第52話 兵士長の要請
前回のポイント・依頼の内容を聞いた!
指定された場所には、人だかりができていた。
見覚えがあると思ったら、町の中の賊の拠点。
野次馬を割って進むと、ロープの向こう側には――
「タロウ君、こっちだ!」
俺の姿を見たケインは、手を振る。
ケインの指示に従い、ロープに近づく。
話を通しているらしく、兵士の一人がロープを上げてくれる。
俺たちはロープをくぐると、人の輪の中に入る。
「至急の依頼で、すまないね」
「そういうケインさんこそ、至急の仕事でしょ?」
「人々の安全に関わる以上、手は抜けないだろ」
「立派ですね」
俺は賞賛する。
「心配性なだけだ。そういう君は、どうして今回の依頼を受けたんだ?」
「大変だとわかってるのに?」
「そう、今回の依頼は大変だぞ」
「正直に答えると、半ば強制されました」
俺は応じる。
「君は、相変わらず苦労しているね」
「それより、俺の荷物はあるんですか?」
「支援物資のことなら、もちろん用意してある。もっとも、いつもの皮袋だが」
「使い慣れてるから、それで構いません」
俺は頷く。
「他にも必要なものがあるのなら、遠慮せずに言ってくれ」
「頼りになる応援、とか」
「応援を必要とするほど、君は弱くないだろう」
「慎重派なんですよ」
俺は皮袋を背負うと、スラゾウとゴレタを左右の肩に乗せる。
それから、怪物の口のように開いた、大穴に近づく。
ロープは見当たらないから、飛び降りる?
「飛び降りるんですか?」
「君は、たまに無謀になるね」
「無謀じゃなく、大胆なんですよ。もちろん、どっちも冗談です」
「どっちも、冗談には聞こえないよ?」
ケインは指摘する。
「話を進めると、道は建物の中に掘ってある。そこから、穴の中に入れる」
「準備万端ですね」
「逆だよ」
「逆?」
「運悪く足を滑らせて、穴に落ちが兵士がいるんだ」
ケインは事情を明かす。
「その兵士を助けるために、総出で道を作ったんだ」
「その兵士は?」
「自宅療養中だ」
「助けた時に、何かわかりました?」
俺は確認する。
「下から見ると、穴は一つじゃなかった」
「それは、まずいですね」
「まずい。だから、今は手分けして、他の穴を探しているところだ」
ケインは説明する。
「穴は一度入ったら、二度と外に出られないなどという深さではない。ただ――」
「ただ?」
「それは、穴に落ちただけの場合だ。先に進んだら、話は別だ」
「引き返せば生き残れるけど、先に進めば生き残れない?」
「とはいえ、君なら大丈夫だろう」
ケインは請合う。
「どういう根拠?」
「君のように対応力が優れていないと、文字通り足をすくわれかねない」
「そうしたら、奈落にまっさかさま?」
ケインは頷く。
「テイマーなら、大丈夫なんじゃないの?」
「ギルドによると、接触したテイマー全員が、依頼を拒否したそうだ」
「報酬の高さにもかかわらず?」
「だが、君なら依頼を達成できるだろう」
「過度の期待を、プレッシャーと呼ぶんですよ」
「みんな、君に期待しているんだよ」
打ち合わせの間も、歩いている。
急造と思しき道の前に来た時、建物の外が騒がしくなる。
まさか、あの穴から魔物が現れた?
「どうしよう?」
「どうする?」
俺とケインは顔を見合わせる。
ほどなく、一人の兵士が建物の中に駆け込んでくる。
焦っているものの、怪我などは見当たらない。
穴の魔物とは、別の問題?
「ケインさん!」
「他の穴を見つけたのか?」
「その見つけた穴に、人が引きずりこまれました!」
「引きずり込まれたのは、我々の仲間かね、それとも――」
「後者、一般市民です!」
兵士は叫ぶ。
「その時のことを、できるだけ詳しく教えてくれ」
「調査の最中、突然、地面に大穴が空きました」
「突然?」
ケインは引っ掛かる。
「本当に突然です。そして、その場にいた二名の市民が、引きずり込まれました」
「その二名の市民の特徴は?」
「ともに、女性です。もっと言うと、少女です」
「その二名の少女の特徴は?」
「服装などに、特徴はありません。年齢は、十歳前後と十代半ばです」
兵士は報告する。
「二人とも、一緒に引きずり込まれたのかね?」
「一緒ですが、一度ではありません」
「ニュアンスの違いは?」
「前者を助けようとして、後者は引っ張られていったのです」
ケインは頷く。
「巻き添えを食らったのか?」
「突然の襲撃に、我々の中で唯一反応できたのが、その十代半ばの少女です」
「兵士よりも優れている少女、か」
「その少女は襲撃の前にも、おかしな音がする、と言っていました」
「何者だ?」
単純に判断したら、テイマーだろう。
休日中のテイマーが、事件に巻き込まれた。
意外と言えば意外、当然と言えば当然の事態。
なぜなら、テイマーは選ばれた者だから。
ただ、選ばれるのは幸運に限らない。
不運にも選ばれる、それがテイマーなんだ。
「二人とも、騒動に興味を示した野次馬の一員です」
「特徴以外、たとえば名前などはわかるかね?」
「そう言えば、引きずり込まれる際に、お互いの名前を呼び合いました」
「何と?」
兵士は口を開くと――
「助けて、エリザお姉ちゃん! 待ってて、アンナちゃん!」
その時のやり取りを再現する。
それが、意味するのは――
「エリザとアンナ……」
俺は呆然と立ち尽くす。
読んでくださって、ありがとうございます。
ブックマーク等の応援、ありがとうございます。
エリザとアンナが、魔物に連れ去られました。
これは、タロウのやる気を出すためです。
それに、ヒロインを活躍させないとまずい、と思ったのです。




