く、簡単であり、当然の事ながら、生成が容易いという事は……懐にも優しいという事だ。
とは言え、この矢は低強度物理遮断結界を展開し、結界内に生成した魔力と結合していない一酸化炭素が外に漏れ出るのを阻害して濃度を上げる働きもあり、人間も中に入れば、只では済まない――が、魔力量感知術式によって、一定量の魔力を持たない者には反応せず、村人には……反応しないだろう。
ゼシキは、色違いの縦横幅が、100センチ、15センチ、1・5センチの板状の矢筒、矢筒プレートを、四枚重ねて一組にした矢筒の一つ一つのプレートから一センチほど飛び出ているボタンを押した。すると、矢筒プレートの外観の色に即した色の矢羽根が現れた。
どの矢も木で作られておらず。矢を構成する素材は、色付きガラスや水晶のような結晶構造体で形成されている。
もしこの場に、千分の一秒以下で映像を処理できる目と脳を持つものが居れば、矢筒プレートの中から矢が飛び出て来たのではなく。
水が冷えて固まり氷となる様に、結晶の矢が形成されてゆく、美しい姿を見ることが出来ただろう。
――ギルド・ハズキ製の定型術式一体形成型矢筒・プレート型――
このシリーズの矢筒プレート一枚当たりの値段は、大金貨四枚にもなり、平民の一般的な年収の十数年分にもなり、矢の生成にも相当量の魔力が必要となる。だが、利点として魔力がある限り矢を生成する事が可能で、矢を用意する必要が無くなり、弓を使う者にとっては垂涎の品だ。
ゼシキは、矢筒プレートから飛び出ている赤色の結晶で形成された矢を、人差し指、中指、薬指、小指の間には差に込み、三本同時に弦に番えながら、汚染体となった巨大なオオカミに近付き大弓を構えた。
明らかに、弓の最適な投射距離からすれば、近すぎる距離を取ったゼシキは、汚染された巨大なオオカミの左後ろ足へと回り込むと、「まずは……第一射っと」矢を放った。
――バァンッッ
射られた矢は、空気の壁を打ち破ったことを知らせる轟音を響かせ目標へと着弾する――――大弓より、ほんの少し先の土を捲り上げ、吹き飛ばし、周囲のヒビの入った窓ガラスに止めを刺す。
――放たれた矢は一本。
ゼシキは器用に他の二つの矢は放たずに、一本だけ放ったのだ。
本来、半物質化した魔力によって構成された結晶構造体のの矢は、”魔力の半物質化”という水晶のような結晶構造体になる事で安定し、空間中に液体の様に漂う状態で存在する通常の魔力よりも、大気中に溶け込む、”魔力の自然減衰”と呼ばれる現象の影響を受けにくい。
単純な換算で、通常状態の魔力が一㎥当たり1000とした場合、魔力の自然減衰によって魔力が空間中に溶け込み、通常の物質に対する影響力を失うまでの時間は約四日。それに比べて、半物質化した魔力の減衰期は、半物質化した際の条件で大きく異なるが、それでも最低で約一年の差がある。
にも拘らず、半物質化した矢は、目標に到達した瞬間――破砕し衝撃のみを巨大なオオカミに与えたのだ。
これは単純に、ゼシキの放った矢の速度が音速を超え、矢が通過する空間中に漂う物質に高速で接触した事によって、空間中に漂う物質と矢が保有している魔力が激しく接触し、急速な魔力減衰を起こした事によって、魔力が純粋な物理現象に対して優位性を発揮するのに必要な魔力量を失い、音速という過酷極まりない環境に、矢が持つ物理強度が耐え切れなくなり、自らの速度と通過する空間中の物質に耐えきれなくなり速度が落ちた事で、再び音速の壁に接触し、そのタイミングが巨大なオオカミに着弾する毛一本の距離だったという事だ。
当然、急速な矢の持つ物理強度の変化は、通常の物理現象とは異なる現象を引き起こす、が、今は別の話だ。
音速の壁に負けた矢の起こした衝撃波と、発生した音は、非常に大きい、当たり前だ。ならば、その責任も大きいだろう。
「おぅぅぅ、……悪かった」
破砕した空気の壁が引き起こす衝撃波と大轟音は、一瞬で、この狭い人場へ広がり、満たす。
村人たちの鼓膜を震わし、三半規管をベルを怒り狂った客の如く鳴らし、届く衝撃は、頭蓋内部から脳をイカレタ訪問者と紙一重にドアノッカーの如く何度も打ち鳴らす。
