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第7話 出会い

 前回のポイント・タロウは、ギルドに入った!

「町をぶらぶらするとしても、小遣いぐらいは欲しいよな?」


 マリーに貰いに行こうと決めた時――


 背後の扉が荒々しく開かれて、中から人が出てくる。


「おやっさん、俺、試練を突破したぜ」


「わかってる」


「まぁ、儀礼だけど」


「そうじゃない、お前なら試練を突破できると、確信してた」


 フェルナンデスは、俺の活躍を期待しているらしい。


「それより、暇か?」


「暇だけど、何か?」


「それなら、迎えに行ってくれ」


「性急だね、誰を?」


 俺は苦笑する。


「王都からの乗り合いの馬車に乗って、俺の身内が町にやってくる」


「構わないけど、おやっさんは?」


「俺は外せない急用が入っちまったから、無理なんだ」


 扉を荒々しく開けたのも、俺に素っ気なかったのも、急いでいるかららしい。


「そういうことだから、頼んだぞ!」


 語気の強さに押されて、俺は引き受ける。


「まぁ、時間もあることだし、行こう」


「恩を売っておくのは、いいことですよぉ」


 俺たちは、馬車の発着地点に向かう。

 話によると、門の周辺に設営されているらしい。


 目指す場所は、すぐにわかる。

 ただ、それらしい人は、見当たらない。


「すみません、王都からの乗り合いの馬車は、到着しましたか?」


「それが、まだ到着してないんだよ」


「様子を見てきましょうか?」


「そうか、助かる。道に沿って、南東を目指してくれ」


「南東、ね。了解」


 馬車の積荷を降ろしている業者から、俺は情報を得る。


 指示された通り、町の外に出ると、道に沿って南東を目指す。


 気づけば、町の周囲から周辺へと移りつつあった。


「おやっさんの身内を乗せた馬車は、どこへ行ったんだ?」


「ご主人の国、要するに異世界じゃないですか」


「嘘だろ?」


「冗談に、本気にならないでください」


「それなら、どこへ行ったんだ?」


「ご主人、見てください」


 スラゾウの言葉に従い、俺は道の端っこを見る。


 そこには、比較的新しいへこみがある。

 どうやら、馬車は道を外れたらしい。


「おそらく、盗賊に襲われたんだろう」


「どうします?」


「もちろん、追いかける」


「何のために?」


「馬車襲撃イベントの、ヒロインゲットのために」


「ご主人らしいですね」


 スラゾウは呆れる。


「痕跡をたどります、オイラの後をついてきてください」


 予想に反して、スラゾウは軽快に進んでいく。

 ただ、体力はないらしく、幾度も立ち止まりそうになる。


「ご主人、これ以上、痕跡をたどれません」


 そこは、林だ。

 見覚えがあると思ったら、盗賊と遭遇した場所。


「盗賊の拠点が、ここらへんにあるのか?」


「状況的には、ここ以外にもありそうですね」


「どこから、手をつけよう?」


 目的は、捕まった人たちを無事に助け出すこと。


「スラゾウ、草木にまぎれて進んでくれ」


「不意打ちに、備えるんですね?」


「一緒に捕まりさえしなければ、対応できる」


「オイラはともかく、ご主人は大丈夫ですか?」


「俺は、テイマーだ。一度目のように、二度目もうまく立ち回れる」


 そう楽観視した直後――


「止まれ!」


 警告される。


 辺りを見ると、草木の間から、人が出てくる。

 それも、武装した荒くれ者がたくさん。


「スラゾウ、行け!」


「スラゾウ?」


 俺に警告した盗賊の一人が、首をひねる。


 当のスラゾウは、兵士の間をすり抜けていく。

 その大胆極まりない逃走に、しかし俺を警戒する連中は、気づかない。


「ついて来い!」


 指示に従い、俺は歩き出す。


 しばらく歩かされた後――


「入れ!」


 指示される。


 粗末な家の中に入ると、捕まった人たちがいた。

 予想外に多いのは、別の場所に移す前なのだろう。


 その中から、同年代の少年の隣に座る。

 前後して、扉の閉まる音がする。


「あなたも、兵士だと騙されて、捕まったの?」


 少年にしては、高い声。

 ただ、声の主は、隣のフードを目深にかぶった少年。


「なるほど、そういう手口ね」


「感心してないで答えて」


「いや、馬車の痕跡を追ったら、捕まった」


「助けに来たのに、捕まったの? 信じられない!」


 少年は呆れる。


 今の説明じゃ、実は不十分。

 なぜなら、わざと捕まったから。


 意図した通り、捕まった人たちと合流できた。

 後は、スラゾウの力を借りて、脱出するだけ。


「俺は、タロウ。君は?」


「私は、フェルと呼んで」


 俺たちは名乗る。


「フェルは、王都からの馬車に乗ってきた、客の一人?」


「そうだとしたら?」


「もしかして、君、テイマーギルドの――」


「それ以上は、言わないで!」


「えっ……」


 フェルの反応に、俺は絶句する。


 どういうことなのかと、悩んでいると――


「フェルは?」


 扉が開き、男が顔を出す。


 相手の求めるフェルが、隣のフェルとは限らない。

 ただ、そうとしか考えられない状況。

 フェルがうつむいたことも、推測を裏付ける。


「俺だ」


「そうか、来い」


 名乗り出た俺に対して、男は顎をしゃくる。


 相手が間違いに気づかないうちに、俺は立ち上がる。


「スラゾウによろしく頼む、と伝えてくれ」


「わかった。くれぐれも無茶しないで」


 フェルの言葉を背に、俺は小屋を出る。


 前後こそ挟まれているものの、手足を縛られることもなく、連れて行かれる。

 その待遇のよさに、不審を抱く。


「着いたぞ」


 そう言い残して、俺を連れてきた盗賊は立ち去る。


 到着した先は――


 林の中なのに、開けている場所。

 そこには陣地が設営されており、略奪品と思しき品々が積まれている。


 目につくのは、肉、野菜、香辛料などの生活用品。

 その中心には、見覚えのある人物がいる。


「どうして、貴様がいるんだ?」


「そりゃ、こっちの台詞。どうして、あんたがいるんだ?」


 そこにいたのは、一度顔を合わせた盗賊の親分。


「貴様、本当にフェルか?」


「異人の上に記憶喪失だから、フェルは与えられた名前だよ」


「わかりやすい嘘をつきやがって。だが、まぁ、いい。お前には、話がある」


 俺の嘘はすぐに見破られたものの、親分は話に乗る。


「お前、テイマーだよな、ハウンドを仕留めたやつを知ってるか?」


「もちろん、知ってる」


「もちろん?」


 親分は首をひねる。


「当人だよ」


「強い魔物でも使ったのか?」


「いや、俺一人」


「ちっ、マジかよ」


 親分は舌打ちする。


「頭?」


「ハウンドを仕留めたのは、こいつだ。それも、一人で」


「頭以外じゃ勝てないハウンドを、こいつは一人で仕留めた!」


 親分の言葉を機に、子分の俺を見る目が一変する。


「あんたは、その化け物をどうするつもり?」


「試しに聞くが、俺たちの仲間にならないか?」


「ならない」


「それなら町を離れて、二度と俺たちと関わらないと誓うか?」


「誓わない」


「そうか、じゃあ――死ね!」


 瞬間――


 目の前を、刃が走る!

 馬車襲撃イベントは、当初のプロットにはありました。

 ただ、いろいろ組み合わせていると、自然となくなりました。

 没ネタですが、今後、復活する可能性はあります。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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