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第72話 光の御子

 前回のポイント・タロウは、意識を失った!

 宿の食堂。


 テーブルの一角に、俺たちは集まっている。


「ご主人、機嫌直してくださいよ?」


「兄貴、怒っても得なんてないっすよ?」


「貴殿、重ねて謝罪しただろう?」


「お前ら……」


 俺はげんなりする。


 スラゾウ、ゴレタ、クーデリアは――


 食事を取っている。

 もちろん、ネイトとハンナの用意した軽食。

 保存食を中心に、果物が混じっている。


 対して俺は――


 お茶をがぶ飲みしている。

 本来の食事は、クーデリアに奪われたから。


「どっちも、薄情だよな? 俺一人だけ、食べるものがないんだぜ?」


「ご主人、はい!」


「兄貴、ほい!」


「皮と骨……いらねえよ!」


「いらないんですか?」


「いらないんっすか?」


 スラゾウとゴレタは首をひねる。


「おいしいですよ?」


「おいしいっすよ?」


 スラゾウとゴレタは、おいしそうに皮と骨を食べる。


「お前は、どうして俺の食べ物を食べてるんだ?」


「宿の方々のご好意だ。そもそも、私は病人だぞ?」


「病人を装った健康体だろ!」


「食べるか?」


「種……いらねえよ!」


「いらないのか?」


 クーデリアは首を傾げる。


「おいしいぞ?」


 クーデリアは、おいしそうに種を食べる。


「もしかして、全部、食べられるの?」


 俺の問いに、俺以外の全員が頷く。


 考えてみると――


 皮なら、パリパリに焼いた鳥の皮。

 骨なら、カリカリに揚げた魚の骨。

 種なら、ローストしたヒマワリの種。


 いずれも、食べられるものだ。

 それに、おいしいものだ。


「マジかよ……」


 俺はがっかりする。


 空腹は収まらないものの、怒りは収まりつつある。

 本当に悪いと、思っていることがわかったから。

 スラゾウとゴレタに限らず、クーデリアも。


「そろそろ、本題に入ろう」


「本題?」


「君は、どうして襲われたんだ?」


「心当たりはない」


「嘘つくなよ?」


「嘘ではない、本当に心当たりはないのだ」


 クーデリアは首を振る。


「それなら、どうしてボードレスにやってきたんだ?」


「言っただろう、光に導かれた、と」


「どうして、勇者様の光だとわかったんだ?」


「宗主様が、そうおっしゃったのだ」


「宗主様?」


 俺は首をひねる。


「聖堂教会の代表だ」


「代表、ね」


「含みのある反応だぞ?」


「服務のある表現だと思ってね」


 俺は指摘する。


「聖堂教会の本当の代表は、光の御子だ」


「光の御子?」


「伝説の存在だ」


「神様みたいなもの?」


「神とは異なるものの、神みたいなものだ」


 クーデリアは頷く。


「その光の御子の使者が、勇者様なのだ」


「勇者は敬称つきなのに、光の御子は敬称つきじゃないんだね?」


「御子は、敬称だぞ?」


「無知を晒して、すみません!」


「素直でよろしい」


 クーデリアは笑う。


「スラゾウとゴレタが勇者だとしたら――」


 俺は言葉を呑む。


 俺こそ、光の御子なんじゃないのか?


「貴殿は、光の御子ではないぞ?」


「心を読むなよ?」


「読んでいるのは、心ではなく表情だ」


「どっちにしても、読むなよ?」


 俺は気分を害する。


「それより、どうして俺は、光の御子じゃないんだ?」


「光の御子は、とっくの昔に死んでいるからだ」


「はっ?」


「死者なのだ」


「実在の人物なの?」


「少なくとも、光の御子と思われる存在は実在して、死亡した」


 クーデリアは完全に否定する。


「勇者は? 勇者も、伝説の存在だろ」


「勇者様は、実在する。過去にも、数度確認されている」


「そいつらに共通点は?」


「ない。ただ、間違いなく勇者様だ」


 クーデリアは請合う。


「そもそも、勇者とは何だ?」


「光の御子の使者だ」


「死者だから、死者?」


「つまらない冗談だ」


「……すみません」


 俺は謝る。


「ご主人、空気読みましょ?」


「兄貴、雰囲気感じましょ?」


「お前らに言われたくない!」


 俺は八つ当たりする。


「それなら、光の御子に関して、情報はある?」


「情報?」


「名前とか、性別とか、性格とか」


「自分を光の御子だと思っているのか?」


「そうじゃないけど、知りたいんだよ?」


「安心しろ、貴殿とは無関係だ」


 クーデリアは否定する。


「その根拠は?」


「貴殿が、記憶喪失の異人だからだ」


「光の御子は、この国の出身なのか?」


「いや、違う」


「それなら、どうして?」


「光の御子は、この世界の出身者ではないからだ」


 クーデリアの言葉に、俺たちは顔を見合わせる。


「当たりだよな?」


「当たりですね」


「当たりっすね」


 俺たちのやり取りに、クーデリアは反応する。


「当たり?」


「こっちの話。問題ないから、先を続けてくれ」


 俺は先を促す。


「勇者様は、光の御子の意思を伝えに来るものだ」


「だから、迎えに来た?」


 クーデリアは頷く。


「問題は――」


 どうして、クーデリアは襲われた?


「本当に襲われたことに、心当たりはないのか?」


「強いて言えば、ある」


「それは?」


「宗主様から託された、勇者様へのお手紙だ」


 クーデリアは、懐から封のされた手紙を取り出した。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 状況上、光の御子は「異世界人」みたいですね。

 勇者は、その仲間でしょうか。

 タロウたちは、それに該当するのでしょうか?

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設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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