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第57話 全員集合

 前回のポイント・エリザを助け出した!

 予想に反して、物音も悲鳴も聞こえなかった。

 スラゾウとゴレタは、想定以上にうまくやっているみたい。


「進むべきか、待つべきか。――進むべきだろう」


 それから、俺たちは道に沿って下り始める。


「エリザ、捕まった時はいいとして、捕まった後の話をしてくれないか?」


「顔のない怪物に捕まって、薄暗い場所に連れて行かれたわ」


「そこには、人型の魔物はいた?」


「いなかった」


「俺たちとは、対応が異なるみたいだね」


 エリザは首をひねる。


「そいつの特性を利用して、エリザたちのところに向かおうとしたんだ」


「そうしたら、失敗したの?」


「敵の群れの真ん中に、置き去りにされたよ」


「それは、災難ね」


「ただ、道をショートカットすることはできたよ」


 だから、失敗したわけじゃない。

 そう、成功しなかっただけなんだ。


「お兄ちゃん、ごまかしてない?」


「アンナちゃん、俺はごまかしてるんじゃない、言い訳してるんだ」


「同じ」


「同じようなものなんだけど、結果は成功だね」


「それこそ、ごまかしだよ」


 会話の間も、俺たちは道に沿って下り続けている。


「そこにいたのは、怪物を従えた人間ね」


「テイマー?」


「そう、テイマー。見た目は、年老いた男ね」


「見た目?」


 俺は引っ掛かる。


「話によると、中年らしいわ。でも、年老いて見えたの」


「こんなところで過ごしてたら、俺でも年老いるよ」


「それに、魔物との契約の代償もありそう」


「代償?」

 

 俺は首をひねる。


「魔物との契約の際、本人の実力に見合わなくても、契約できるの」


「その場合、どうなるんだ?」


「必要に応じて、その差額分を要求される。ほとんどは、生命力として」


「端的に言うと、寿命を失うんだね?」


「だから、そのテイマーは、本当に年老いているのかもしれないわ」


 俺は納得する。


「そもそも、そのテイマーは、人間性が欠落していたわ」


「意思の疎通ができない?」


「そう、ずっと自分のことをぶつぶつと呟いていたの」


「それから?」


 俺は先を促す。


「しばらく呟いた後、私のことを一瞥すると、興味がないみたいに下がらせたわ」


「そいつは、人に興味がないのか?」


「それ以前の問題……人をやめてしまったみたいだった」


「魔物との契約のせい?」


「おそらく。そう考えると、いろいろな点に説明がつくわ」


「そうだとしたら、厄介だね」


 俺とエリザは頷く。


「どうして、そうまでして魔物と契約するの?」


「ごめんなさい、私にはわからないわ。何しろ、私は未契約だし」


「エリザお姉ちゃんは、魔物と契約しないの?」


「父さんやタロウを見ていると、ためらっちゃうの」


 エリザは告白する。


「どうして?」


「そこは、常人の住む世界じゃない。だから、覚悟が必要なの」


「その覚悟を持てない?」


 エリザは頷く。


「それなら、タロウお兄ちゃんは、どうしてスラゾウとゴレタと契約したの?」


「こいつを助けたいと、思ったからだよ」


「助けたい?」


「状況上、スラゾウもゴレタも、助ける必要があったんだ」


 俺は断言する。


「その時、覚悟はあったの?」


「あったと思う。ただ、エリザほど悩んでいない」


「必要に迫られたから?」


「それもあるけど、運命だと感じたからだよ」


 決められたところに、ピタリとはまったように感じたんだ。


 偶然じゃなく、必然。


 必然というよりも、運命。


「スラゾウ、ゴレタ……見当たらないな」


「それなら、戻る?」


「いや、行けるところまで行こう」


「行けるところ?」


「それこそ、首謀者のところまで」


 まず、スラゾウとゴレタと合流する。

 それから、首謀者のところにたどり着く。

 怪物を叩きのめして、首謀者を生け捕りにする。


「そう言えば、首謀者は怪物に私を拘束するように命じると、運搬も命じたわ」


「運搬?」


「最高の生贄だ、と言っていたから、儀式の供物扱いね」


「その際、クトーニアンはいた?」


「あの異形の怪物なら、いなかったわ」


 最高の生贄とは、何を意味している?


