第78話 作戦変更
前回のポイント・ジャイアントアントの生き残りと遭遇した!
魔物の目的は、俺たちの排除。
もちろん、生死を問わず。
「どうする?」
「貴殿、戦う以外の選択肢はあるのか?」
「避ける、逃げる……むしろ戦う選択肢はあるのか?」
「ジャイアントアント程度なら、病み上がりの私でも遅れを取らないぞ?」
「そうなんだけど――」
「来るぞ!」
クーデリアは警告する。
「スラゾウ、ゴレタ、起きろ!」
「干した肉は、もう食べれませんよぉ」
「干した魚は、もう食べれないっすぅ」
「干した肉? 干した魚? お前ら、何言ってるんだ?」
「……夢です」
「……夢っす」
スラゾウとゴレタは慌てる。
「それより、敵が来る。敵は、ジャイアントアントの生き残りだ」
「野良ですか?」
「それとも、契約済みっすか?」
「契約済みだ。おそらく、敵は聖堂騎士団じゃない――」
俺の言葉は、途切れる。
「シャァァ!」
殺到するジャイアントアントを前にして!
「敵の群れだぞ? どうするのだ!」
「クーは、下がってて!」
「クーは、待ってて!」
「勇者様……?」
クーデリアは困惑する。
「敵は、俺たちに任せろ。――スラゾウ、ゴレタ、迎撃するぞ!」
俺はスラゾウソードを構えると、ジャイアントアントを切り捨てる!
ゴレタは肩から飛び降りると、ジャイアントアントを蹴り飛ばす!
ともに、一撃。
二体のジャイアントアントは、光に包まれ、消える。
「ジャイアントアントとはいえ……一撃!」
「驚くこと?」
「貴殿、思ったよりも強いのか?」
「俺は、思ったよりも強いよ。それに、勇者様は思った以上に強いよ」
クーデリアの反応に、俺たちは喜ぶ。
「スラゾウ、ゴレタ、適当に敵を蹴散らすぞ」
「適当?」
「蹴散らす?」
「敵のスキルの中に、〈警戒〉と〈追跡〉がある」
「増援が、来るんですね!」
「本命が、来るんすね!」
スラゾウとゴレタは、即座に状況を理解する。
一方――
「増援? 本命?」
クーデリアは首を傾げる。
どうやら、状況を理解できないらしい。
「聖堂騎士は、思ったよりも使えないのか?」
「クーは、騎士というよりも事務なんでしょ」
「クーは、実践経験に乏しいんすよ」
「いずれにしても、そこまで期待はできない、か」
俺は頷く。
「貴殿、何を言っている?」
「君は、自分の身を守っていてくれ!」
困惑しているクーデリアを置いて、俺たちは本格的に戦闘を開始する。
「食らえ!」
俺は、スラゾウソードを払う!
「邪魔!」
ゴレタは、拳を振り抜く!
俺たちの攻撃は――
そのたび、敵を仕留める。
それに伴い、周囲は光に包まれる。
この光も、敵の目を引きつけてしまうんだ。
「貴殿、敵が逃げるぞ!」
「よし、退こう」
「退く?」
クーデリアは驚く。
「厳密に言うと、敵は逃げたんじゃない、退いたんだ」
「退いただけ?」
「戻ってきた時には、味方をわんさか連れてくるよ」
クーデリアは頷く。
「クーデリア、こっちだ!」
俺は方向転換すると、クーデリアに呼びかける。
「このまま進んでも、敵に囲まれるだけだ」
「それなら、戻るのか?」
「戻らない。もしもの場合に備えた、作戦二がある」
「作戦二?」
クーデリアは引っ掛かる。
「先を進みながら、話そう」
俺たちは頷き合うと、走り出す。
「貴殿、説明を頼む」
「地下道を通って、町の外に出るのが作戦一」
「作戦二は?」
「敵の待ち伏せに備えて、一度、地上に出るのが作戦二」
「ギルドの方々に頼んだのは、作戦二の仕込みか!」
クーデリアは驚愕する。
「貴殿、この状況を予測していたのか?」
「予測してたんじゃない、警戒してたんだ」
「その理由は?」
「敵は馬鹿じゃないと、判断したんだよ」
俺は指摘する。
会話の間も、目的の場所に向かって走っている。
「スラゾウ、ゴレタ、元気そうで安心したぞ」
「どうして、心配してたんです?」
「どうして、安心したんすか?」
「しばらく、本調子じゃなかっただろう?」
「……眠かったんですよ」
「……疲れてたんすよ」
スラゾウとゴレタはそっぽを向く。
「貴殿、勇者様に嫌われているぞ?」
「嫌われてるんじゃない、避けられてるんだ。――どうして?」
クーデリアの指摘に、俺は頭を悩ませる。
そうしているうちに、目的地に着く。
そこは――
昨日、地下に降りる際に利用した、元盗賊の拠点。
そこから、建物の中を通り、地上に出る。
待っていたのは――
「ケインさん! それに、ドーソンさん!」
待っていたのは、二名。
兵士の巡回を指揮しているはずの、兵士長のケイン。
それに、城門の封鎖を決定した、評議会議長のドーソン。
どういう組み合わせ?
「もしかして、目的は俺たちの身柄?」
二人は首を横に振る。
「もちろん、恩人の協力要請に応じるためだ」
「恩人?」
「君は、この町を救ってくれただろう?」
ケインとドーソンは微笑む。
「これは、私からの餞別だ」
ケインが示したのは、武具一式。
「これは、私からの餞別だ」
ドーソンが示したのは、翼のある馬。
「俺に?」
俺は首をひねる。
「君たちに」
ケインとドーソンは言葉を言い換える。
「さぁ、ペガサスに乗って、旅立つんだ!」
俺たちは頷き合うと、ペガサスに歩み寄った。
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二つの作戦は、どちらも最初から思いついていました。
ただ、どちらを使うのか迷いました。
結果、両方とも使うことにしました。