耳を塞ぎ、蹲る村人たちを見て、ゼシキは謝った。
「ゼシキ~あなたねぇ~私達だけじゃないのよ!!」
クウは、両耳を抑えながらゼシキを怒鳴った。
「「ヒッ!!」」
「……なんでミズハ、あなたまで驚くのよ……」
クウに手を引かれていたミズハは、片手をリトルグレイそっくりに引かれた格好で、いつもの条件反射として思わず悲鳴を上げたのだ。
かわいそうな事に、ミズハは日頃の善行の積み上げ方が拙かったのだろう。だからこその反応であり、クウが悪いという事では無い。
(ミズハ……かわいそうにクウは自他ともに厳しいからな)
耳を塞ぎ、可愛らしい悲鳴を上げるミズハを見て勝手な解釈をするゼシキは、残りの矢を番えながら自己分析を始めた。
……正直、汚染体の耐久力を確かめるつもりで、一本だけ放ったのだが、正解だったようだ。
もし、三本同時に放っていれば、村人の鼓膜は間違いなく破れ、脳と肺にも少なからず影響を与えていただろう。だが、そのおかげで、矢を構成する魔力量の調節ができる、ともいえる。
ゼシキは矢筒プレートの手を伸ばし、四つのプレートごとに同じ位置にある引っ張り型のつまりを持ち上げ矢を構成する魔力量を変更する。
(不幸中の幸いだな)
ゼシキは、そうは思いつつ、良くない結果も見ていた。
今のゼシキの放てる最高の一撃を。
――――音速の壁を突破するだけの一撃を受けて尚、巨大なオオカミの左後脚の太腿に目立った外傷は無い。
それでも強いて言うなら、毛が少し飛んだだけだ。
(……やはり、発動しなかったか。それにしても、いくら何でも運動特化じゃない属性矢とはいえ、あの程度とは……悪夢だな)
常人相手なら必殺。フルプレートの騎士でも魔力無しなら挽肉。いや、矢の効果から考えて炭火焼きか完全化に焼きそこないの炭化肉になっていたはずだ。
属性矢は、さまざまな物理現象を魔力内包の有無関係なしに、発生させる術式を組み込んだ矢呼称だ。
その他にも、運動エネルギーを前提として、それらを強化する術式を組み込み内包した対物矢があり、矢は大まかに分けて、この二種類からなる。
簡単に言うならば、自らの家に不法侵入してきた強盗を、一定以上の剣術を学び修めた者が、自らの技量に絶対の自信を持ち、ワクワクと正当性を訴えながら、家に用意した重ね――刃の厚さ、幅――の厚い木刀で殴るか、予め用意していたスタン警棒――5~六十万ボルトの電圧を帯電させた警棒――で殴るかの違いと、と言えば解り易いだろう。
ゼシキは、属性矢の効果を確認するや否や、今度は発射速度を落とし、異なる発射速度で残り二本の矢を放つ。
放たれた矢は、八十リットルのドラム缶四本分を束ねたよりも太い、巨体に見合った大きな左後脚の太腿の一瞬手前で赤く赤熱化し――着弾する。
「やったか?」
期待を込めたゼシキの呟きに答えたのは――ヴォォォォオオゥゥゥウウという唸り声だった。
◇ ◇ ◇ ◇
雷光にも匹敵する眩い光が幾度となく発光し、瞬間的に広場の石畳を照らし出す。
強烈な閃光が走るたびに、光を遮る物体の陰影が引き伸ばされる。光源が複数あるせいか、灰色の石畳の上に、扇子の骨の様なシルエット引き伸ばされ広がった。
「リーリナ」
「何?」
「私も参戦するから任せてもいいかな?」
汚染された巨大なオオカミの注意を引かない様、常に背後に回りながら、村人を引き連れ時計回りに動いて、ようやく広場の反対に出たところで、そう声を掛けられたリーリエは苦戦するマーカスと決め手に欠けているゼシキを見て頷いた。
「……ええ、大丈夫よ。あとは任せて。私もなるべく早く参戦するから――――」
ウォォォォオオオオオオン―――――
アウォォォオオオオンンンン――――
ウォゥウォゥウォォオオオオン――――
「「!!!!」」
「「……」」
無数の犬に似た遠吠えに、リーリナとリーリエは、お互いの顔を見合わせる。
「ねぇ……」
「最悪かな」
「作戦変更ね」
予定の大幅な変更を余儀なくされることになった、リーリナ達は、僅かな躊躇いの後、再び移動を開始した。
「エルザさん。ギルドに立て籠もらせてください」
