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第70話 聖堂騎士クーデリア

 前回のポイント・くっころ騎士に張り倒された!

 俺たちは、テーブル越しに向かい合っている。


 一方は、俺、スラゾウ、ゴレタ。

 もう一方は、くっころ――


「クーデリアコローナだ!」


 そう遮ったのは、運命の相手と勘違いした少女。


 年齢は、十代半ば。

 容姿は、端麗。

 性格は、壊滅的。


「人を、『くっ、殺せ騎士』扱いする下種が言うのか?」


「俺は、『くっころ騎士』と言っただけだ。願望を口にするなよ?」


「張り倒すぞ?」


「ぶん殴るぞ?」


 俺たちは睨み合う。


「仲よくやりましょ? 結婚を前提にした、お見合いなんですから!」


 スラゾウは茶化す。


「スラゾウ、俺はこんなやつと、結婚生活を送るつもりはないぞ!」


「スラゾウ様、冗談でも言っていいことと、悪いことがあります!」


 俺たちは抗議する。


「その割に、同じ文字数っすよね? 相性は、抜群っすね!」


 ゴレタも茶化す。


「ゴレタ、複雑化するから、下手に口を挟まないでくれ!」


「ゴレタ様、今回の問題に、この男は無関係なんですよ!」


 俺たちは主張する。


「仲いいですよね?」


「仲いいっすよね?」


 スラゾウとゴレタは笑う。


「「どこが! あっ――」」


 ハモった俺たちは、気まずそうに顔を背ける。


「私は、クーデリアコローナだ。断じて、くっころなどではない!」


「それはわかったけど、呼びにくいんだよ」


「そういう貴様の名前は?」


「キラ・タロウ」


「キラ・タロット?」


「どこのタロットカードだよ!」


 俺は憤る。


「貴様のほうが、異人の名前らしく呼びにくいぞ?」


「それなら、タロウ、と呼んでくれ。お前は、何と呼ばれたい?」


「お前呼ばわりは癪に障るから、クーデリア、と呼べ」


「クーデレア、ね」


「クーデリア、だ」


 クーデリアは訂正する。


「本題を始めるぞ?」


「貴様が、仕切るのか?」


「俺以外の誰が、仕切るんだよ?」


「お優しい宿の方々は?」


「ずいぶん俺と扱いが違うな? 食事を用意してくれてるよ」


「貴様は、暇なのか」


「……ぶん殴るぞ?」


 俺は怒りに震える拳を押さえる。


「ご主人、抑えて!」


「兄貴、耐えて!」


「……わかった、ここは抑えて耐えるぞ?」


 俺は仲間の意見を聞き入れる。


「ご主人? 兄貴? 貴様は、勇者様の何なのだ?」


「仲間だね」


「下僕、か」


「……マジでぶん殴るぞ?」


「女に手を出すのは、下種だぞ?」


 俺たちは睨み合う。


「ご主人は、ご主人です」


「兄貴は、兄貴っすね」


 スラゾウとゴレタは主張する。


 さすが、真の仲間たち!


「お二方がそう主張されるのなら、渋々ですが受け入れましょう」


「勇者様に対しては、従順なんだな?」


「……マジで張り倒すぞ?」


「勇者様の大切なお仲間に手を出すのは、ご法度ですぞ?」


 クーデリアは怒りに震える拳を押さえる。


「繰り返しになるが、私は聖堂教会所属の聖堂騎士だ」


「どっちも、わからないんだけど?」


「これだから、異国の馬鹿は!」


「ヘイトスピーチは、スライムの人権大使に言いつけるぞ?」


「そんなもの存在するか!」


「存在するんだよ――そうだろ、スラゾウ?」


 俺の問いに、スラゾウは頷く。


「叔父さんですよぉ!」


「はぁ……」


「疑ってるんですかぁ?」


「滅相もない!」


 クーデリアは首をぶんぶんと振る。


 それから、俺に耳打ちする。


「本当にスライムの人権大使など存在するのか?」


「わからん。だが、ことあるごとに言われてるから、いるのかもしれない」


「まったく、頼りにならないな……」


「しょうがないだろ、あいつは特別なスライムなんだから……」


 スラゾウとゴレタは、俺たちのやり取りを興味深げに眺めている。


「聖堂教会とは、この世界の唯一にして絶対の宗教団体です」


「知ってるなら、先に言ってくれよ?」


「説明しようとしたら、ご主人が茶々を入れましたよね?」


「やり返したかったんだよ!」


「子供みたいなことを言って」


「俺、まだ子供だぞ?」


「おっさん高校生ですか?」


 スラゾウは苦笑する。


「唯一にして絶対なのは、魔物も含まれるからなんすよ」


「魔物も含まれる?」


「魔物を含めたすべての存在を救済する、それが聖堂教会の方針なんすよ」


「詳しいな?」


「困った時には、聖堂教会に駆け込め。親にそう言われるんすよ」


「俺は?」


「兄貴は、テイマーでしょ? 例外中の例外っすね」


 ゴレタは微笑する。


「さすが勇者様! どこかの馬鹿とは違い、博識ですね!」


「子供でも知ってることを褒めるのは、逆効果じゃないか?」


「異人とはいえ、子供も知っていることを知らなかったのは、どこの誰だ?」


「俺は、異人の上に記憶喪失なんだよ?」


「そう装っているだけだろう。品性の下劣さが、そう示している!」


「屋上へ行こうぜ、久しぶりにきれちまったよ!」


 俺の宣言に対して――


「屋上……?」


 クーデリアは首を傾げる。


「ご主人、ここに屋上はないですよ?」


「兄貴、代わりに中庭はあるっすよ?」


「それなら、中庭に行こうぜ!」


 俺は言い換える。


「ご主人、デートですか?」


「兄貴、二人の時間っすか?」


「デートでもないし、二人の時間でもない!」


「ヒューヒュー!」


「ピューピュー!」


「お前ら、冷やかすんじゃない!」


 スラゾウとゴレタは、器用に口笛を吹く。


「私は、あなたとデートするつもりなんて、ないんだからっ!」


「どうして、照れてるんだよ!」


「て、照れてなどいないぞ?」


「照れてるじゃないか!」


「照れてない!」


「それならそれでいいけど、喧嘩だよ!」


「果し合いか? それなら、受けよう。私も、気分を害していたところだ!」


 俺たちは激しく言い合いながら、中庭に向かった。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 クーデリアは、第三部のメインヒロインです。

 もしかしたら、作品全体のメインヒロインになるかもしれません。

 少なくとも、悲劇的な結末は迎えませんから、安心してください。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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