第8話 ゴメス
前回のポイント・王都からの馬車は、盗賊に襲われた!
後ろに、大きく跳ぶ。
直後――
俺の首があった空間を、刃が抜けていく!
「頭の攻撃を、避けやがった!」
子分たちは驚愕する。
避けられたのは、来るとわかっていたから。
予想と異なるのは、相手の実力。
盗賊の親分は、ハウンドよりも明らかに強い。
「一撃ぐらいは避けられる、いちいち騒ぐな!」
「頭、俺たちは、どうすればいいんで?」
「被害を出してもつまらん、もしもの時だけ手を貸せ!」
親分は指示を下す。
親分の指示に、子分たちは安堵した様子。
もっとも、一番安堵したのは俺。
加勢がないのは、ありがたい。
子分に指示している間も、親分は油断なく剣を構える。
その姿は、さまになっている。
それこそ、ケインに比べてもはるかに。
「俺の本当の名前は、タロウ。あんた、名前は?」
「異人なのは、間違いないのか? 俺は、ゴメス」
俺たちは名乗る。
名乗ったのは、真剣勝負だから。
勝つか、負けるか、じゃない。
生きるか、死ぬか、だ。
「これ、使って!」
フェルの声とともに、俺の前に剣が飛んでくる。
「仲間、だと?」
「仲間、だよ!」
俺は剣を拾い上げると、それらしく構える。
「捕まった連中を助け出すために、囮になったのか?」
「ご名答」
「たとえ助け出したとしても、逃げ出せるとは限らないぞ」
「あんたさえ倒せれば、問題は片付く」
「俺からすると、貴様さえ倒せれば問題は片付く」
俺の挑発に、ゴメスは乗る。
「勝てばいいんだよ」
「素人のくせに、俺に勝つ? ははっ、笑わせるな、小僧」
俺たちは距離を取ったまま、睨み合う。
武器を手に入れても、状況が好転したとは思えない。
切り札を試してみよう。
「〈異世界博士〉の効果により、対象の情報を把握する」
俺は宣言する。
『〈異世界博士〉の指定効果、発動』
言葉が響き、文字が浮かぶ。
【ステータス】
ネーム・ゴメス
クラス・バンデット
ランク・E-
スキル・なし
【パラメーター】
攻撃力・F+
防御力・F+
敏捷性・G-
気づいたのは――
一、力量差はあるのに、様子見している。
二、体の重心は、左に偏っている。
三、一度目の際、率先して逃げたのに遅かった。
「右の足に、傷を負ってるみたいだね?」
「……よくわかったな?」
「踏み込みが甘いのは、そのため?」
「だから、勝てる? 思い上がるな!」
ゴメスは一気に距離を詰めると、剣を突き出してくる。
その攻撃を予測していた俺は、大きく後ろに下がる。
「避けてるだけだと、いつまでたっても倒せないぞ」
「そんなことは、わかってる」
「わかってる? そのうち動けなくなるぞ」
「そんなことは――」
俺の言葉は遮られる。
「わかってない」
「わかってない?」
「そうなったら、守りたいものを守れなくなるんだぞ」
ゴメスは挑発してくる。
警戒しながら、振り向く。
陣地の柵越しに、フェルを始めとした人たちの姿が見える。
全員、元気そうだけど、気がかりな様子。
俺たちの勝負の間に、彼らの脱出は可能?
不可能。
彼らの中には、体力のない者も、怪我を負った者もいる。
「そんなことは、わかってる!」
俺は一歩踏み込むと、剣を払う。
ゴメスはニヤリと笑うと、刃をものともせずに踏み込んでくる。
俺は、慌てて後ろに下がる。
そこに、ゴメスは踏み込んでくる。
下がろうとして、俺は積荷にぶつかる。
「終わりだ!」
ゴメスは止めを刺すべく、大降りの一撃を放つ!
追い詰められた俺に、その一撃を食い止めるすべてはない。
そう、俺には。
「今だ、やれ!」
その指示に従い、草木にまぎれたスラゾウは、ゴメスの右足を払う。
「何、だと!」
傷を負った右足を払われたゴメスは、体勢を崩す。
俺は、その隙を見逃さずに剣を払う。
果たして――
俺の剣は、ゴメスの剣を弾き飛ばす!
「うまい、勝利だ!」
「きたね、反則だ!」
後ろから歓声が、前から罵声が、それぞれ上がる。
「一人だと言った覚えはないぜ!」
俺は会心の笑みを浮かべる。
ゴメス攻略法は、元から用意しておいたものです。
そのため、作者は苦労しませんでした。
苦労したのは、ゴメスの弱点表記です。
当初は、「メモ」として〈異世界博士〉の能力の一つでした。