プロローグ
体育館ほどはある大きな白い無機質な部屋の中央には、直径が五メートル程の半球状の窪みがあり、窪みの中には、巨大な半透明の青い地球儀の様にも見える球体が浮かんでいた。
球体の表面には、地球儀の様に海や川、谷や山と言った地形が映し出されている。
ただ、映し出されている地形は、北半球のほんの一部であり、北半球の千分の一の範囲も無い。
そして南半球には何の地形の映し出されておらず、滑らかな表面をした球体となっている。
地球儀にも似た青い球体を取り囲むように、輪の形に机が置かれ、その周囲に机と対になった椅子が十二脚置かれている。
そして、その周囲を統一された和装と洋装を足して二で割った様な服に、腰からは太刀を佩いた男女各六人が無言で忙しなく仕事に勤しんでいる。
その様な中、春の青葉の様な瑞々しい緑の髪を腰の辺りにまで伸ばし、背骨の最後尾・尾てい骨の辺りから、ゴムのような質感の、鱗の無い蛇に似た尻尾を生やした女性が報告を上げる。
「……転生反応確認。北緯・60度・54分・22秒・47分・***・***・***。西経40度・27分・36秒・49分・***・***・***」
机の前に座る者たちも、その周囲で仕事をする者も、手を一旦止め、彼女の示す球体上の座標を探し始めた。
座標を見つけるのは簡単だ。示された座標は、巨大な球体の北半球に映し出された、数少ない陸地のある一点が赤く点滅しているのだからだ。
「……記憶は?」
「……少々お待ちを、もう少しで……分かりました。まだ取り戻してきません。ですが、この魔素反応からすると……おそらく、寿命が尽きる前に取り戻す可能性が高いと考えられます」
そう報告を受け、皆は何とも言えない空気になった。ただ、緊迫に包まれるという事は無く、むしろ……罰ゲームを受ける様な雰囲気に包まれている。
「ねぇ……誰が行くの?」
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