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第56話 エリザ救出

 前回のポイント・敵から、アンナを守り抜いた!

 ナイトゴーントの群れが消えたのは、地底に続く道の途中の横穴。

 敵の後を追いかけていなかったら、見過ごしていたかもしれない。


 俺たちは頷き合うと、横穴に入る。

 俺とスラゾウ、アンナ、ゴレタの順。


 そこは――


「薄暗いな」


 アンナもいるため、荷物から取り出したランプをつける。

 

 浮かび上がった光景は――


「これは――」


 俺たちは息を呑む。


 ナイトゴーントは、しかし一体も見当たらない。

 おそらく、全部食われたんだ。

 遠くに見える、魔物によって。


 見た目は、イソギンチャクに似ている。

 ただ、その大きさは、まったく違う。

 通路をふさぐように、その巨体を横たえている。


 その後ろには、人間用と思しき扉が見える。

 その中に、エリザは捕まっているんだろう。

 牢屋に見える外観も、推測を後押しする。


「門番、か」


 その門番は、見るからに強そう。

 ただ、倒すことは簡単。

 エクストラスキルを発動すればいい。


 問題は、その後。

 その攻撃に巻き込まれ、エリザは亡くなる。

 それは本末転倒だから、工夫する必要がある。


「何はともあれ、情報収集だ」


 俺の判断に、全員頷く。


「〈異世界王〉の効果により、対象の情報を把握する」


 俺は宣言する。


『〈異世界王〉の指定効果、発動』


 言葉が響き、文字が浮かぶ。


 【ステータス】


 クラス・クトーニアン

 ランク・E

 スキル・共有E 探知E 追跡E

 エクストラスキル・なし


 【パラメーター】


 攻撃力・E+

 防御力・E+

 敏捷性・E-


「Eランクのクトーニアンだ。ただし、未契約だ」


「契約してない?」


「プラス補正がないから、契約してない」


「でも、野良には見えませんよね?」


「そう、野良には見えない。意味深だよな?」


 スラゾウは頷く。


「問題は、対応だ」


「対応?」


「倒す必要はないけど、どかす必要はある」


「あれをどかすのは、倒すことと同じっすよね?」


「基本は、囮による引き離しだろう。その間に、エリザを助け出す」


 ゴレタは頷く。


「その場合、囮は誰だ?」


「あたしとスラゾウは論外として、お兄ちゃんか、ゴレタだね」


「普通は、俺だろう。ただ――」


「ただ?」


「もし扉の先にも同じやつがいたら、詰む可能性がある」


 アンナは頷く。


「どうする?」


 隙を突くため、クトーニアンの能力を思い出す。

 引っ掛かった点は、保有スキル。

 〈共有〉、〈探知〉、〈追跡〉――


「隠れ蓑によって、相手のスキルを利用すれば、突破できるぞ」


「相手のスキルを利用する?」

 俺の言葉に、俺以外の全員が首をひねる。


「スラゾウ、隠れ蓑に変化してくれ」


「了解」


「ゴレタ、隠れ蓑を利用して囮になってくれ」


「了解」


 俺は、ゴレタにスラゾウマントをかぶせる。


「スラゾウ、ゴレタ、俺がエリザを助け出すまでの間、敵から逃げ回ってくれ」


「ご主人、迅速にお願いしますよ」


「兄貴、適切に対処してくれっす」


「無理だと思ったら、叫び声を上げてくれ。すぐに助けに行く」


 作戦を実行するに当たり、手抜かりはない。

 ランプの明かりは消して、荷物にしまっている。

 そうしないと、注意を引きつけるから。


 スラゾウマントをかぶったゴレタは、クトーニアンに近づく。

 すると、クトーニアンは起き上がる。

 そして、横穴の外に消えたゴレタを追いかけ始める。


「お兄ちゃんの言った通りになった……どうして!」


「〈探知〉のスキルによって、クトーニアンはゴレタに気づいたんだ」


「すごく早かったよ?」


「ゴレタにスラゾウが変化した、隠れ蓑をかぶせてるからね」


「あえて気づかせたの?」


 俺は頷く。


「隠れ蓑によって、クトーニアンに、ゴレタを『侵入者』として認識させたんだ」


「その後は? ゴレタは外に逃げたのに、クトーニアンは追いかけたよ?」


「クトーニアンには、〈追跡〉のスキルがある」


「そうだとしても、自分の縄張りを出て行くの?」


「だからこそ、『侵入者』として認識させる必要があったんだ」


 簡単に示すと――


 ゴレタは隠れ蓑をかぶり、〈探知〉に引っ掛かる。

 これにより、クトーニアンは、ゴレタを『侵入者』として認識する。

 そして、外に逃げた『侵入者』を、〈追跡〉によって追いかける。


 この作戦は、隠れ蓑の特性を逆手に取ったものだ。

 隠れ蓑は、人には見つかりにくく、魔物には見つかりやすい。

 要するに、あえて〈探知〉させて、あえて〈追跡〉させただん。


「つまり、ゴレタという餌によって、クトーニアンという獲物を釣ったのさ」


「こうなると、よくわかったね?」


「ナイトゴーントが襲われたから、クトーニアンの知能は低いと判断した」


「仲間を襲ったから?」


「そうだ」


 会話の間も、奥に進んでいる。

 扉の前に着くと、慎重に開ける。


 中は、部屋になっていた。

 快適とは言いがたいものの、単なる穴とは違う。


 部屋の奥に、エリザはいた。

 予想とは異なり、元気がない。


「やぁ、元気?」


「タロウ……! それに……アンナちゃん!」


「ヒロインを助けに来たよ」


「ヒーローのくせに、遅いわよ」


「手厳しいね」


「もちろん、冗談よ。――ありがとう」


 キスこそなかったものの、満足のいく結果だ。


 何しろ、赤面したエリザを見れたのだから。


 俺は、エリザの両手を縛っている縄を解く。

 拘束が緩い縄程度なのは、クトーニアンによる守りがあるからだろう。


「エリザお姉ちゃん、無事でよかった!」


「アンナちゃんこそ、無事でよかった!」


 エリザとアンナは抱き合う。


 こうして、二人の無事の再会を目の当たりにすると、感慨がある。

 するべきことをした、そう思えるんだ。

 これからも、後悔しないようにするべきことをしようと、心に誓う。


「タロウ、助けてくれて、本当にありがとう」


「お兄ちゃん、助けてくれて、ほんとにありがと」


「気にすることはない、当然のことをしたまでさ」


「タロウ、格好つけすぎ。こういう時は、ちょっとぐらい照れなさい」


「お兄ちゃん、クールだね。それだと、知らない間に相手をフッてるよ」


「何はともあれ、部屋の外に出よう。そして、仲間と合流しよう」


 俺たちは頷き合う。

 読んでくださって、ありがとうございます。

 ブックマーク等の応援、ありがとうございます。


 エリザを救出する方法は、実は方便です。

 その目的は、主人公とヒロイン二人にするためです。

 雰囲気作りの一環ですね。

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覚醒テイマーの成り上がり
設定を変えた別バージョンは、全部書き直してます。
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