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第73話 宗主からの手紙

 前回のポイント・宗主からの手紙を受け取った!

 俺たちは魅入られたように、テーブルの上の手紙を見ている。


「どうする?」


 対応に迷っていると――


「タロウさん、お腹空いてるんでしょう? これ、どうぞ」


 ハンナは差し入れをくれる。


 それは――


「「「「クッキー!」」」」


 俺たちの声は重なる。


「空腹なんですよ? さすが、ハンナさん!」


「喧嘩せずに、みんなで食べてくださいね?」


「みんな――」


 俺ははっと気づく。


 クッキーが、減っていることに!


「お前ら、何食べてるんだよ!」


「全員分ですよ?」


「四名分っすよ?」


「独り占めは、嫌われるぞ?」


 その間も、クッキーは減り続けている。


「えっ? ちょっと待って――」


 気づいた時には、皿は空になっていた。


 クッキーは、すべて食われてしまったんだ!


「まぁ、みんな、お腹が空いてるのね。夫に、追加を頼んでくるわ」


 ハンナは奥に引っ込む。


「ご主人、手紙!」


「兄貴、手紙!」


「貴殿、手紙!」


「お前ら、ぶん殴るぞ?」


 俺は憤る。


「ブーブー!」


「プープー!」


「グーグー!」


「三番目は、何だよ?」


 俺は笑う。


「乙女の秘密を明かそう」


「何だよ、いきなり……」


「私は――」


「私は?」


「大食いなのだ!」


 クーデリアは胸を張る。


「いらねぇ設定来た!」


「いらない設定?」


「料理下手を始めとした、話の役に立たない設定だよ?」


「私の大食いは、設定ではなく本質だぞ?」


「大食いのクーデリア?」


 クーデリアは頷く。


「それに、倒れる前も倒れた後も、食事らしい食事を取っていなかったのだ」


「……気づかなくて、悪かった」


「こんなことにも気づかないとは、貴殿、女心に疎いな?」


「ほっとけ!」


 クーデリアは笑う。


「だから、我々の蛮行を許してくれないか?」


「許さん」


「張り倒すぞ?」


「もちろん、冗談だよ」


「こっちも、冗談だ」


 俺とクーデリアは笑う。


「次のクッキーを待つ間に、問題を片付けよう」


 聖堂教会の統治者、宗主からの手紙――


「俺が読んでいいのか?」


「本来なら、咎めるところだが構わない」


「どうして?」


「勇者様は、貴殿に託すからだ。何なら、聞いてみるといい」


 クーデリアは主張する。


「スラゾウ、ゴレタ、読んでいいか?」


「ご主人、購読料!」


「兄貴、配信料!」


「……金を取るなら、読まんぞ?」


「冗談ですよ?」


「冗談っすよ?」


 スラゾウとゴレタは笑う。


「開封するぞ?」


 俺以外の全員が頷く。


 中身を取り出すと、そこには――


『勇者の仲間へ


 お主は、光の御子ではない


 なぜなら、光の御子は、唯一無二の存在だからだ


 ただ、光の御子に類する存在であることは、間違いない』


 俺は、その部分を読み上げない。


 後々、スラゾウとゴレタにだけ伝えるつもり。


『お互いに、聞きたいことがあるだろう。


 そのため、こちらに来てもらいたい。


 迎えは、よこしてある。


 ただ、一つ問題がある』


 全員、固まる。


「問題?」


 俺は手紙の先を読む。


『教会内部において、私を排除しようとする、陰謀が進んでいるのだ。


 お主に頼みたいのは、その陰謀を食い止めることだ。


 容易に敵と味方の区別はつかないが、迎えは完全に味方だ。


 それでは、がんばって陰謀を食い止めてくれ。


 ちなみに、失敗して私が殺されたら、末代まで祟るぞ?』


 手紙を読み終えると、全員、表情を曇らせている。


「問題の宗主様は、どんな人なんだ?」


「面白いお方だ」


「すんげぇ不安になる答え」


「みなから、慕われているぞ?」


「それはわかる、気安そうだし」


 クーデリアは苦笑する。


「状況を簡単に示すと、陰謀が進行中だ」


「陰謀、か」


「宗主から、権力を奪うつもりなんだろう」


「宗主様に成り代わる?」


「そのため、宗主は俺たちに、駆けつけて欲しいらしい」


 クーデリアは頷く。


「ちなみに、敵と味方の区別はつかないそうだ。ただし、君は味方らしい」


「だからこそ、宗主様は私に、手紙を託されたのだ」


「ずいぶん信頼されているね?」


「私は、宗主様の孫娘だぞ?」


「そういう関係!」


 俺は驚く。


「どういう関係だと思ったのだ?」


「心酔しているのかなぁ、と思って」


「肉親であることと、心酔していることと、相反さないぞ?」


 クーデリアは呆れる。


「スラゾウ、ゴレタ、どうする?」


「もちろん、行きますよ!」


「むろん、行くっすよ!」


「その心は?」


「面白そう!」


「楽しそう!」


 スラゾウとゴレタははしゃぐ。


「アドベンチャー!」


「ジャーニー!」


「お前ら、人一人の命がかかってるんだぞ?」


「勇者様、がんばって、と書いてますよ?」


「道中は、楽しんで、と書いてるっすよ?」


「言われてみると……書いてあるな」


 俺はうなる。


「クーデリアは?」


「もちろん、助けに行く」


「それは、宗主様だから? それとも、祖父だから?」


 俺は確かめる。


「どちらでもない」


「どっちでもない?」


「仲間は、必要だろう? そして、仲間とは、手を差し伸べ合う存在だ」


 クーデリアは微笑む。


「そういうことなら、準備を整えて、宗主を助けに行こう!」


 俺たちは頷き合った。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 今回の話は、遠征になります。

 第二部を書いている時、町の外の冒険を思いつきました。

 クーデリアは、ヒロインと案内役を兼ねています。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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