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第86話 陸路と海路

 前回のポイント・スラゾウとゴレタの問題は解決した!

「すみません、この村に宿はありませんか?」


 村に着いた俺たちは、宿を求めて歩き回る。

 ただ、さほど歩かないうちに、宿に行き着く。

 

 そこは――


 こじんまりとした、一家経営の宿。


「すみません、この村に医者はいませんか?」


 宿屋と雑貨屋を兼用しているため、保存食を中心に買い求める。

 関連して、ペガサスは治療のため、村の医者に預ける。


 一通りの用事を終えた俺たちは、食堂に当たるテーブルに集まる。


「宿はあるし、医者もいる。その上、宗主の一件は伝わってない」


「ご主人、ご都合主義ですね」


「偶然だろ?」


「兄貴、お約束っすね」


「偶然だろ!」


 俺たち以外に、客はいない。

 宿の関係者も、主人以外はいない。

 俺たちは、安心して今後について語れる。


「クーデリア、宗主が心配なのか?」


「なぜ、そう思う?」


「口数が少ないからさ」


「忘れたのか、私は大食いだぞ?」


「そっちかよ!」


 俺たちは食事を取っている。


 その面々は――


 俺、スラゾウ、ゴレタ、クーデリア、宿の主人。


「それに、祖父に言われているのだ。食事中は、あまりしゃべるな、と」


「マナーの問題?」


「嫁入りの問題らしい。食事中にぺらぺらしゃべると、夫に嫌われるそうだ」


「その割に、ぺらぺらしゃべってないか?」


「貴殿が、話を振ったのだろう!」


 クーデリアは憤慨する。


「君たち、仲がいいね? 婚約者か何かかね?」


 そう口を挟んできたのは、宿の主人。


「トニー殿、我々の関係は、あくまで知人だ」


「知人、ね。友人よりも、知人のほうが仲は発展するらしいよ?」


「トニー殿!」


「こりゃ、失礼!」


 トニーの軽口に、クーデリアは渋い顔になる。


「君たちも、 聖都(せいと)に向かうつもりなのかい?」


「トニーさんも、向かうんですか?」


「一家揃って、向かうつもりだ」


 俺は引っ掛かる。


「全員で?」


「光の御子の聖誕祭に合わせて、重大発表があるそうだ」


「重大発表!」


 俺たちは顔を見合わせる。


「そのため、検問は厳しくなってる。若い二人だと、いろいろ勘ぐられるよ?」


「聖堂教会は、男女の中に厳しいんですか?」


「婚約のない男女に関しては、厳しいね。君たちは、知人に過ぎないんだろう?」


「彼女の祖父を通じて、俺たちは知り合ったんです」


「その人に、会いに行くんだね?」


 俺は頷く。


「いずれにしても、旅は大変だよ? 最近、妙に物騒だし」


「妙に物騒?」


「魔物は出没しているし、騎士団は派遣されているし」


「大丈夫ですよ、何しろ俺は、テイマーですから」


「その場合、厄介だよ?」


 トニーの言葉は、意味深に響く。


「厄介?」


「今、テイマーに対して、厳しくなってるんだ」


「理由は?」


「不明」


 トニーは首を横に振る。


「ただ、テイマーだと知られると、身柄を拘束されるそうだ」


「身柄を拘束……」


「おそらく、密かに身柄を確保したいテイマーがいるんだろう」


「根拠は?」


「身元を確認すると、解放されるそうだ。ただし、監視つきで」


 俺たちは顔を見合わせる。


 その確保したいテイマーとは――


 クーデリアに違いない。


 解放後も監視つきなのは、横のつながりを恐れているんだ。


「他に道はないんですか?」


「もしかして、あのペガサスを使うつもりかね?」


「急いでますから、使うつもりです」


「やめておいたほうがいい、撃ち落されるよ?」


「誰に?」


「騎士団に。さっきも言ったように、テイマーと魔物を警戒しているんだ」


 待ち構えているとしたら、無傷のペガサスでも困難。

 傷を負ったペガサスなら、不可能に近い。


「クーデリア、神々の伝令による突破は、可能だと思うか?」


「無理ではないが、困難だろう」


「その理由は?」


「光の巨人」


 クーデリアの言葉は、不吉に響く。


「倒しただろ?」


「復活する」


「どれぐらい?」


「無限ではないものの、無限に近いほどに」


「マジかよ……」


 俺は嘆息する。


「なぜなら、光の巨人は、光の御子の残した防衛機能だ」


「伝説の武器みたいなもの?」


「武器というよりも、兵器だ。その仕組みは、実は不明だ」


 クーデリアは告白する。


「スラゾウ、ゴレタ、どう思う?」


「胡散臭いですね」


「意味深っすね」


 スラゾウとゴレタは警告する。


「胡散臭い? 意味深? 貴殿、どういう意味だ?」


「何のための守りだ?」


「それは、敵に対するものだろう」


「その敵は、誰だ?」


「それは……」


 クーデリアは言葉に詰まる。


 クーデリアとは違い、俺たちはわかっている。

 その敵は――

 俺、スラゾウ、ゴレタ。


 そう、勇者様関連の面々なんだ!


 クーデリアの予想よりも早く、光の巨人が反応したことも、推測を裏付ける。


 たぶん、光の御子は――

 俺のような異世界人から、この世界を守るために、光の巨人を残したんだ。

 そのため、神々の伝令による光の巨人の突破は、不可能に近いだろう。


「君たちは、聖都に向かいたいんだろう?」


「そうですけど?」


「それなら、船を利用すればいい」


「船?」


「陸路じゃなく、海路を進むんだ」


 トニーは代替案を示す。


「聖域の中に、海があるんですか?」


「海は、外にある。ただし、港を経由できる」


「要するに?」


 俺は先を促す。


「時間と資金はかかるものの、安全に聖都にたどり着ける」


「本当に?」


「海は、聖堂教会の管轄にない。だから、取り締まりは緩いはずだ」


 トニーは指摘する。


「トニーさん、ありがとうございます!」


「どうしたんだね、そんなに喜んで?」


「海ですよ、海! 水着ですよ、水着?」


「はぁ?」


「次回は、いわゆる水着回ですよ!」


 俺ははしゃぐ。


「ご主人、エロですね……」


「兄貴、スケベっすね……」


「貴殿、煩悩の塊だな……」


 俺以外の三名はため息をついた。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 情報収集をメインとした話です。

 思ったよりも重要な要素が出ています。

 伏線として機能してくれることを期待します。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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