表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/137

第61話 首謀者との対決

 前回のポイント・首謀者の下にたどり着いた!

「みんな、行くぞ!」


 俺の言葉に、全員頷く。


「お前たち、何者だ! 答えろ、答えろ、答えろ――」


 首謀者は動揺している。


 襲撃の絶好の機会を、しかし俺たちは無視する。


「左上に行くぞ!」


 俺は、祭壇の左上に向かう。


「右上に行くっす!」


 ゴレタは、祭壇の右上に向かう。


「左下に行くわ!」


 エリザは、祭壇の左下に向かう。


「右下に行くよ!」


 アンナは、祭壇の右下に向かう。


 目的は、捕まっている人たちの救出。

 首謀者の生死など、二の次なんだ。


「大丈夫ですか?」


 俺は、老婆を背負う。


「大丈夫っすか?」


 ゴレタは、中年の女を背負う。


「大丈夫かしら?」


 エリザは、若い女を背負う。


「大丈夫なの?」


 アンナは、幼い女の子を背負う。


「お前たち、生贄を奪うつもりか? 殺す、殺す、殺す――」


 首謀者は、怒り狂ったように繰り返す。


 首謀者を無視して、俺たちは取って返す。

 捕まっている数と運んでいる数と、釣り合っている。

 そう、一度で助け出すために、危険を承知で分散したんだ。


 俺たちの集合と、魔物の集合と、ほとんど同時――


 俺たちは、背負っていた人たちを地面に下ろす。

 それから、その四人を守るように円陣を組む。

 もちろん、前後の要は、俺とゴレタ。


「いい生贄、悪い生贄、どっちでもない生贄……全部、生贄だ!」


 首謀者の叫び声が、合図だった。

 

 前からは、ナイトゴーントの群れ。

 後ろからは、グールの群れ。

 挟み撃ちするように、両者は襲ってくる。


「ゴレタ、ランプを利用して、火を〈形成〉してくれ」


「了解」


 ファイアゴレタは、グールの群れに突っ込む。

 それから、手と足を無造作に振り回す。

 それに伴い、グールの焼けるにおいが漂い、叫び声が響く。


「スラゾウ、弓に変化してくれ」


「了解」


 スラゾウボウを構えると、『矢』をセットして放つ。


 ヒュン!


 『矢』は鋭い音を立てて飛び、ナイトゴーントの顔を貫く。

 悲鳴と光を残して、ナイトゴーントは消える。

 その間にも、次の『矢』を放つ。


 攻撃の間も、敵は迫って来る。

 その敵を追い払うのは、エリザとアンナ。

 アンナは石を投げつけ、エリザは枝を打ち払う。


 どちらも、倒せる威力はない。

 ただ、弱らせる威力はある。

 そうして弱まった敵を、俺とゴレタは確実に仕留めていく。


 戦闘開始から、五分前後――


 そのころには、ナイトゴーントの群れも、グールの群れも壊滅していた。

 敵の数も少なかったけど、何より連携がうまくいったんだ。


 要するに――


 俺たちの完全勝利!


「来い、来い、来い! どうして、来ない?」


 首謀者は叫んでいる。


 たぶん、〈召集〉のスキルを発動しているんだ。

 突然、ナイトゴーントとグールが現れたのは、このためだろう。


「来い、来い、来い――」


 首謀者は連呼している。


 その様子から、混乱しているのが手に取るように伝わってくる。


「混乱? 狂気と一致しないね」


 問題は、首謀者の人物像。

 エリザによると、狂っている。

 俺からすると、狂っていない。


 推測を裏付ける根拠がある。

 スキルの、〈精神汚染〉のランクが下がっているんだ。

 Aから、Bへと。


「エリザ、アンナ、待っていてくれ」


「了解」


 俺の指示に、エリザとアンナは応じる。


「スラゾウ、ゴレタ、行くぞ」


「了解」


 俺の指示に、スラゾウとゴレタは応じる。


 俺たちは、ゆっくりと歩き出す。

 もちろん、隙を突くため。


 今度もうまくいくと思った時――


「主の敵よ、貴様らの思い通りになると思うなよ!」


 首謀者は叫ぶ。


 その反応に合わせて、俺たちは警戒するように立ち止まる。


「主の敵?」


 俺たちは首をひねる。


 敵なのは、間違いない。

 首謀者も、その裏に潜む怪物も、討伐の対象だから。

 ただ、首謀者の言葉には、別の意味がありそう。


 実際――


「お前らの中に、敵のにおいのするものがいるぞ!」


「敵?」


「敵の中でも、もっとも忌まわしい存在だ」


「その名前は?」


「異界の魔王、アザ――」


 首謀者は口を閉ざす。


「貴様、私をはめるつもりだったな!」


「何、言ってるの?」


「狡猾なやつだ!」


「ちょっと待って!」


 俺は驚く。


「私に名を呼ばせ、やつをこの場に呼ぶつもりだったんだろう!」


「おっさん、大丈夫?」


「貴様こそ、大丈夫か? 異界の魔王の眷属をしもべにして!」


 首謀者は糾弾する。


「ご主人?」


「兄貴?」


「大丈夫だ、信じてる」


「たとえお前たちが異界の魔王の眷属でも、俺はお前たちの味方だよ」

 

 俺たちは頷き合う。


「お前も、異界の魔王に魅入られてるのか!」


「魅入られてるのは、君のほうだろう」


「それでも、構わん。この世界に、破滅を招くよりはいい」


「現状はどう考えても、君が破滅を招いてるよね?」


「これは、破滅を免れるための儀式だ。破滅を招く、貴様らとは違う!」


 どうやら首謀者は、元から狂っているらしい。


「たとえそうだとしても、お前は終わりだ。生死を問わず、対処する」


「生死を問わない、か」


「脅されたのに笑うなんて、狂ったのか?」


「おかしいのは、元からだ。あるいは、ずっとまともだ」


 首謀者は笑う。


「自分の異常さに、気づいてるのか?」


「もちろん、気づいている。しかし、これはそんなに悪いことか?」


「自分の犯した罪を、価値観の問題にすり替えるなよ!」


 首謀者の態度に、不審を覚える。


 破滅を前にした、犯罪者とは異なる。

 救済を前にした、殉教者を思わせる。


 その根拠は――


 余裕。


 首謀者の余裕のある態度が、俺の中の予感を膨らませる。


「貴様らはギルドの命令に従い、私を処罰しに来たのだろう?」


「結果的には、そうなる」


「その命令は、私の生死を問わないのだろう?」


「必要なら、そうなる」


「それなら、私にも考えがある」


「ギルドの上層部に掛け合い、助命嘆願するのか?」


「助命? 嘆願? 馬鹿馬鹿しい!」


 首謀者は嘲笑う。


「それなら、君の秘策は何だ?」


「私自身を生贄にして、大いなるクトゥルフを呼び出す!」


「そんなこと可能なのか?」


「もちろん、可能だ!」


「本当に?」


「くどいぞ、主の敵よ!」


 首謀者に、現状を打開する手はある。

 ただ、その成功率は高くない。

 首謀者の態度は、そう示す。


 だから、自滅を待つ?


 駄目だ。

 成功率は低いものの、零じゃない。

 成功したら、とんでもない怪物が出現する。


「大いなるクトゥルフよ、私を生贄にして、その姿を見せてくれ!」


 首謀者は叫ぶ。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 「異界の魔王の僕」は、一応伏線です。

 ただ、生かされるとしても、本題ではないでしょう。

 本題は、もちろん宿で眠っている少女です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作へのリンクです
覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