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第85話 おやつ

 前回のポイント・墜落したものの、助かった!

 身を隠せる木々の間に向かって、俺たちは歩いている。

 俺はペガサス、ゴレタはクーデリア、スラゾウは荷物をそれぞれ抱えて。


「俺、怪我しているのに、ペガサス担当かよ!」


「ご主人、オイラも荷物を抱えているんですよ?」


「オレは、元のままクーを抱えてるんすよ?」


「本来は、チェンジだろ?」


「また、エロに走って!」


「いつも、スケベなんだから!」


 スラゾウとゴレタは呆れる。


「貴殿、そういうつもりなのか?」


「そんなつもりはねえよ!」


「本当か?」


「本来、俺が荷物、スラゾウがクーデリア、ゴレタがペガサスだろ」


「勇者様が潰れるぞ!」


 クーデリアは憤る。


「一番の問題は――」


 俺は視線をペガサスに向ける。


「お前が、怪我を負ったことだよな?」


「ペガァァァ……」


 ペガサスはうなだれる。


 そう、衝撃と落下の余波のため、ペガサスは怪我を負ったんだ!


「ご主人、脱出成功の功労者を責めるんですか?」


「兄貴、逃走成功の立役者を叩くんですか?」


「責めたくなるし、叩きたくもなるだろ」


「外道ですね!」


「鬼畜っすね!」


「こいつは、思ったよりも役に立ってないだろ!」


 俺は反論する。


「ペガァァァ……」


「貴殿、ペガサスも、活躍している。八つ当たりは、醜いぞ?」


 俺を除く面々の賞賛に、ペガサスは元気を取り戻す。


「それより、今日は野宿か?」


 身を隠せる木々の間に入ったため、俺たちは休憩に入る。


「野宿?」


「クーデリアは、嫌いなのか?」


「貴殿は、好きなのか?」


「好き嫌い以前に、一度もやったことがないね」


「私も、同じだ。野営の類は、祖父から禁止されている」


「お嬢様?」


 俺は首をひねる。


「スラゾウとゴレタは?」


「村に行きましょ!」


「宿に泊まりましょ!」


「そんなに野宿は嫌なのか?」


「絶対――」


「駄目――」


 スラゾウとゴレタは拒否する。


 不審を覚えた俺は、スラゾウから荷物を奪うと、中身を確認する。


 すると――


「……ないぞ!」


 ランプなどの道具は入っている。

 でも、保存食を始めとした食料は、一切見当たらない。

 さらに、水筒の中の水も、ほとんど残っていない。


「衝突時に落ちたんですよ?」


「落下時に潰れたんすよ?」


「お前ら、何を隠してる?」


「ギクッ!」


「ドキッ!」


「心当たりがあるんだろ!」


 スラゾウとゴレタはそっぽを向く。


「そっぽを向く……そういうことか!」


 俺は状況を理解する。


「スラゾウ、ゴレタ、お前ら、おやつ代わりに食料を全部食べただろ!」


「干した肉なんて食べてませんよ……あっ!」


「干した魚なんて食べてないっすよ……あっ!」


 スラゾウとゴレタは、気まずそうに顔を伏せる。


「スラゾウ君、ゴレタ君、先生は悲しいです」


「スラゾウ君?」


「ゴレタ君?」


「この中に、嘘をついてる生徒がいます!」


「嘘じゃなく、ごかましです!」


「嘘じゃなく、言い訳っす!」


 スラゾウとゴレタは主張する。


「それじゃあ、おやつには肉と魚は含まれますか?」


「肉は含まれます……あっ!」


「魚は含まれます……あっ!」


「やっぱり、お前らが食べたんじゃないか!」


 スラゾウとゴレタは俺の肩から降りると、クーデリアの後ろに隠れる。


「本当に心配したんだぞ!」


「怪しんでましたよね?」


「疑ってたっすよね?」


「お前ら……本当にぶん殴るぞ?」


「暴力反対!」


「不当契約!」


 スラゾウとゴレタはプラカードを掲げる。


「お前ら、さすがに今回のことは許さん。肉も魚も、おやつには入らないだろ!」


「貴殿、問題はそこなのか?」


「問題は、そこだ! そうだろ、スラゾウ、ゴレタ?」


 俺は仲間に話を振る。


「肉は、おやつに入ります!」


「魚は、おやつに入るっす!」


「おやつに入るのは、果物だ!」


「ブーブー!」


「プープー!」


「ブーイングしても駄目!」


 スラゾウとゴレタは不満を示す。


「貴殿、果物もおやつに入らないぞ?」


「うん?」


「果物は、果物だろう。おやつは、お菓子に限られるだろう?」


「あん?」


 クーデリアは主張する。


「ご主人!」


「兄貴!」


「お前ら!」


 俺たちは頷き合う。


「スラゾウ、ゴレタ、今日は宿に泊まるぞ。その際、食料を買うぞ」


「肉と魚は、必須ですね!」


「お菓子も、必要っすね!」


「肉も、魚も、果物も、お菓子も、買うぞ!」


 俺たちは、再度行動を開始する。


「貴殿? 勇者様? なぜ、私を放置するのだ!」


「果物をおやつとして認めないやつは、守る意味はないからさ」


「……冗談よね?」


「本気だ! そうだろ、スラゾウ、ゴレタ?」


 スラゾウとゴレタは何度も頷く。


「そういうことだから、遠目に見える村を目指そう!」


 俺の両肩に、スラゾウとゴレタは乗る。

 

 それに合わせて、俺はペガサスを抱える。


「待って! 本当に待って! 果物も、おやつに含まれるから!」


 一人残されたクーデリアは、慌てて追いかけてくる。


「ご主人、あの村に宿はあるんですかね?」


「兄貴、あの村では食料を買えるんすかね?」


「無理なら、タルタルステーキを食べながら、野宿すればいい」


「ペガサス、食べるんですね!」


「ペガサス、食べられるんすね!」


「ペガサスとは、非常食の別名である。ファンタジーの基本だぜ?」


 俺たちが頷き合うと――


「ペガァァァ!」


 ペガサスは悲しげに鳴いた。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 散々引っ張っておいて、こんなオチなのはお約束ですね。

 もし心配してくれた人がいたのなら、申し訳ない。

 ギャグ回なのは、第一章終盤の反動です。

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設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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