「…………分かりました。二階も開放しましょう」
「助かります」
「みんなさん、聞きましたね」
村人は無言でうなずき、先程以上に素早くリーリナ達の後について動き出した。
子供も居るというのに、注意を引かずに此処まで静かについてこられたのは、僥倖と言えるだろう。
巨大なオオカミの注意を引かないよう、静かに身を屈め動き出したリーリナ達を見ながら、マーカス達も村人たちの動きを補佐する様に注意を払って動き出す。
◇ ◇ ◇ ◇
「一気に決めるぞ!! こっちに引き付けてくれ!!」
決着は早ければ早い方が良い、そんな考えのもとマーカスは、村人たちが冒険者ギルド・ロート村出張所の中に入り扉を閉めたのを見計らうと、ゼシキに攻勢の合図を送る。
マーカスの構える大楯は幾度とない巨大なオオカミの重い攻撃に所々が歪み。楯の縁を走る緑光が冷却時間を誤ったガラスに反射する光のように、波打ち走る。
「当たるなよ兄弟ッ!!」
ゼシキは、四枚重ねの矢筒プレートから、五センチほど飛び出た矢・十六本を鷲掴みに四度纏めて取り出すと、恐ろしく器用に射始めた。
ゼシキは、こともあろうか――弦を引く右手に鷲掴みにした六十四本の矢を保持したまま、大弓を持つ左手の人差し指、中指、親指を器用に動かし、矢を番えるために弦に引き付けた右手に握られた矢の束の中から、矢じり部分を掴み、矢を二本掴み出すと、滑らかな動作で番え――――射る。
本来、弓を射るには、――弓を構える――矢筒から矢を取る――矢を番える――弦を引く――狙う――矢を放つ――矢筒から矢を取る――矢を番える――弦を引く――狙う――この十の動作が矢を連続して射るためには必要だ。
だが、ゼシキは、――弓を構え――矢筒から矢を束として取る――矢を番える――弦を引く――狙う――矢を放つ――弓を構えたまま、右手に保持した矢を、番えながら弦を引く――狙う――この八つの動作で射る。
通常よりも二工程も早く放てるのだ。
通常の射がコッキングタイプのライフルだとするなら、ゼシキの撃ち方は、セミオートのライフルだ。それも二つの銃身を持つ……いや、最大で三つの銃身を持った個人単位で携行する事が不可能なライフルだ。
もちろん、手に矢を持った状態で放てる者もいる。だが、これほどまでに、矢数、連射性、正確性、機動性、継続性を備える者は――多くない。
ゼシキは、矢を放ちながら、ゆっくりと巨大なオオカミの周囲を円を描きながら回り込む。
その動きは、カタツムリより早く、ゼニガメより遅く――水に落ちたナマケモノより早い。
そんなゼシキの移動の遅さには、この弓術の利点を最大限に生かしたが故の欠点が関係している。
大弓は、弦を引く際に必要となる力が大きくなる傾向があり、腕の力だけでなく、足の踏ん張り、腰の動き、背筋を使用しての外向きへ背を逸らす力、大胸筋の引き付ける力、三角筋の保持する力、弓自体を持つ腕と手の弦の張力から支え耐え保持し続けるだけの保持力、これらの複雑な踏査を一動作として同時に行う技術が、大弓には求められる。
当然の事ながら素早い動きには向かないが、その分、矢の速度は速くなり、威力も増す。
例え、通常の弓や長弓と分類される類の弓と、弦を引く力――張った弦を引くのに掛かる力を張力と言う――が同じであっても、弦の長さ、矢の長さ、矢の重さ、そして弓自体の長さの全てにおいて特殊な事例を除き、勝っている以上……あとは純粋性物理先生の出番となる。
――が、威力が大きいという事は、矢を放った際の弓のしなりや反動と言った作用反作用も当然、強くなる。
その事もゼシキの動きが遅くならざるを得ない理由の一つだ。
それによって、多くの弓術の基礎でもあり長所でもある、素早く地形を移動しながら射る三次元機動弓術の使用にも影響を与えるが、ゼシキが使用する弓の技術の流派――〈シーモウォール流・大弓術〉は、あまりその影響は受けない。
ゼシキの使用する弓術の流派は、〈シーモウォール流・弓術〉であり、その名の通り、弓の使用を前提とした技術を教える流派であり、ゼシキは免許皆伝まで修めている。
