第80話 合体カタパルト
前回のポイント・グレゴールの配下に見つかった!
上空に避難したのに、敵に遭遇する。
予想外じゃないものの、厄介な事態。
俺は後ろ向きになり、ペガサスの後部に移動する。
「貴殿、どうするつもりだ?」
「迎撃する」
「迎撃? 聖堂騎士を敵に回すのか!」
クーデリアは咎める。
「とっくに、敵だよ? 問題は、和解の可能性が零じゃないこと」
「和解できるのか!」
「君を無事に大聖堂に送り届けて、宗主が復権した後なら可能だろう」
俺は言葉に含みを持たせる。
「言い換えれば、今は不可能?」
「今の君は、宗主の孫じゃない。宗主暗殺未遂の、実行犯だよ?」
「それは……」
クーデリアは言葉に詰まる。
「ご主人、クーに対して、厳しいですよ?」
「兄貴、クーに対して、冷たいっすよ?」
「現実を突きつけてるだけだよ」
「言葉を選びましょ?」
「態度を偽りましょ?」
「それも、そうだな」
スラゾウとゴレタの意見には、一理ある。
俺は表情を引き締めたまま、言葉を緩める。
「ジャイアントアントと同じく、適当に蹴散らすつもりだ」
「適当に蹴散らす?」
「言っただろう、迎撃する、と。殺し合いは、避けたいところだ」
「……わかった、貴殿に任せる」
クーデリアは渋々受け入れる。
「迎撃するためには、情報が必要だろう」
俺は、迫り来る竜騎兵に視線を向ける。
『〈異世界王〉の指定効果、発動』
言葉が響き、文字が浮かぶ。
【ステータス】
クラス・パラディン
ランク・E
スキル・聖騎士E 身体強化E 精神耐性E
エクストラスキル・不明
【パラメーター】
攻撃力・E+(マイナス補正)
防御力・E+(マイナス補正)
敏捷性・E-(マイナス補正)
「騎士は、Eランクのパラディンだ」
「クーより、下ですね」
「クーは、エリート?」
「血縁関係を別にしても、宗主直属なんだから、エリートだろ」
「エリートっぽくないですよね?」
「むしろ、ポンコツ感あるっすね」
スラゾウとゴレタは酷評する。
騎士に続いて、飛竜――
クラス・ワイバーン
ランク・D
スキル・飛行D 抵抗D 適応D
エクストラスキル・不明
【パラメーター】
攻撃力・D-(プラス補正)
防御力・D-(プラス補正)
敏捷性・D-(プラス補正)
「飛竜は、Dランクのワイバーンだ」
「乗ってる人よりも、乗られてる魔物のほうが、上なんですね」
「今回の場合、本当に厄介なのは、人間じゃなく魔物なんすね」
「人馬一体として考えると、両方とも厄介だろう」
「でも、明確な対抗策がありますよね!」
「飛竜を狙い撃ちして、落としちゃいましょ?」
スラゾウとゴレタは指摘する。
「それは、俺も考えた。でも、可能か?」
検討の間にも、状況は悪化している。
ペガサスの〈飛行〉スキルは、A。
対するワイバーンの〈飛行〉スキルは、C。
二ランク以上の差がある。
そのくせ、距離は徐々に、それでいて着実に縮まっている。
その理由は――
「重いからだろうな」
「貴殿、私は太っていないぞ!」
「俺、スラゾウ、ゴレタ、クーデリア、荷物……載せ過ぎなんだよ」
「そういうこと、か」
クーデリアは安心する。
「どうして、安心してるの?」
「……安心などしていないぞ?」
「ははぁ、君、最近太り出したんだろ!」
「貴殿、地面に蹴り落とすぞ!」
クーデリアは憤慨する。
「ご主人、女性に体重の話は禁物ですよ?」
「兄貴、レディーファーストを心がけましょ?」
「お前らに言われたくない!」
スラゾウとゴレタは呆れる。
「問題は――」
ワイバーンを撃ち落せるのか?
不可能じゃないものの、困難だろう。
「スラゾウ、投石器じゃなく、投石機になるのは無理そうか?」
「無理じゃないですけど、難しいですね」
「具体的には、どう難しい?」
「オイラだけだと、再現し切れないんです」
「それなら、合体すればいい」
「合体?」
スラゾウは驚く。
「ゴレタ、荷物の中の薪を利用して、体を大きくしてくれ」
「いいけど、さらに遅くなるっすよ?」
「構わない、迎え撃つつもりだ」
「迎え撃つ?」
「お前たちは合体して、カタパルトになるんだ」
「合体?」
ゴレタも驚く。
「手順を示すぞ? スラゾウは上、ゴレタは下、カタパルトになってくれ!」
「はい!」
「ほい!」
瞬く間に、簡易型のカタパルトが出来上がる。
もちろん、正体はスラゾウとゴレタ。
組体操しているようなものだ。
「スラゾウ、ゴレタ、大丈夫そうか?」
「大丈夫ですけど、長時間は無理ですね」
「大丈夫だけど、耐久性と命中率に難があるっすね」
「それなら、問題ない。形成用の石を飛ばすぞ!」
カタパルトに、形成用の石をセットする。
「行きますよ!」
「行くっすよ!」
スラゾウとゴレタの掛け声に従い――
ポーン!
カタパルトは、形成用の石を撃ち出す!
それは、弧を描きながら落下し、ワイバーンに直撃する。
「――――!」
声にならない声を上げて、ワイバーンは墜落する。
「続けて行くぞ!」
ポーン! ポーン! ポーン!
カタパルトから、形成用の石が次々と飛ぶ。
それは、当たる時もあれば、外れる時もある。
目的は、牽制重視の迎撃――
第一騎士団の隊列は、見事に崩れる。
それどころか、危険を察知して距離を取る。
「よし、今のうちだ。町の外に向かうぞ!」
指示した通り――
ぺガスは、距離を稼ぐ。
追跡を振り切ったこともあるけど、形成用の石を撃ち尽くしたこともある。
あっという間に、町の外が近づいてくる。
このまま抜けられるかと思われた時――
「ペガァァァ!」
ペガサスは、急停止する。
思わず、俺たちは前のめりになる。
「どうした?」
直後――
前方の空間が、歪む。
突風が、起こったんだ!
「風の攻撃……?」
俺たちは顔を見合わせる。
「風のブレスだ。ペガサスが止まったのは、命の危機を覚えたからだろう」
威圧するように、その声は響き渡る。
声の主は――
巨大なドラゴンに乗った、全身甲冑の騎士。
「グレゴール!」
俺は相手の名前を呼んだ。
読んでくださって、ありがとうございます。
ブックマーク等の応援、ありがとうございます。
簡易カタパルトは、いわゆる「合体技」です。
面白そうだから、試してみました。
今後も、必要に応じて「合体技」を繰り出すかもしれません。




