第８２話 竜騎士グレゴール
前回のポイント・スカイドラゴンの攻撃をしのいだ！
ブオォ！ ブオォ！ ブオォ！
突風をまといながら、スカイドラゴンは突っ込んでくる。
その背中には、グレゴールが立っている。
それは、まさに仁王立ち。
俺たちは立ち竦んだみたいに、その場に留まっている。
「スラゾウ、迎撃するぞ！」
「了解！」
スラゾウバリスタから、薪の束を撃ち出す。
ヒュン！
音を立てながら、それはグレゴールにぶつかる。
だが――
「ふん！」
グレゴールはよろめかない。
ウィンドゴレタによる、風の道が崩れているから。
その原因はもちろん、スカイドラゴンの飛翔。
「一撃目！」
グレゴールは、背よりも長く、体よりも大きいハンマーを払う。
「クー、危ない！」
「ゴレタ様……？」
クーデリアを守るように、ゴレタは立ちふさがる。
ドゴン！
爆発したような音。
異様なのは音に留まらず、威力も。
ウィンドゴレタが、ペガサスの最後尾まで吹っ飛ばされる！
「ゴレタ！」
「……大丈夫っす」
ゴレタの〈形成〉は、解除されている。
グレゴールの一撃は、風の鎧を吹っ飛ばしたんだ！
「二撃目！」
グレゴールは、ハンマーを突く。
「クー、危ない！」
「スラゾウ様……？」
クーデリアを守るように、スラゾウは大盾に変化する。
ドゴン！
再度、爆発したような音。
吹っ飛んだスラゾウは、ゴレタに受け止められる。
それに伴い、変化は解除され、元に戻る。
「スラゾウ！」
「……大丈夫です」
ゴレタと同じく、スラゾウの声も弱々しい。
「スラゾウ、ゴレタ、本当に大丈夫か？」
「本当は、大丈夫じゃないですね」
「本当は、大丈夫じゃないっすね」
スラゾウとゴレタは本音を口にする。
その様子からして、傷こそないものの、痛みはある。
それも、かなりの痛みが。
「ゴーレムは、潰した。スライムも、潰した。次は、テイマーだ」
「そう簡単に潰されないよ？」
「生身で私の一撃に耐えられると、思い上がっているのか？」
「試してみろよ？」
俺は挑発する。
「三撃目！」
グレゴールは、ハンマーを振り下ろす。
俺にじゃなく、ペガサスに向かって！
「やらせるかよ！」
俺は両腕を交差させると、ペガサスを守る。
ドゴン！
「ペガサスを守ったのか？ だが、無事では済まないぞ？」
「無事だぜ？」
俺は両腕を払うようにして、グレゴールのハンマーを弾き飛ばす！
「鋼鉄製の城門を粉砕する、私の一撃をやり過ごすとはやるな！」
「それ、先に言ってくれない？」
「言っても言わなくても、同じだ。どうせ、受け止めたのだろう？」
「そりゃ、受け止めるさ。そうしないと、クーデリアは捕まるんだから」
俺は笑う。
「他人の心配よりも、自分の心配をするべきだな。――次は、死ぬぞ？」
「死なない、いや、死ねない。こいつらのためにも！」
俺は、スラゾウとゴレタを見る。
「ご主人！」
「兄貴！」
「心配するな、絶対に生き残る！」
俺は宣言する。
「クーデリア、ペガサスを動かしてくれ！」
「ペガサスを動かす？」
「町の外に向かってくれ！ このままだと全滅する！」
「わかった！」
クーデリアはペガサスの手綱を握ると、町の外に向かう。
「私から、逃れられると思っているのか！」
言葉通り――
スカイドラゴンは、ペガサスに追いすがる。
「四撃目！」
グレゴールは起用にハンマーを回転させると、その力を乗せて振り下ろす。
ドゴン！
四度目の攻撃は、尋常じゃない威力。
それに伴い、俺はペガサスごと吹き飛ばされる！
「ご主人！」
「兄貴！」
「……大丈夫だ」
「左手、伸びてますよぉ！」
「右手、曲がってるっすぅ！」
「……大丈夫じゃないけど、大丈夫だ」
俺は無理やり笑う。
「私の攻撃を四度もやり過ごすとは、全員優秀だな」
「褒めてくれて、ありがとう、とでも言えばいいの？」
「隷属のルイスを討ったのは、お前たちだろう？」
「討ったのは、顔見知りの元山賊だよ」
俺は時間を稼ぐ。
「追い詰めたのは、お前だろう。お前以外、該当者はいない」
「そうだとしたら？」
「惜しいな」
「惜しい？」
「お前は、これから死ぬからだ。――時間稼ぎなど無意味だぞ！」
スカイドラゴンは、突っ込んでくる。
ペガサスは逃げるものの、追いつかれる。
「五撃目！」
グレゴールはハンマーを大きく振りかぶる。
今度こそ、決めるつもり！
「さらばだ、キラタロウ！」
その声は、死刑宣告のように響く。
「ご主人？」
「兄貴？」
「貴殿？」
俺を心配する声が重なる。
「みんな、心配するな、俺は打ち勝つ！」
俺は微笑む。
「エクストラスキル発動！」
次の瞬間――
世界は、文字通り一変する。
『〈異世界王〉の効果、発動』
脳裏に言葉が響き、虚空に文字が浮かぶ。
【ステータス】
ネーム・タロウ
クラス・キングテイマー
ランク・ＮＦ
スキル・異世界王∞
エクストラスキル・ 神曲
【パラメーター】
攻撃力・∞（限界突破）
防御力・∞（限界突破）
敏捷性・∞（限界突破）
【ステータス】
ネーム・スラゾウ
クラス・スライムオリジン
ランク・ＮＦ
スキル・神化∞
エクストラスキル・ 神々の伝令 戦女神の加護
【パラメーター】
攻撃力・∞（限界突破）
防御力・∞（限界突破）
敏捷性・∞（限界突破）
【ステータス】
ネーム・ゴレタ
クラス・ゴーレムオリジン
ランク・ＮＦ
スキル・神成∞
エクストラスキル・ 必滅の神槍 雷神の鉄槌
【パラメーター】
攻撃力・∞（限界突破）
防御力・∞（限界突破）
敏捷性・∞（限界突破）
「何、だと！」
グレゴールはうめく。
ハンマーの一撃を、俺に受け止められて！
「待ってたのは、町の外に出ることだ。これなら、遠慮なく力を使える！」
俺は痛みのなくなった手で、巨大なハンマーを握り潰した。
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グレゴールは強いです。
ただ、本来ならまともに戦えます。
まともに戦えないのは、場所が悪いせいです。