そして、免許皆伝者のみに伝授される三つある最高位難易度・弓術の内の一つ、〈怯エ震エル赤ノ降誕・前〉を、ゼシキは〈シーモウォール流・弓術〉で通常使用する流派武器では無く、大弓を使用し、ゼシキが元々、修めていた流派の技術と融合させた結果、誕生したゼシキが初代流祖とでも言うべき新興派生流派の弓術として使用しているが故に、本来〈シーモウォール流・弓術〉が持つ高い機動性と隠密性を大きく、命中性を多少犠牲に、高い制圧性と貫通性、衝撃性、連続性、距離、を手に入れ、今現在発揮しているのだ。
ただ、残念ながら、ゼシキの納めた二つの流派は、共に使い手が少なく、習得難易度の高さも相まって、派手さも無くく、複雑な効果を発生させ辛い、骨董的な技術だ。
大抵の弓使いは、矢に術式を組み込み内包する処までは同じなのだが、矢そのものが発揮する運動エネルギーの威力よりも、着弾時の化学的ともいえる効果を重要視し、その効果は複雑怪奇にして千差万別だ。
矢の着弾地点から、氷柱が逆さつららの様に乱立する事もあれば、一本の巨大な卒塔婆の様な氷柱が現れる事もある。かと思えば、火柱と同時に、間欠泉の如く沸騰した熱水が吹き上がる通常では起こりづらい現象もある。はたまた、地から天へと昇る稲妻が立ち昇る事もある。
発生する現象は、ある程度、規格化されているが、それでも上級の冒険者となると、その効果は、個人個人によって異なる。弓使いは、魔術師に劣らず派手な傾向がある職業だ。
先の効果のおかげで、冒険者で無くなっても潰しの利きやすい職業の一つでもある。
――射られた矢は、赤、青、黄、茶色。
赤い結晶体で構成された矢は、最大で摂氏二千七百度。
青い結晶体で構成された矢は、最大で摂氏マイナス百四十度。
黄色い結晶体で構成された矢は、最大で六十アンペア・二百七十万ボルト。
茶色い結晶体で構成された矢は、最大で-0,00574hPaの高真空状態を一定範囲に発生させる。
それらの矢には、全て共通の術式が組み込まれている。
発動した術が周囲に想定外の影響を及ぼさない様に、中強度・物理・魔力遮断球状結界の術式が内包され、矢に内包された、他の術式の効果が味方や環境に与える影響を最小にする為に、効果範囲を直径一メートルの球状結界で覆い、制限するという、少し荒い方法で術式の効果を制御している。
そんなゼシキの矢には、他の弓使いが放つ矢の様な、派手な効果は無く、単純な元素系と呼ばれる効果しか発揮しない矢だが――見る者を魅了する。
別段、矢が起こす効果が美しく魅了するのではない。勿論矢の発揮する効果も美しく綺麗ではあるが、それ以上に、美しいのは矢を射るゼシキの射だ。
冒険者ギルド・ロート村出張所の中に避難した村人たちは、ギルドの扉に張られた特殊な大ガラス越しに老若男女問わず危機的な状況である事も忘れ、ゼシキの放つ射姿に見惚れていた。
シュッッ、シュッッ、シュッッ、シュッッ
ヴォッ、シュヴォッ、ヴァジィイ、ッズボォオ
連続して矢が大気を切る音と、着弾の音。矢に内包された術式によって発生した魔術現象音と光は、結界の物理魔力遮断作用によって、純粋な物理現象では起こりえない、異質なくぐもった音を響かせる中、すらりと伸びた姿勢のまま、常に一定の歩幅を維持し動きに硬さの無い、ゆったりとした戦っているとは思えない程、優雅な歩みで矢を射続けるゼシキの姿は、もしゼシキが女性だったならば狩りの女神か死者の魂を導くという戦乙女を連想した事だろう。
だが、残念ながら此処に居るのは、美女でも無ければ花蓮でも無い、お世辞にも美形とは言えない青年だ。
顔立ちは悪くは無いが、少し大きな都市の通りを歩けば、すぐに溶け込み見失う程度……平凡より少し上が関の山の顔立ちだ。
だが、此処には、それらを無視して尚、余りあるだけの――純粋さがあった。
如何なる分野においても、機能を追求し続けた”事象”は、美を宿す。
そこに、有形無形で在るかなど、誰も問うことは無く。
純粋で在ることを突き詰めた”事象”は世界の祝福を受けるのだ。
ただ、それが在り様を示すだけで――美しくあれ、と……。
