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第83話 救いの光と滅びの光

 前回のポイント・最強無敵チートを発動した!

「そんな馬鹿な……」


 渾身の一撃を受け止められた上、武器を破壊されたグレゴールは後ずさる。


「スラゾウ、ゴレタ、大丈夫か?」


「大丈夫ですよ?」


「大丈夫っすよ?」


「本当に?」


「まったく痛くないですね!」


「ちっとも疲れてないっすね!」


 スラゾウとゴレタは、元気よく跳びはねる。


 どうやら、俺のエクストラスキルには、副次効果があるらしい。


 具体的には――


 怪我は治る。

 疲労も消える。


 そう、痛みが消えたんじゃない、傷が消えたんだ!


「それが、エクストラスキルだと!」


 グレゴールは驚愕している。


「驚愕すること?」


「驚愕することだ」


「どうして?」


「それは、断じてエクストラスキルなどではない」


「なら、なに?」


「奇跡」


 俺たちは顔を見合わせる。


「奇跡?」


「エクストラスキルとは、存在の限界を引き出すものだ」


「俺のも、そうでしょ?」


「お前のそれは、限界を超えている」


「俺の?」


「人の」


 俺たちは息を呑む。


「人智を超えた力。お前のそれは、まさに奇跡」


神曲(ダンテ)と言うらしい」


「神の力だとしたら、納得できる」


 グレゴールは大仰に頷く。


「奇跡? 神の力? 貴殿とグレゴール殿は、何を言い合っているのだ?」


 ペガサスをなだめていた、クーデリアは戸惑う。


「端的に言うと、勇者様御一行」


「要するに?」


「君は、世界を敵に回しても構わないような、心強い味方を得たんだよ」


「心強い味方……」


 クーデリアは感慨深げに呟く。


「俺たちのことはいいから、ペガサスの騎乗に専念してくれ」


「わかった」


 俺の指示に、クーデリアは応じる。


「神の力を前にして、君はどうする?」


「たとえ敵が神の力を振るおうと、戦わなければなるまい」


「それが、任務だから?」


「それが、使命だからだ!」


 グレゴールは覚悟を決めるように叫ぶ。


 その言葉に前後して――


 ワイバーンの群れが、近づいてくる。

 どうやら、体勢を立て直したらしい。

 このままだと、遠くないうちに追いつかれる。


「ゴレタ、〈雷神の鉄槌〉(トールハンマー)を上空に撃ってくれ!」


「上空ですね、了解!」


 ゴレタは頷く。


〈雷神の鉄槌〉(トールハンマー)!」


 直後――


 雷神と化したゴレタの全身から、極太の雷が放たれる。


 それは、一見すると無意味に見える。

 でも、実際は意味がある。


 なぜなら――


 空は、光に包まれる。

 地上は、闇に覆われる。


 変化は、表面上に留まらない――


 空に、乱気流が巻き起こる。

 地上に、地鳴りが響き渡る。


 トールハンマーの一撃は、天変地異を引き起こしたんだ!


「救いの光……」


「滅びの光……」


 クーデリアとグレゴールの感想は相反する。


「救いの光?」


「滅びの光?」


「お前らの力に対する、聖堂教会の見解だろ」


「何も救ってないですよね?」


「何も滅ぼしてないっすよね?」


「理解できないと、怖いだろ? だから、安心するために、理由付けするんだよ」


 俺は苦笑する。


「どうやら、勇者様御一行であることは、間違いないようだ」


「見逃してくれるの?」


「見逃せるわけがないだろう」


「それなら、どうする?」


「お前のことは、嫌いではない。それでも、倒す」


「俺も、君のことは嫌いじゃない。だからこそ、倒す」


 俺とグレゴールは向かい合う。


「グレゴール団長、レプリカを!」


 ワイバーンに乗った騎士の一人が、武器を投げてよこす。


 それは――


 一本の槍。


 ハンマーに比べると、短い上に細い。

 そのくせ、ハンマーとは比べ物にならないぐらいの威容を誇る。


「ロンギヌスレプリカ……これなら、いける!」


 受け取ったグレゴールは、槍を突き出す。


 危機感を覚えた俺は、とっさに拳を突き出す。


 同時――


 俺とグレゴールの間に。

 ひいては、ペガサスとスカイドラゴンの間に。


 爆発的に、力が膨れ上がる!


 打ち勝ったのは――


 俺。


「ロンギヌスレプリカに、亀裂が入っただと!」


 グレゴールは絶叫する。


「それだけじゃないぜ!」


 俺の攻撃は、槍の一撃を相殺し、なおかつグレゴールに突き刺さる。


「ぐはっ!」


 グレゴールの全身甲冑がひしゃげる。

 さらに顔の部分は吹っ飛び、素顔が見える。


 それは――


 予想に反さない、精悍な容姿。

 それが、驚きに染まっている。


「まずい!」


 それでもなお、グレゴールは俺の攻撃を受け流す。


 グレゴールとは違い、スカイドラゴンは攻撃を受け流せない。


 俺の攻撃を受けたスカイドラゴンは――


 バーン!


 爆発するように、弾ける。


 それに伴い、グレゴールは落下する。


「うおおぉぉ――」


 勢いそのままに、グレゴールは地面に落下する。

 その落差は、数百メートル以上。


 それでいて、見事に着地している。

 ただ、俺の攻撃によるダメージは大きいらしく、その場に崩れる。


「また会おう、グレゴール!」


 俺は強敵に賞賛を向ける。


 その時――


 俺は、気づく。


 空を見上げるものの中に、奇妙な鳥がいることを。


「ご主人?」


「兄貴?」


「奇妙な鳥がいるぞ!」


 俺たちは、鳥を見下ろす。


「念のために調べてみるぞ」


 スラゾウとゴレタは頷く。


「〈異世界王〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界王〉の指定効果、発動』


 言葉が響き、文字が浮かぶ。


 【ステータス】


 ネーム・不明

 クラス・不明

 ランク・不明

 スキル・不明


 【パラメーター】


 攻撃力・不明

 防御力・不明

 敏捷性・不明


「【ステータス】、【パラメーター】、ともに不明だ。ただし、野良だ」


「不明?」


「野良?」


 俺たちは首をひねる。


「それより、この場を去ろう」


 俺たちは頷き合う。


「スラゾウ、〈神々の伝令〉(モードヘルメス)を発動してくれ!」


「了解!」


 スラゾウは頷く。


〈神々の伝令〉(モードヘルメス)!」


 直後――


 上空に、神々の伝令が降臨する。


「このまま、一気に大聖堂までたどり着くぞ!」


 同時――


 神々の伝令は、聖堂教会の本部である、大聖堂に向かって飛び立つ。


 俺たちを興味深げに見上げる、奇妙な鳥を残して。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 エクストラスキルの副次効果は、最初からありました。

 ただ、二度ともその効果を発揮する機会がなかっただけです。

 そういう意味では、タロウたちは元からかなり強いですね。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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