第93話 ガルーダ
前回のポイント・スラゾウは、クーデリアを守り抜いた!
クーデリアを仕留めるのは、不可能。
そう悟ったらしく、奇妙な鳥は標的を変更する。
それは――
「俺だろう?」
同意するように、奇妙な鳥は羽を飛ばす。
ヒュン!
もちろん、俺に向かって。
「甘いぞ!」
俺はステップして、羽を避ける。
言葉とは裏腹に、回避は間一髪。
距離がなければ、それに奇妙な鳥が動揺していなければ――
「食らっていたな――」
俺は気を引き締めるとともに、情報を集める。
密かに使用した〈異世界王〉によると――
新しい魔物は――
【ステータス】
クラス・マーマン
ランク・F-
スキル・突進F
【パラメーター】
攻撃力・F-
防御力・F-
敏捷性・F-
奇妙な鳥は――
ネーム・ガルコ
クラス・ガルーダ
ランク・S-
スキル・飛行S 適応C 抵抗C 羽刃C
【パラメーター】
攻撃力・C-
防御力・C-
敏捷性・B-
「ガルコ……もしかして、ガル子ちゃんか!」
「がるるるぅ……?」
ガルコは、名前を呼ばれたことに動揺している。
「さっき怒ったのは、女なのに男扱いされたためか?」
「がるるるぅ……!」
ガルコは、俺の指摘を認めるように声を上げる。
「間違って、悪かったな」
「がるるるぅ?」
「でも、クーデリアを狙ったことは、逆に謝ってもらうぞ?」
「がるるるぅ!」
「謝るつもりはないみたいだから、叩きのめす!」
俺は、捕まえようと距離を詰める。
対してガルコは、逃げようと距離を取る。
「がるるるぅ!」
ガルコは、至近距離から羽を飛ばす。
ヒュン、ヒュン、ヒュン――
それには、俺も対応できない。
「まずい!」
俺の言葉を耳にしたガルコは、勝利を確信する。
「がるるるぅ――」
しかし――
その勝利宣言は、長続きしなかった。
「今だ!」
俺の背中を土台にして、元の姿のゴレタが跳び上がる。
「おりゃ!」
ゴレタの拳と、ガルコの足がぶつかり合う。
勝者は――
ゴレタ!
ガルコは吹っ飛ばされる。
吹っ飛んだガルコは、宙を舞う。
その下に、ゴレタは滑り込む。
そして、頭突きを繰り出す。
ゴン!
「――――!」
ゴレタの突き上げに、ガルコは悶絶する。
「がるるるぅ!」
ガルコは怒ったように、羽を飛ばす。
ヒュン、ヒュン、ヒュン――
「オレが駆けつけた以上、兄貴には指一本触れさせないっすよ!」
ゴレタは、すべての羽を弾き飛ばす。
「――――!」
予想外の結果らしく、ガルコは愕然としている。
「お前だけじゃ、俺を仕留められないぞ」
「――――?」
「なぜなら、お前よりもゴレタのほうが、圧倒的に有能だからだ!」
俺の指摘に対して――
「がるるるぅ!」
ガルコは怒ったように鳴く。
その間に、スラゾウに守られた、クーデリアが到着する。
「貴殿、すまない!」
「話は、後だ。今は、魔物を追い払おう!」
「わかった!」
クーデリアは頷く。
「ご主人、あいつを捕まえて、焼き鳥にしましょ!」
「兄貴、あいつを捕まえて、蒸し鶏にしましょ!」
「お前ら、あいつを捕まえて、唐揚げにするぞ!」
俺たちの目的は一致する。
襲撃の首謀者である、ガルコを捕まえる!
「……がるるるぅ」
ガルコは、羽ばたく。
目的の達成は不可能だと、判断して逃げるつもりらしい!
「捕まえるぞ!」
俺たちは追いかける。
追いかけてくる俺たちに向かって、ガルコは羽を飛ばす。
ヒュン、ヒュン、ヒュン――
「その程度じゃ、時間稼ぎにもならないぞ!」
俺たちは羽を避けながら、ガルコに追いつく。
「がるるるぅ!」
ガルコは鳴く。
「今更、謝罪か?」
謝罪じゃなかった。
それどころか、宣戦布告だった。
ただし、自分を除いて。
要するに――
「マーマンをけしかけて、逃げるつもりか!」
迫って来るマーマンの群れに、ガルコは入り込む。
それに伴い、俺たちはガルコを見失う。
その間に、ガルコは船から飛び立つ。
「がるるるぅ!」
負け犬ならぬ、負け鳥の遠吠えを残して。
「マーマンの群れを排除して、乗員の安全を確保するぞ!」
ガルコの介入がなくなった以上、クーデリアの身の心配は無用。
俺たちは、マーマンの群れを迎え撃つ。
「スラゾウ、槍に変化してくれ!」
「了解!」
「ゴレタ、壊れた箱を〈形成〉してくれ!」
「クーデリア、乗員を守ってくれ!」
「了解!」
俺の指示に、三名は従う。
「うりゃ!」
俺は、スラゾウスピアを突く。
「おりゃ!」
スクラップゴレタは、腕を払う。
目的は――
敵の殲滅じゃなく、敵の撤退。
ガルコとの戦いにより、俺たちは疲れている。
マーマンの群れを殲滅するつもりは、元からなかった。
「一体目!」
一体、また一体、さらに一体――
マーマンを仕留めていく。
「二十体目!」
その数が二十を越えたころ――
マーマンは、海に逃げ帰り始める。
一度目の襲撃とは違い、二度目の襲撃は深追いしない。
サハギンに限らず、マーマンの襲撃も、次はないとわかっているから。
「俺たちの勝利――」
俺の言葉は、途切れる。
『エクストラスキルの兆候を確認しました』
不吉な言葉によって。
「エクストラスキル……みんな、注意しろ!」
直後――
船は、呑み込まれる。
突如、発生した渦によって!
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今回の主役は、ガルコですね。
対抗馬は、ゴレタでしょうか。
活躍するはずのスカーレットは、どこにいるのでしょう?




