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第59話 迎撃作戦

 前回のポイント・タロウは、両手に花になった!

 俺は、走り続けている。

 左肩にスラゾウ、右肩にゴレタを乗せて。

 左腕にアンナ、右腕にエリザを抱えて。


 文字通り、手一杯。

 もちろん、手がふさがっていることを、愚痴っているわけじゃない。

 悪路に、てこずっているんだ。


「みんな、妙案は思いついた?」


「ご主人、何とかしてくださいよ!」


「兄貴、何とかしてくれっす!」


「タロウ、何とかしてよ!」


「お兄ちゃん、何とかして!」


 本当に欲しかったのは、答えじゃない。

 答えにつながる、手がかり。


「みんな、対応そのものじゃなく、それにつながる手がかりを見つけてくれ!」


 俺は助言を求める。


「ご主人、この先は、地盤が脆くなっています!」


「地盤が脆い?」


「見える限りでも、ところどころ崩れているんです」


「それ以外は?」


「少ないですけど、地割れも発生しています」


 スラゾウは指摘する。


「兄貴、無事に通り抜けられるんすか?」


「難しいな」


「その根拠は?」


「人間三人と魔物二体、耐えられる重さとは思えない」


「一度立ち止まって、バラバラにならないとまずいっすね」


 ゴレタは指摘する。


「タロウ、割れ目を跳び越せない?」


「スキルを利用して?」


「タロウに限らず、スラゾウでもゴレタでも構わないわ」


「俺たちの中に、そういったスキルを持ったやつはいないよ」


 俺は頷く。


「お兄ちゃん、地面が崩れ出した!」


「前? それとも、後ろ?」


「後ろ」


「原因は、クトーニアンの群れか?」


「すぐに対応しないと、崩落に巻き込まれちゃう!」


 俺は考える。


 このままだと、遠くないうちに地面は崩落する。

 その場合、俺たちは、クトーニアンの群れごと落下する。

 それでも、最強無敵チートにより、全員無事だろう。


 だが、助かるのは、俺たちだけだ。

 捕まっている人たちは、助からない。

 そうなる前に、対応しなければならない。


「地面の崩落に巻き込まれる? それならいっそ――」


 俺は考えをまとめる。


「俺は、これから走る速度を上げる。その後、俺の指示通りに動いてくれ」


「ご主人、オイラの役目は?」


「兄貴、オレの順番は?」


「タロウ、私はどうすればいいのかしら?」


「お兄ちゃん、あたしはどうするの?」


「それぞれの役目と順番は――」


 俺はまとめた考えを伝える。


「よし、実行するぞ!」


 俺は、走る速度を上げる。

 さすがに、苦しくなる。

 それでも我慢して、速度を上げる。


 そうして、クトーニアンの群れを引き離すと、走る速度を落とす。


 走っていることから、歩いていることへと変わった時――


 ゴレタ、エリザ、アンナの順に、地面に降り立つ。


 エリザとアンナは、ゴレタから距離を取る。

 地面を確認したゴレタは、〈形成〉を発動する。

 迫って来る、クトーニアンの群れに向かって。


「ゴレタ!」


「了解!」


 ゴレタから向かって、前方の地面が抉り取られる。

 当然、緩んでいた地盤は、さらに緩む。

 そして、クトーニアンの群れの到着に合わせて、限界を迎える。


 ボコン!


 音を立てて、地面が割れる。

 地面の崩落に伴い、クトーニアンの群れは穴に落ちていく。


「クトォォォ!」


 クトーニアンの悲鳴が、重なり合う。


 だが、クトーニアンは馬鹿じゃなかった。

 落ちていく仲間を踏み台にして、割れ目を跳び越えてくる。

 それも、次から次へと。


「タロウ?」


「お兄ちゃん?」


「想定した通りだから、大丈夫だ」


 俺は頷く。


「ゴレタ!」


「了解!」


 マッドゴレタは、〈形成〉を解除する。

 それに伴い、巨大な土の壁が立ちふさがる。

 割れ目を跳び越してきた、クトーニアンの群れの前に。


 ボコッ! ボコッ! ボコッ!


 音を立てて、クトーニアンは土の壁にぶつかる。

 それに伴い、その下の穴に落ちていく。

 それも、次から次へと。


「想定した通り、跳び越えてきたね」


「想定した通り?」


「跳び越えられると思ったから、対応したんだ」


 エリザは頷く。


「そういう意味じゃ、罠だね」


「罠?」


「跳び越えさせてから、確実に落とす」


 アンナは頷く。


 そう、ゴレタの〈形成〉には、二つの意味があったんだ。


 一つ、地面に穴を空けること。


 二つ、土の壁を作ること。


 もしもの場合に備えた、二段構えの作戦。

 実際、想定した通りになった。

 地面に穴を空け、土の壁を作る意味はあったんだ。


 当のゴレタは土の壁を完全に作り終える前に、距離を取っている。

 俺の渡した薪に跳びつくと、木製の体に作り変える。

 それから万一に備えて、待ち構えている。


「来る!」


 その言葉に前後して、土の壁が崩れ落ちる。

 度重なる衝撃に、耐えられなくなったんだろう。

 もちろん、クトーニアンの突進によるものだ。


 地面の崩落、土の壁。

 二段構えの作戦を突破したクトーニアンは、五体ほど。

 数は減ったものの、その脅威は十分以上。


「スラゾウ!」


「了解!」


 スラゾウハンマーを構えると、俺は地面に叩きつける。


 ドコン!


 巨大なハンマーによる、渾身の一撃だ。

 その威力は、ずば抜けている。

 崩れつつある地面を、完全に突き崩す。


「クトォォォ!」


 クトーニアンは悲鳴を上げる。


 突然、開いた大穴に、五体ほどのクトーニアンは呑み込まれる。

 仲間を踏み台にしようとして、しかし失敗する。


 落差がありすぎて、跳びつけないんだ。

 そして、すべてのクトーニアンは、大穴へと消えていく。


「休憩できる場所を探そう。――さすがに、ちょっと疲れたよ」


 俺の言葉に、全員頷く。

 作戦を二段構えにしたのは、説得力を増させるためです。

 言い換えると、一つでは説得力に乏しいと思ったのです。

 最後のハンマーの一撃は、ダメ押しです。

 一区切りついていますから、評価してくれるとありがたいです。

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