ゼシキの射姿には、”機能美”が存在し、それが人を魅せるのだ。
巨大なオオカミの周りを散歩するかのような足取りで、円を描く様に回りながら、矢を射るゼシキは、六十四本の矢をすぐに射終わらない様に、巨大なオオカミの注意を、視界を、動きを封じるために、同時に番えた矢の発射間隔を微妙にずらしながら射続ける。
放たれた四色の矢は、赤色、青色、黄色、茶色の順に巨大なオオカミの左側頭部・左目の辺りへと着弾する。
矢の着弾した個所は、急激な温度上昇の後に急速に冷やされ放電を受け、最後に直径一メートル程の高真空空間が発生し、周囲の魔力も含むすべての物質を引きずり込み、眩い閃光に満たされた球状の光球を、熟れ堕ちる葡萄の粒の様に、幾つも発生させる。
一秒間に二矢――矢を番え、0、2秒に一射目を、0、7秒目に二射目を射る。
多少の誤差は仕方がない――だが、おおよそ一秒に二射、六十四本の矢を全て射るのに約――十六秒。
――十六秒という長くも短くも感じる僅かな時間の中で、ゼシキは的確に番える矢を間違える事無く順番に番え、発射し続けながらマーカスへと近付いて行く。
最早その様は、人力によるものだと――誰が思おうか……
◇ ◇ ◇ ◇
――朦朧とする途切れ途切れの意識の中。
『彼は、彼女は』、蜃気楼の如き揺らぎに包まれた意識が、思考が澄む度に――考える。
――ワタシは、何をしているのだろうか、と……。
霞掛かる意識をもたげ、目蓋を己が意思で開く度に変化する光景を他人事の様に眺めながら……見詰める続ける。
――こうなってからは、何度目だろうか、と……。
瞳に焦点を見い出し、意識の焦点を見い出せたのは……何時だったのか、と……。
最早、己が性別すら忘れてしまった『彼は、彼女は』、目に灯る焦点の灯りに引き寄せられ、ほんの僅かな時間の中に観た……数度前の光景を――瞬きの様に思い出していた。
――そう……アレは……三度前の光景……。
――オオカミだ。たくさんのオオカミが……ワタシに向かって吠えている。
彼らの吠える内容を、吠える音の音階に含まれた意味を、それは……複雑な人の言葉にも匹敵するだけの意味のある言葉……だった。筈だが……分からない……知っていたはずの言葉を私は……識らない……。
――再び、脳裏に広がる景色が変わる……。
これは……二度前の光景ですね。
理由は不明だが、『彼は、彼女は』、その光景が何度目かを覚えている。
――先程までの光景が、少し変化して脳裏に広がる。
――血だ。辺り一面に血の海が広がっている。
全身から血を流したオオカミたちが、ワタシの目の前で唸る。
ワタシの目の前に立ち塞がって唸るオオカミには特徴があった。
左の目に、かつては痛々しかったであろう古傷が縦に走り、ふさふさとした長い群青色の毛は地肌から裂け、裂け目からは筋線維が露出し、溢れる泉と見まごう程の鮮血が地下水の様に、砂の代わりと表さんばかりに、肉をこぽこぽと、湧き立たせ、他の狼たちも皆、似たような多かれ少なかれだ。
四つ足で立って居るオオカミも居れば、地に横たわるオオカミも……居た。
彼らの中には、上半身が何処かへと行ってしまった者も居れば、下半身を何処かへと忘れて居る者も居る。
彼らは自らをを、何処へ忘れてきたのだろう。
――思い出すといいですね。
そんな、たわいもない善意に満ちた……慈愛をも含んだ感情を抱きながら、『彼は、彼女は』、ずいぶんと低い位置で唸る古傷を持つオオカミを見る。
他のオオカミよりも、ひときわ大きな体躯を持つ傷持ちののオオカミは、『訴えている』、そう誰もが受け取るであろう震えた声で――唸り続けた。
――でも、その声は……分かりません。
片目に古傷を持つオオカミは、長い鼻筋に無数の斜めに交差するタイヤの溝にも似たしわを寄せ、眉根を低く寄せ、睨み付けるように唸る――その瞳には、どこか悲し気な色が浮かんでいる。
ただ、それでも……
――分かりません。ちゃんと人の言葉で、話してください。
唸るオオカミたちの言葉を理解しようと、思考を巡らすも、再び――脳裏の光景が変る。
――また変わりましたね。……これは……今?