「どうしたの、黙っちゃって?」


「疑問ばっかりだと、思ってね」


「狂人のやることに、意味を求めちゃ駄目よ」


「狂人だからこそ、意味があるんじゃないかと思ったんだ」


「タロウは、心配性ね」


 エリザは苦笑する。


「アンナちゃんは、どう思う?」


「最高の生贄って、何?」


「うーん、何だろう?」


「エリザお姉ちゃんと同じく、扱いが丁寧だったから、あたしも最高の生贄?」


 エリザとアンナ――


 二人の共通点は?


「美少女?」


「タロウお兄ちゃん、褒め言葉のつもり?」


「もちろん、褒め言葉だよ」


「判断してるのは、怪物だよ。あたし、怪物に好かれたくない」


 アンナの言葉に、俺は引っ掛かる。


「頭に、引っ掛かった。たぶん、最高の生贄の定義だと思う」


 最高の生贄の定義――


「テイマーだ!」


「テイマー?」


「最高の生贄は、テイマーを指してるんだ」


「私、アンナちゃん……確かにその通りね」


 ただその場合、問題がある。

 もちろん、テイマーである、俺への対応。


「何はともあれ、スラゾウとゴレタと合流しよう。その後、一度地上に戻ろう」


「戻れるの?」


「切り札を用いれば、簡単に戻れる」


「その場合、依頼はどうするの?」


「君たちを地上に送り届けた後、改めて挑むよ」


 同意しなかったのは、アンナ。


「お兄ちゃん、その場合、他の人はどうなるの?」


「他の人?」


「他にもあたしたちのように、連れ去られた人がいるの」


「見たのか?」


「数人の女の人が、顔のない怪物に連れて行かれるのを見たよ」


 アンナの証言により、状況は一変する。


「二人とも、どうするべきだと思う?」


「一度地上に戻りたいところだけど、他の人を助けてから」


「あたしも、そう思う。そうじゃないと、目覚めが悪そう」


「それなら、もう少し我慢してくれ。もしもの場合は、俺が何とかする」


 やるべきことが、増え続けている。

 一つは、スラゾウとゴレタを探し出す。

 もう一つは、捕まっている人たちを助け出す。


「スラゾウ! ゴレタ! お前ら、どこにいるんだ――うごっ!」


 頭上から、何かが降ってきた。

 その何かは、俺の肩に落ちたんだ。

 痛くはないものの、うめいてしまった。


「今のは、いったい――」


 俺の言葉は、途切れる。


 左右の肩に乗っている、丸いやつと四角いやつを見て。


「スラゾウ!」


「ゴレタ!」


 エリザとアンナは驚く。


「どうして、お前ら、そこにいるんだ?」


「ご主人、オイラのことを呼びましたよね?」


「兄貴、オレのことを呼んだっすよね?」


「呼んだら来るなんて、ご都合主義じゃないか!」


 言葉とは裏腹に、俺は安堵する。


「ご主人、大変なんですよ!」


「兄貴、大変なんすよ!」


「大変なのは、俺のほうだ。お前たち、ダイエットするべきなんじゃないのか?」


「そんなことよりも――」


「上を見てくれっす――」


 スラゾウとゴレタは頭上を示す。


 仰ぎ見ると、クトーニアンが見える。

 ただし、一体じゃなく、たくさん。

 そう、頭上にクトーニアンの群れがいたんだ!


「どういうことだよ!」


「いつの間にか増えてて、やっとご主人を見つけたんですよ!」


「兄貴を見つけたから、勢いよく下に向かって跳んだんすよ!」


 それは、つまり――


「みんな、逃げるぞ!」


 俺たちは走り出す。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 スラゾウとゴレタの合流シーンは、お約束です。

 呼んだら来るのは、物語としては至極当たり前だからです。

 その中に敵も混ざっているのは、更なるお約束ですね。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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