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第75話 ギルドへ

 前回のポイント・聖堂騎士は、城門の封鎖をもくろんだ!

 場所は、宿の一角。


 食堂のテーブルに、一同は集まっている。


「調べてみたら、北の門は閉まってたわ」


 エリザは報告する。


「調べてみたら、南の門も閉まってたよ」


 アンナは報告する。


「調べてみたら、東の門は閉まっていましたね」


 ネイトは報告する。


「調べてみたら、西の門は閉まっていましたよ」


 ハンナは報告する。


 どうやら、城門は閉ざされたらしい。


 おそらく、聖堂騎士団の要請によって。


「出入りは、制限されたね。目的は、君の身柄の確保だろう」


「そうまでして、仲間の身柄を確保したいのか?」


「仲間の身柄というよりも、罪人の身柄だろう」


「私は、罪人などではない!」


「少なくとも、聖堂騎士団の対応は、罪人に対するものだ」


「それは……」


 クーデリアは言葉に詰まる。


「情報を集めるためにも、ギルドに向かうべきだろう」


「ギルドに?」


「ギルドなら、安全だ」


「聖堂騎士も、テイマーだぞ?」


 クーデリアは心配する。


「おやっさんがいる。そう易々とは、手を出せないよ」


「おやっさん?」


「そこにいる、エリザの父親だよ。それに、マリーさんもいる」


「ギルドマスターと受付嬢……そんなにも頼りになるのか?」


「どっちも、有能だよ。性格面を抜かせば」


「貴殿こそ、性格面に問題があるぞ?」


 クーデリアは苦笑する。


「みんな、いろいろありがとう。俺たちは、これからギルドに向かう」


 俺の言葉に、宿に残る四名は頷く。


「もしクーデリアの件を問い詰められたら、俺の独断だと言ってくれ」


「貴殿――」


「グレゴールなら俺の意図を読めるから、君たちに迷惑はかからないはずだ」


「大物なのか小物なのか、有能なのか無能なのか、よくわからないな?」


 クーデリアは感心する。


「それじゃあ、行ってくる!」


 そう言い残して、俺たちは宿を出る。


「ご主人、蒸し暑いんですけど?」


「兄貴、薄暗いんすけど?」


「我慢しろ、お前らは目立つ」


「そういうご主人も、目立ちますよね?」


「兄貴こそ、目立ちまくりっすよね?」


「だから、俺も、クーデリアも、フードをかぶってるだろ」


 そう、俺とクーデリアはフードを目深にかぶり、顔を隠している。

 また、スラゾウとゴレタは、おなじみの皮袋の中に隠れている。


「臭いですね」


「狭いっすね」


「臭いのも、狭いのも我慢しろ。何なら、おやつでも食べてろ」


「ブーブー!」


「プープー!」


「ブーイングするな、気づかれるだろ!」


 会話の間も、ギルドを目指して進んでいる。


 人の数自体は、いつもと変わらない。

 それでいて、通行人はまばら。

 みんな、城門の封鎖に戸惑っているんだ。


「いつまで城門を封鎖するつもりだ?」


「なぜ、そんなことを気にするのだ?」


「城門の封鎖は、生活に支障をきたす。そう長々とできるものじゃない」


 俺は指摘する。


「その場合、どうなる?」


「グレゴールは、今日のうちに決着をつけるつもりだろう」


「要するに?」


 クーデリアは結論を求める。


「俺たちは、今日のうちにボードレスを抜け出す必要がある」


「そうしないと?」


「全員、さようなら。程度の差はあっても、厳罰は免れないだろう」


 俺の言葉は、陰気に響く。


「オイラ、勇者ですよ?」


「オレも、勇者っすよ?」


「今回の陰謀と勇者の招待と無関係なら、俺たちは特別待遇だろう」


「無関係じゃないなら?」


「むしろ、本命なら?」


「それこそ、俺たちは絶体絶命だろう」


 皮袋から、スラゾウとゴレタの驚いた声が漏れる。


 一連の会話の間も、警戒は続いている。


 警戒の対象は、要所に詰めている聖堂騎士に限らない。

 道を行き交う兵士も、テイマーの魔物も、警戒している。

 いずれも、聖堂教会の指示に従い、クーデリアを探しているから。


「本当にギルドは、安全なのか?」


「少なくとも、おやっさんとマリーさんは味方だ」


「貴殿の味方でも、私の味方とは限らないぞ?」


「その二人は、融通が利くんだよ」


 俺は反論する。


「それより、グレゴール殿の目的は、私の身柄の確保なのだろう?」


「今更、前提の確認?」


「それは、悪い意味ではなく、いい意味の可能性はないのか?」


「宗主の孫娘の安否を気遣っている?」


「普通は、そういうことだろう?」


 クーデリアは主張する。


「普通、ね」


「貴殿、含みのある反応だぞ?」


「普通、宗主から、救援要請が届くのか?」


「それは――」


「普通、宗主の孫娘が、命を狙われるのか?」


「それは――」


 クーデリアは言葉を呑む。


「ご主人、クーに対して、厳しいですね?」


「兄貴、クーに対して、冷たいっすね?」


「そりゃ、そうだろ。俺たち、巻き込まれただけだし」


「さっきと言ってること、違いません?」


「恩を着せて、報酬を吊り上げるつもりっすね?」


「……お前ら、よくわかるな」


 皮袋から、スラゾウとゴレタの呆れた声が漏れる。


「貴殿、報酬を要求するつもりなのか!」


「当たり前だろ」


「当たり前?」


「俺は、ただ働きはご免だぜ」


「貴殿には、か弱き乙女を救おうとする、義侠心はないのか?」


「そんなものはない!」


 俺は言い切る。


「宿の代金も、俺持ちなんだぜ? 報酬は、絶対に貰うぞ」


「私は、無一文だぞ? まさか、体を――」


「馬鹿! そんなもん、狙うかよ!」


「貴殿、私に魅力はないと言いたいのか!」


「そういうことじゃねえよ!」


 俺とクーデリアは激しく言い合う。


「ご主人、クー、目立ってますよ?」


「兄貴、クー、変装の意味、ないっすよ?」


 スラゾウとゴレタは呆れる。


 そうしているうちに、俺たちはギルドに到着した。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 徐々に、それでいて着実に包囲網は狭まっています。

 それだけ、グレゴールが優秀なのです。

 そんな相手に対して、タロウはどう立ち向かうのでしょう?

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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