そう『彼は、彼女は』、理解する。
――だが、この光景は、現在の景色は……先程とは大きく異なる。
見た事のある形状の武器を持った鎧姿の男たちが何かを叫んでいる。
かつてもあの様な者たちがいた。気のいい人たちだった。ワタシの容姿に驚かず、むしろ人懐っこい笑顔で話しかけてきた……。
だが、目の前の者達は違う。
明確にワタシに向かい大声を上げている。
叫ぶだけなら――――まだいい……捨て置くだけだ。
それに、私の見た目は……私の見た目……わた……し……
…………
そこまで思考し、激しい頭痛が『彼の、彼女の』を襲い、考えを、邪魔する。
それは、まるで、それ以上……考えてはならない――そう言っているように。
取り敢えず、彼らはワタシに攻撃を加えてきているのだ。
どの攻撃も、ワタシに届きはするが……届くだけだ。
傷付く事も無ければ――痛みもない……だか――煩わしい。
まるで、血を吸おうとたかる蚊だ。近くで飛ぶだけでモスキート音に似た音が苛立ちを募らせると言うのに、血まで吸いに来るとなると煩わしいを通り越し、叩きたくなる。
……そんな思いを、『彼は、彼女は』抱く。
あぁ、また彼らが何かを言っていますね。何をしようとしているのですか?
「当たるなよ兄弟!!」
「ふっ、当てないでくれよ兄弟!!」
兄弟? あぁ、彼らの目の下には、横並びの黒子がありますね。
ふふふふふ、それも二つも……あの人が、見たら……アノ……ヒ……ト……?
何かを思い出しそうになるが、頭痛が激しくなるので『彼は、彼女は』、それ以上、考えるのを止める。
ただでさえ、自分の体を自由に動かせない、肉体という牢獄に繋がれた不遇なセルフ閉所恐怖症の患者の様な状態だと言うのに、これ以上のストレスは必要ない。
――だから、『彼は、彼女は』彼らの事に集中する。
まぁ、いいでしょう。それに、魔力の波長も彼らの顔も、何処と無く似ているような気も……
――……?
そんな事を考えていると、長い黒髪の弓を持った青年が大弓を構え、『彼に、彼女に』、矢を射る。
『彼は、彼女は』一瞬、今までとは違う、そう第六感にも似た勘が働くも、すぐに特に変化はないと、思い直す。
――確かに彼の弓術は素晴らしいです。ですが、アナタと同程度の実力を持った者など、数える気すら起こらない程に、存在しています。……ですが、それでも、アナタには宝石のような炉端の石ころの放つ輝きとは異なる。……それ以上の、煌めきがあります。
その程度の冠位魔力、身体能力、技量で、よくぞ、その技法へと至りましたね。その精神力、精神性‥‥‥たゆまぬ文武――見事です。
トウオミ家の者ならアナタを弟子にと、望んだ事でしょう。
第一射の矢が左目付近に着弾してから、次の、二本目、三本目の矢が着弾するまでの、僅かな時間の中の思考。
一秒と、少しの時の清らかな流れの中で、『彼は、彼女は』思い出す。
汚染されて尚、忘れえぬ。古き良き友たちとの悠久とも言える思い出に身を沈め、愚直なまでに真っ直ぐな友の言葉を……思い出していた。
――まこッ!!?
四本目の矢が、『彼に、彼女に』、着弾した瞬間――頭蓋が震え、思考は自らの仕事を放棄した。
――ヴォォォォオオアアアアアア
……長い。……読みにくい。……説明臭い。
読んでいただいている方、読みにくくて申し訳ない。
後、四話ほど投稿したら、五千前後で、次に行くようにします。
後、明日も似た時間に投稿しますので、よろしければお読みください。