幕間3 使者
前回のポイント・タロウは、第一騎士団を退けた!
聖堂教会の第一騎士団は、混乱に陥っている。
「負傷者を運び出せ!」
「医者を呼んできてくれ!」
「聖堂教会に連絡を取るんだ!」
何しろ――
天変地異に巻き込まれ、大半の聖堂騎士とワイバーンは負傷している。
さらに、団長のグレゴールも怪我を負っている。
加えて、騎乗しているスカイドラゴンは、瀕死状態に追い込まれている。
何より――
確実に捕まえられるはずの、暗殺未遂犯を取り逃がしたから。
「災厄に遭遇した気分だな?」
「災厄? 最悪の間違いだろう」
「どっちでも構わないが、現実離れしているな?」
「あぁ、生きているうちに、こんな空を見られるとは思わなかった……」
暗殺者と仲間は見上げている。
終末の日のように、赤々と染め上げられた空を。
「最初の光は、大聖堂でも確認されたそうだ」
「ここから、大聖堂を狙い撃ちできるのか!」
「さすがに無理だろう。何しろ、聖域の守りがある」
暗殺者は冷静に指摘する。
「勇者の役割は、異なるようだ」
「役割?」
「矛と盾だ」
「矛盾、か」
「矛盾?」
仲間は表現に引っ掛かる。
「聖堂教会に伝わっている、古い話だ」
「それが?」
「最強の矛と最強の盾、ぶつけたら、どちらが勝つ?」
「実際にぶつけない限り、わからない」
仲間は慎重に答える。
「この話の教訓は、ありえない、ということだ」
「ありえない?」
「最強の矛も、最強の矛も存在しない」
「当たり前だ」
「だが、現実はどうだ? 最強の矛と最強の盾と、存在するぞ!」
暗殺者は指摘する。
「それに、二名の勇者を従える、異人の少年がいる」
「おそらく、我々を出し抜いた者だろう」
「レプリカとはいえ、ロンギヌスに傷をつけるとは!」
「矛盾を体現する存在が三名……悪夢だな?」
暗殺者と仲間は苦笑いになる。
「暗殺は続けるのか?」
「もちろん、続ける」
「敵は、最強の矛と最強の盾を従えた、規格外の存在だぞ?」
「あの三名は、敵ではない」
暗殺者は指摘する。
「お前は、あの三名に勝てるのか?」
「勘違いするな、我々の狙いはクーデリアだ」
「言われてみれば、クーデリアは無力だ」
仲間は納得する。
「元から、強者の三名とは異なる。隙はあるし、弱点もある」
「あの三名さえ何とかできれば、目的を達成できるだろう」
「いずれにしても、報告しなければなるまい」
暗殺者と仲間は頷き合う。
「これが、報告書だ」
暗殺者は、一枚の紙片を差し出す。
その相手は――
奇妙な鳥。
「さぁ、向かってくれ。我々の主――光の御子の下へ!」
次回は、第三部第二章になります。
一区切りですから、評価を入れてくれるとありがたいです。
それでは、奇妙な鳥の活躍を期待しつつ、次の機会に!




