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第68話 勇者様

 前回のポイント・スラゾウとゴレタは、人間化が可能になった!

 不貞寝したために、寝坊した。

 欠伸を噛み殺して、部屋を出る。

 両肩には、寝坊の元凶がいる。


「ご主人のせいですよね?」


「兄貴のせいっすよね?」


「お前らのせいだよ?」


 俺たちは責任を押しつけ合う。


 スラゾウとゴレタだから、通常の形態。

 そう、スラ子とゴレ美じゃないんだ。

 安心したような、残念なような、不思議な心境。


 食堂には、宿の関係者がいる。

 ネイトとハンナ。

 アンナの姿が見当たらないのは、昨日の騒動のせいだろう。


「ヒロインは?」


「保護した子ですか? まだ寝てますよ」


「俺のように?」


「タロウさんとは違い、彼女は病人ですよ」


「俺も、病人だよ?」


「その割に、元気そうですよ」


 ハンナは微笑む。


「一度も目覚めてないの?」


「幾度か目覚めましたけど、今は寝ていますね」


「そんなに、傷は深いの?」


「傷よりも、毒ですね」


 ハンナの言葉は、不吉に響く。


「毒……」


「テイマーギルドの方も、治療に苦労していましたよ」


「苦労したものの、治療は成功か」


「だから、目覚めれば話を聞くことは可能ですよ」


「それなら、よかった」


 俺は安心する。


「ところで、朝食は?」


「もちろん、ありません」


「まぁ、時間的にそうですよね」


「軽食程度なら用意できますけど、どうします?」


「お願いします」


「それじゃあ、これから作ります。少々、お待ちください」


 ネイトは請合う。


「アンナちゃんは?」


「とっくに起きて、エリザさんのところに行っています」


「寝坊したのは、俺だけ?」


「仕方ないでしょう、一番疲れてるのは、タロウさんなんですから」


「そういうことなら、今日は一日休養します」


 俺は宣言する。


 ネイトとハンナは、奥に引っ込む。

 軽食の用意と、昼食の準備のためだろう。


 俺は、空いた時間を活用する。

 目的はもちろん、スラ子とゴレ美の生態調査。


「お前ら、人間化は可能なのか?」


「なるんですか? はい!」


「なるんすか? ほい!」


「勝手になるな!」


 スラ子とゴレ美を叱る。


「俺たち以外いないとはいえ、公共の場だぞ?」


「聞かれたから、なったんですよ?」


「言われたから、なったんすよ?」


「常識をわきまえろ!」


 俺はスラゾウとゴレタを叱る。


「ブーブー!」


「プープー!」


「スラ権侵害!」


「ゴレ権侵害!」


 スラゾウとゴレタはブーイングしながら、プラカードを掲げる。


「お前ら、器用だよな?」


 ブーイングは、(言語能力)を利用している。

 プラカードは、(変化)と(形成』を利用している。

 スラゾウとゴレタのスキル利用は、よくも悪くも高度なんだ。


「ダーリン、褒めてるのスラ?」


「パパ、喜んでるのゴレ?」


「すげぇよ、お前ら……!」


 スラ子とゴレ美に変身した両名は、服を着ている。


 それぞれ、バニー服とメイド服を着ている。

 もちろん、どっちも体の一部。


「甲冑も着込めるのか?」


「もちろん、着込めるスラよ」


「でも、中身は変わらないゴレよ」


「バニー服でもメイド服でも甲冑でも、防御力に変化はない?」


「甲冑と言う名の、バニー服スラよ」


「メイド服という名の、戦闘服ゴレよ」


 スラ子とゴレ美の、戦闘利用は難しそう。

 利用するとしたら、交渉。

 もちろん、色仕掛け。


 問題は――


「所詮、スライム娘とゴーレム娘だぞ?」


「ダーリン、冷たいスラよ」


「パパ、厳しいゴレよ」


「誤解されるから、ダーリンとパパはやめて……」


 俺は懇願する。


「人間化は、簡単なのか?」


「なるのは、簡単ですね」


「ただ、維持が大変っすね」


 維持は大変らしく、スラゾウとゴレタに戻っている。


「他に、気づいたことはあるか?」


「なぜか、語尾に『スラ』がつきます」


「同じく、語尾に『ゴレ』がつくっす」


 スラゾウとゴレタは不満そうだ。


「それに、普段よりも疲れます」


「(形成)するよりも、疲れるっす」


「変身の利用は、計画的に、か」


 安堵している自分に気づく。


 その理由は――


「お前らは、スラ子とゴレ美じゃなく、スラゾウとゴレタなんだよ」


「スラゾウですけど?」


「ゴレタっすけど?」


 スラゾウとゴレタは不思議そうだ。


 こだわっているのは、俺のみ。

 スラゾウも、ゴレタも、こだわっていない。

 

「俺、人としての器が小さいのか?」


「小さいですね」


「小さいっすね」


「お前ら――」


 俺の言葉は、途切れる。


 扉の開かれる音によって。


 その先には――


「ヒロイン!」


 見覚えのある少女が、こちらに近づいてくる。


 その表情は、意味深。

 探し求めていた、宝物を見つけたみたい。

 あるいは、生き別れていた肉親に出会ったみたい。


 いずれにしても――


「スラゾウ、ゴレタ、これはあるぞ」


「これ?」


「ある?」


 スラゾウとゴレタは戸惑う。


「本当のヒロインの登場だよ!」


「はぁ……」


「まぁ……」


 スラゾウとゴレタは呆れる。


 その間も――


 少女は、こちらに歩み寄る。


 そうして、俺たちの前にたどり着いた少女は――


 何とひざまずいたんだ!


「お初にお目にかかかります。――勇者様!」


「勇者……?」


 俺たちは呆然とする。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 第三部、いわゆる本題の始まりです。

 削除した宝探しの話は、本題に組み込むかもしれません。


 定期的に更新するつもりですが、滞る可能性もあります。

 ただ、話の方向性は決まりましたから、ゆるゆると続けたいと思います。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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